潮風の悪戯
最近...二人で会う時間もない。
あいつは...いつも通りじゃねぇか。
何だってんだよ...
(お前は平気なのかよ....)
＊＊＊＊＊＊＊＊
ある朝。
毎日のように繰り返される風景。
この船のクルー達が賑々しく朝食を取っています。
ただ物静かに食べる者、眠そうな者、他人の料理を狙う者など、
めいめい楽しんでる様子。
そしてそんな彼らの様子を煙草を片手に、
静かに見守る男がいました。
彼はこの船のコックです。
料理人のくせに煙草が手放せない、とんでもない野郎です。
でも料理の腕は確かなようです。
相手が誰であっても、料理の手を抜いたりはしません。
欲しいものは、鍵つきの冷蔵庫。
オールブルーを目指してるそうです。
食べ物を粗末にする奴には蹴りを入れます。
彼は今、何か考え事をしているようです。
今夜のメニューでしょうか。
それとも...
＊＊＊＊＊＊＊＊
よし、今朝も残り物はナシだ。
ま、ちゃんと計算し尽くして作ってるから、当然だけどな。
もっとも、残っていたとしてもあの底なしゴム野郎が片付けてくれるけど。
彼は誰よりも早く席を立ちます。
最近何かと色んな事が次々とあって、忙殺されています。
でも、たとえ、どんなに時間がなくても、
ここのクルー達の食事を作るという大事な仕事があるのです。
これだけは手を抜くわけにはいきません。
気がつけば一日が終わっている...
夜、ゆっくり会おうとするから時間がないんだろうか。
朝でもいい。昼でもいい。そうは思うんだがな...
そんなことをとりとめもなく考えながら。
食べ終わった後の皿をさげながら、あいつの目を見た。
通じただろうか？
寝ることしか頭にないからな。
第一、俺の視線に気付いたかどうかも怪しいが。
＊＊＊＊＊＊＊＊
彼もこの船のクルーです。
三刀流使いの剣士です。
普段は戦いに備えて体を鍛えています。
後は船尾甲板でよく寝ています。
船長の遊び相手も時々している優しい男です。
優しいですが、目つきは超悪いです。
世界一の剣豪を目指しているそうです。
約束は必ず守ります。
神に祈ったことはないそうです。
彼は間もなく寝る時間です。
でもさっき皿をさげられる時に感じたコックの視線が、気になっています。
後で来い、と言われたような気がしましたが、何の用でしょうか。
それとも気のせいでしょうか。
とにかく、眠くなる前に行ったほうがいいですよ。
＊＊＊＊＊＊＊＊
何だアイツ。
俺にキッチンへ来いっていうのか？
いつも邪魔者扱いするくせにな。
そういや、最近話もろくにしてないな。
忙しそうにしてるからな、無理も無いか。
まぁ、行けばわかる。
彼の行く先をそっと見ている誰かがいました。
＊＊＊＊＊＊＊＊
あら？
そろそろ寝る時間じゃないのかしら？
キッチンへ何しに？ 聞くだけ野暮よね。
でも、ちょっと面白そう...
ところで...
あの二人ってどんな話をするのかしら？
＊＊＊＊＊＊＊＊
ふぅ...
最近煙草の本数が増えたか？
どうも一人の時間が多いとな。
やっぱり通じてなかったか...
あいつ鈍感だからなぁ。
俺がこんなに熱い念力送ってるのによ。
その熱い念力は別の人物に届いてしまったようです。
実にわかりやすいのに、肝心の相手には届かない...
そろそろ陸が恋しいな。
どこかの島に降りれればな...
降りたら、まず...
