〜小悪魔の館〜

オレンジの風に吹かれて


　〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***




(柄にも無ぇ事するから.....調子狂っちまっただろ)

「ゴメン....逃げてた訳じゃねぇよ」
「じゃぁ何だ」
「おめぇが、そういう挨拶の仕方を知ってる事に、ちょっとびっくりしただけだ」
「........」

ゾロが視線を泳がせ、顔も若干赤らんできているようだ。

(こういう顔も、どうしてか可愛いなんて思っちまってる俺って....)

何とも収まり切らない思いをやり過ごすため、サンジはゾロの身体に抱きついた。ぎゅうぎゅうと締め付けるように抱いていると、ゾロも流石に抵抗する。

「そんなにキツくする必要ねぇだろ」
「こうしてると......何か安心するっつうか、気持ちイイ」
「コッチの方が気持ちよかねぇか？」
「んっ.....」

ゾロからの、今日一番のキスは、"挨拶"にしては少し濃厚だった。唇が離れた時、サンジは力が抜け、少し虚ろな目をしていた。

「コック」
「.....ん？」
「あ.......ふ、風呂入ろう」

悩ましげな表情と声のサンジに、ゾロもその先に言うはずだった言葉を引っ込めた。

「おう、一緒に入ろうぜ....朝風呂」

滅多にない贅沢を二人で楽しもう。サンジはゾロの腕を取り、ベッドを下りた。





(アレ、後少し残ってたよな)

ナミから渡された、入浴剤と称して別の目的を持った謎の液体。身体に悪いという事でも無さそうなので、サンジはバスルームへ持っていった。朝から使うのをやめようと言ってはいたが、好奇心がそれを上回ったのだった。

バスタブにはやや熱めの湯が満たされている。サンジが手にした小瓶から、その液体が湯の中へと注がれた。遅れて入ってきたゾロが背後から話しかける。

「何だ、やっぱり使うのか」
「あ、あぁ.....」
「これ...ちょっと眠くなるよな」
「うん」
「あんまり長く入ってっと、本当に寝ちまうからな....あの時も」
「頭がぼおっとする」
「あの時は、気がついたらウソップが目の前に居たから、流石の俺もビビッたぜ」
「....うっ....嫌な事思い出した」
「ははっ....でもな、俺よりアイツの方がすげェビビッてたみてぇだ...」
「ウソップじゃなくても同じだったろうさ....でも気の毒だったな」

他の誰かに話す訳にもいかず、真相を確かめる事もできないでいるに違いない。事故とは言え可哀相な事をした。

(....ってか、マリモ、マジこれが"ちょっと眠くなる入浴剤"と思ってんのかね.....)

そんな物をわざわざナミが渡す訳がないではないか。

(ナミさんがくれるって言うのが、ちょっと複雑だけど)

きっと応援してくれてるんだ、と勝手に良い方へと解釈しておく事にした。




身体を洗っている間にも、浴槽から立ち込める湯気に含まれる匂いをずっと感じていた。鼻が慣れてくればそんなに感じない筈だったので、もしかしたら入れた量が多かったのかも知れない。小瓶の中にはそれ程沢山残っていたとは思えなかったのだが。

サンジは身体についている泡を流すと、念のため手で温度を見てから浴槽に足を入れた。ゾロは温度は気にせず、イキナリ足を入れてきた。

「丁度いいじゃねぇか」
「熱めだと思ってたけど、それほどでもねぇ」
「あんまり過ぎるとのぼせるぞ」
「その時は俺を抱いて運んでくれんだろ？」
「......言ってろ、バカが」

サンジの思惑通りにゾロが反応し、照れ隠しに不機嫌な顔になり視線を外す。そんな絵に描いたような照れ方に、サンジの頬も緩んでくる。

「な、マリモ」

ゾロが行動を始めるのを待てず、(行動するかどうかも怪しいが)サンジはゾロの肩に手を置いた。顔を近づけるとそれに合わせてゾロも近付いてきた。

明かりを少し落とした部屋で見るのとは、また違う。朝の光が射し込むバスルームで見るゾロは、昨晩よりずっと精悍に見えた。そしてそれを悔しいと思うよりも、サンジがそんなゾロを今独り占めできている嬉しさの方が勝っていたのだった。

サンジが両腕をゾロの首の後ろへ回すと、ゾロもそれを分かっていたかのように、サンジの背中を手で支えた。

「んっ...」
「......」

(駄目だ...全然足りねぇ....)



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またしてもお風呂シーンですいません。またしばらく何やらヤリますのでご辛抱下さい。





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