＊＊＊＊＊＊＊＊
珍しいモン色々見て廻って、情報集めて、
食材も注文して、持ち歩くのはこのさいやめて、
船に届けてもらえばいい。
晩に食うモンと酒を買ったら、小奇麗な宿へ直行だ。
「風呂、入ろうぜ」
「一緒にか？」
「そう」
「二人でか？」
「二人しかいねぇだろ」
「う...」
「いいからさっさと入って疲れとろうぜ」
え...っ？
脱がせてくれるのか。
お前からしてくれるなんて、珍しいこともあるもんだな。
どういう風の吹き回しだ？
洗ってくれるのか？
何かたくらんでる？
いやそこまで計算高いやつじゃないしな。
え？いやいやそんな嫌じゃないよ、むしろ大歓迎。
「隅々まで頼むな」
「おう...」
「俺も洗ってやるよ」
「自分でやる」
「そう言うなよ」
「じゃぁ頼む...」
「...って？そうなのか？嫌がらないのかよ？...いったいどうなってるんだ...」
二人とも泡だらけになりながら、夢中で洗い合った。
あ...そんなとこ...
う..き...気持ちいい...
あのさ...俺ばっかりじゃ悪ぃよ。
え？いいって？そりゃだめだ。やっぱりお前が気持ちよくないと。
あ...ちょ、ちょっと待った...く〜もうだめだって...おいっ
くっっ...
あ.......
＊＊＊＊＊＊＊＊
「！」
（え........っ？)
目の前にある風景。
いつものキッチン。
目を瞬かせてみても、それは変わりません。
(ゆ....め....？)
もう一度瞬きをしました。
やっぱり彼はキッチンの椅子に座っています。
夢...だったのか...？それにしても...
下腹部にはじんわりと快感の名残があります。
しかも何か爽快な感じもする...ってことは？！
恐る恐る彼は、足元から視線をずらしていきました。
特に異変はなさそうです。
股間にそっと手をのせてみましたが、違和感はありません。
ズボンに手を入れて確かめました...が、やはり異変はありません。
確かにあの感覚だった。
絶対、「イッた」感触だった。
でも...いくら何でもあんなリアルな夢はありえないしな。
(いったい何なんだよ...)
途端、力が抜けて椅子にもたれるコック。
＊＊＊＊＊＊＊＊
本当は甲板で一眠りしたいんだけどよ、
ま、たまにはアイツの言うことも聞いてやるか。
皿を洗う水音も消えたようだ。今拭いている頃か。
もうちょっと待とう。
今煙草に火をつけたか？
2本目に行く前に、行ってやった方がいいかな。
ちょっとここに座って時間つぶすか。
＊＊＊＊＊＊＊＊
...ん？あ？寝ちまったか。
アイツまだいるかな。
ゆっくりドアを開けました。
何だ...寝てんのか？
疲れてんだろ。寝かせといてやるかな。
気持ち良さそうに眠る男から、
少し離れたところにある椅子に腰を下ろしました。
何だよ情けねぇ面して寝てるぜ。
本当にスケベ面だ。
コイツは年中欲情してる野郎だからな。
げ...またろくでもない夢見てるんじゃ...？
やっぱり起こすべきか？
...と眠るコックを眺めていると、彼の体の側に一瞬、
何かが舞ったような気がしました。
ん...何だ今のは？
そして確かに見えました。
両脇から１本ずつ。股間からさらに１本の計３本。
白い細い綺麗な手がすっとのびてきました。
うわ...なんなんだよこれは...
手...いやそれはわかっ...
何で手が？
あ？俺も実は寝てるのか？
剣士はその光景から目が離せませんでした。
その手は...
器用に彼のベルトを緩めて、
ボタンをはずし、ジッパーを下ろしました。
布の隙間から最後の一本の手が、彼の物を取り出します。
もう...あんなにしてやがるぜ。
その手は...
それを両方から包み込むようにし、
最後の手は彼の物を愛撫し始めました。
窓から入る光のせいか、キラキラと反射しています。
気のせいか？
いや...何か奴の表情がゆがんだ。
何て悩ましい顔してんだクソ...
あんな顔見たことない...
...って何だよ、そんな声出すなよ...
手の動きが実に器用だ。
まるで見えているかのように。
だんだん早くなってきたんじゃねぇか？
ふいに初めの二本の手が彼をふわりと包み込みました。
先端を何かがぱっくりとくわえ込みます。
一瞬、唇のような物が見えました。
もしかして...そうなのか？
わずかに、そこは痙攣しているように見えました。
剣士は、もう一度コックの顔に視線を移しました。
何て満足そうな顔だ、ったく。
何だかよくわかんねぇが、そういうことか。
理解したくないような感覚に襲われながらも、一応理解したようです。
とりあえず、頭冷やそう...
バスルームへと消えた剣士。
＊＊＊＊＊＊＊＊
あらあら、寝ちゃったのね。もう少し待ってればいいのに。
毎日遅くまで働いてるし、毎朝早くから忙しくしてるし。
いくら若くてもね。
あら？
やだわ...
(やっぱり10代ね)
何とかしてあげなきゃ。
あら、それに...肝心のお客様が来ないじゃない。
何であんなところで寝てるのかしら？
若いんだし、あのまま...なんてなっちゃったら大変だわ。
あ、お客様が目を覚ましたみたいね。
もう少し早ければ良かったのに。
あら、意外と優しいのね、起こさないなんて。
うふふ、じゃぁ...
(今からいいもの見せてあげるわ)
フルール....
uno...dos...
何て細い腰なのかしら？ 男にしとくの勿体ないわね。
あ...でも見かけによらず硬そうな腹筋。
tres...
あら...すごいわね。
こっちも見かけによらないわ。
ここまで硬くなるものなのかしら？
私の手にぴったりだわ。
え...まだ大きくなるの？ うそ...
可愛いわね...声まで出しちゃって...
それにしても...
剣士さんの顔ったら。眉間に思い切り皺寄せてるわ。
でもさっきから見つめてるだけ...
そろそろね。
服を汚しちゃ大変だわ。
目に続いて、唇が現れました。
かぷっ....
ぐ...くちゅ...
どくどくどく....
ごくん...
はぁぁ...
ちょっとむせそうになりながら飲み干しました。
自分でしたりしないのかしら？
そんなに忙しいものなのかしら。
それより、このままで目を覚ましたら大変。
...はい、これで元通り。
あら、お客様もお帰りだわ。
見るだけ見ておしまい？
何だかさっきと表情が違うけど...
まさか...今のを思い出して...なんて...？
それはそれで面白いかも。
あ〜でも久しぶりに楽しかったわ。
＊＊＊＊＊＊＊＊
それにしてもな...リアルな夢だった。
いや夢なのかどうかもわかんねぇ。
手の感触、唇の感触...
手がいつもより小さくて細かったような...？？
いや、やっぱりそんなのよくわかんねぇ。
そーいやあいつ来てないな。
ん？来てたのか？
椅子の位置がさっきと違う気がする。
あの斜めにずらす角度はあいつしかいない。
とっさに立ち上がりドアへと向かったコック。
＊＊＊＊＊＊＊＊
キッチンの外。
風になびく、つややかな黒髪に気付いて目をやりました。
「何かお疲れね」
「い...いえ大丈夫ですよ」
「誰かを探してるのかしら？」
「あ...ちょっと風に当たろうかと」
「彼ならあっちへ行ったわよ」
「あ...そうですか！それはどうも」
「いいえどういたしまして」
「う...いや違うんです..」
「はいはい。早く行って上げなさい」
「...はい...」
(全く貴方にはかなわないな....)
ん？どこだ？
あいつのいそうな場所を見てみたがいない。
また涼やかな風が黒髪をゆらしています。
その少し慌てたコックの後ろ姿を眺めながら舌をぺろり。
まだほのかにあの味が残っています。
＊＊＊＊＊＊＊＊
「おい」
「あら。もう、うたた寝は済んだの？」
「何スマシてやがるてめぇ」
「怖い顔...女性に向かってそんな顔しないで下さる？」
「...あんなこと...できんのは、テメェしかいねぇ」
「...あんなこと？」
「しらばっくれんな！俺は見てたんだ」
「知ってるわ」
「知ってる...って、な、なんだとっ...だ、だったらなんでやめない？」
「見てたって別に構わないわ。それとも...何か問題あったのかしら？」
「...........」
「私は親切心でやっただけよ。だってああするしかないって思ったのよ」
(...それだけじゃないけど...ね...)
「てっ...めぇ...」
「私、何か悪いことしたかしら？もう...ずいぶん溜まってるみたいだったわよ」
「なっ..女のくせにそういうこと言うんじゃねぇ...」
「女だってそれくらいわかるわよ。それに本当にことだもの。後で困らないようにしてあげただけ」
「後で困らないように...だと？」
「ええ。何かものすごい夢を見てたみたいだったから...わかるでしょ？」
「う...」
「あなたも同じ年頃の男の子なんだし」
「....おっ、男の子ぉ？」
(くっそぉ〜この女！)
「あなたも手が足りなかったらお手伝いするわよ？何本でも出せるし」
「んなもん、頼むか！」
「うふふ...冗談よ。でも...あなたも同じことでしょ？大丈夫なの？」
「テメェが心配することなんかねぇ。余計なお世話だ」
「私はいつでもいいわよ。気が向いたら言って頂戴ね」
「あ〜もういい...」
(話し掛けるんじゃなかったぜ)
頭をかきむしりながら歩き出す剣士。
＊＊＊＊＊＊＊＊
あ〜あんなの見ちまったしな。何か話しかけ辛いな。
あの表情...なんだったんだクソッ
いつもあんな顔してたのか？
(俺が見てなかっただけか？)
向こうから歩いてくるコックがこちらに気付いたようです。
げっ...みつかった...どうすんだ？
＊＊＊＊＊＊＊＊
「よぉ、さがしたぜ」
「あ...悪ぃ」
「ん？どした？」
「いや何でもねぇ」
「あの...さっきさ、俺が言いたいこと伝わってた？」
「あぁ？」
「朝飯の後、ちょっと話したかったんだけど」
「あぁ...わかってた」
「でも来てくれなかったんだ？」
「いや...」
「来てくれた？」
「いや...」
「どっち？」
「...」
「...そっか、来たんだな」
「あ...」
「で、何か訳あってまた出て行った...のか？」
「う...」
「何？どうした？」
「もういいだろ」
「よくねぇ。何があった？教えてくれよ」
「それは...」
＊＊＊＊＊＊＊＊
剣士の脳裏では、さきほどの光景がフラッシュバックしました。
一瞬、眩暈もしてきました。
俺は、アイツの頭をつかみ引き寄せた。
俺じゃない俺が動き出した。
あんな手でイキやがってよぉ...
俺がもっと...
＊＊＊＊＊＊＊＊
あれ？また夢？いや違う
こんな強引だったっけか？
あぁ...みんな今部屋に引っ込んでる時間だよな。
う...何かすげー幸せな気分。
今度は俺の番。
何か今日はやけに、こいつ可愛いぜ。
久々に近くで見るからか？
この肌の感触...この腕...この腹筋...あぁたまんねぇ。
そっと触れると、もう硬くて、
俺の理性は崩れ去った。
一気にボトムを引き下ろすと、
それは勢いよく奴の腹を打ち付ける。
夢中で握りこんで、擦り始める。
「うぅ..」
「痛いか？」
「いや...」
「じゃぁ、気持ちいいか？」
「う...く...」
「またぁ...我慢しないで言えよ」
「るせぇ...あぁ...」
「今日のおまえ絶対感じやすいぜ、何かあった？」
「う...うわぁ〜...ちょっ...」
「なぁ〜何かあったかって聞いてんだよ〜」
「あ...あぁ〜...ぐふっ...」
「お...おいっ...そんなに良かったかっ？」
「...ハァハァ...テメェ...早くやり過ぎだ...っ」
「悪りぃ...でさ、さっき何か思い出してなかった？」
「あぁ？」
今は放心状態の剣士。
(...まっいいか...おまえが気持ちよければいいよ)
「もう一回できる？」
「...」
「...できそう？」
「やってみなきゃわかんねぇ」
「おっ、そ〜かぁ〜..じゃやるしかねぇな」
「...ったく...能天気野郎が」
「その前に...綺麗にしないとな」
「な...やめっ...」
「くすぐったいか？それとも感じるか？」
「う...」
「何日、いや何週間ぶりだろうな...おまえ大丈夫だったか？」
「なにが...」
「俺なんか、おまえの姿見るたんびにヤリたくてたまんなかったぜ」
「そうだろうよ」
「わかっててくれたのか？」
「わかりすぎだ」
唇を合わせた場所から少しずつ移動していきました。
耳、頬、首、肩、胸....
「く...ぁ...」
「そういう目で見ないでくれよ...どうにかなっちまう」
「見なくたってどうにかなるくせに」
「何かよく喋るよな、今日は」
「...」
「いいんだよ、俺嬉しいからさ」
また、手を戻しました。さきほど熱を放った場所へ。そこで念入りに指を濡らして、
そして後ろへ向かって肌の上に滑らせました。
「あっ...」
「力、もう少し抜けるか？」
「ふぅぅ...」
「そうそうイイ感じだ」
「んん...」
「２本、３本も大丈夫だ」
「あぁ...」
「今日はきつくないし、イイ感じ」
さらに、そこは硬くそそり立ち、俺の物と重なる。
擦りつけ、あいている方の手で２本合わせて握り込む。そっと擦り始める。
あいつが俺の手に自分の手を添える...今まで、そんなこと一度もしなかったくせに。
だんだん動きが早くなってくる。
そろそろ...かな。
俺は指を抜き取り、替わって自分の物を当てがい、一気に腰を沈めた。
あいつの眉間に一層皺が寄る。
「大丈夫か？」
「あぁ...」
「動くぞ」
「...」
「何て顔しやがる。動く前にイッちまいそうだぜ」
「はぁ...ふ...はぁ...」
今度はあいつの１本だけを握りこむ。自分の動きに合わせて動かした。
「くっ...」
「そんなに食いしばるな。力抜けよ」
「くぉっ...」
「しょーがねーな」
俺は唇で塞いでやった。塞ぐだけじゃ勿体無かったので、
口の中を余すことなく舐め回してやった。
「久々だ...」
「んん...む...」
閉じようとする奴の唇をこじ開けてさらに蹂躙する。
息苦しいのか？
あ...突然やってくる快感。思わず唇を離した。
「う...む...はぁっ...あっっあっっあ〜〜...く...あ〜......」
「何だよ、いい声出んじゃねぇかよ」
俺の手の中で、あいつはビクビクと跳ねているようだった。
そして俺も...。
外へ出すのを忘れるほど夢中になっていた。
＊＊＊＊＊＊＊＊
「あ〜、そば寄るな暑苦しい」
「何だよ急に。いいじゃんかよ」
「今それどころじゃねぇ」
「...悪ぃ...あんまり良かったからさ」
「別に謝るこたぁねぇ」
「...そうか？」
「それより風呂入りたいな」
「あ、そうだな...後始末もあるしな」
「だりィな」
「やっぱり...ごめん」
「いいって言ってんだろ」
「うん...」
「じゃ、とにかく...」
「風呂、入るか」
「一緒にか？」
「そう」
「二人でか？」
「二人しかいねぇだろ？」
「やりーーっ！も...もしかして正夢？」
＊＊＊＊＊＊＊＊
男部屋の近くから現れた、黒髪のお姉さま。
少し疲れたご様子で歩いておいでです。
まだ、その手に感触が残っているようですね。
『２本の物』を一緒に握りこんだ感触が。
あぁお姉さま、恐るべし。
fin.
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