〜青い薔薇 続編 4〜
君の中に溢れる想い
〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***
「？」
さっきから視線を感じる。
じっとりと背中を舐めるような視線。
休憩室へ向かうエースは、ドアの前に立ち、ノブを掴むとそのまま振り返った。
「何だ？」
視線の先のそのまた先。彼を見ていたのは緑色の髪。
「用があるんなら、来いよ」
そう冷静を装って言ってはみたものの、実のところ落ち着かなかった。
まだゾロという人間がよく分かっていない。
ゾロはゆっくりと近付いてきた。あまり穏やかとは言えない表情に、はて何か怒らせるような事をしたっけ？とエースは思った。
「コーヒーでも飲むか？」
「いえ....俺はいいっす」
職場ではゾロは一応最低限の敬語を使う。エースは大先輩だから当然と言えば当然だった。
ドアを閉め、椅子に腰を下ろした。丁度向かい合う格好になった。
「何か深刻な相談かな？」
「うん....」
「言いにくそうだな....」
まさか、愛の告白でもあるまい。時々目線を上げて何か言おうとして、また諦めてしまう、そんな普段とは違うゾロの様子にエースも戸惑う。
「ってもう、じきに休憩時間終わるぜ？」
少し考えているエース。考えながら時計の方をチラリと見ている。
「よし、ちょっと待ってろ」
エースは休憩室を出ると、事務所へ向かった。ドアを少し開けてその様子をゾロが見ていた。そしてしばらくすると、エースは戻ってきた。
「今日、二人とも2時間だけ早退にしたから。どっかで軽く飲みながら話そう」
「え....？」
「気にすんなって....あ、ボードには載せるなってシャンクスには言っておいた」
「....？」
「サンジにも知られたくねぇんだろ？」
「エースさん....」
「どうせサンジとのことで何か悩んでんだろうが？顔に書いてある！」
「....あ...」
「礼を言うんなら、そのお悩みとやらが無事解決してからでいいぜ....じゃ、そういうことで。それに今日じゃねぇと駄目だっただろ？」
今日は、サンジがオープニング当番の日で、早上がりなのだった。ゾロの早退も知られることはない。何もかも抜かりのないエースの行動に、ゾロは感心した。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「じゃ、お先にー...お疲れっす」
「お疲れー」
サンジはゾロの姿を見つけると声をかけてきた。
「お前の好きなモン作って待ってるからな」
「おう」
タイムカードを押して通用口から出て行った。
それから程なくして、ゾロとエースも店を出る。時間も惜しいので、エースは店から数分の処にあるビルに入っている、小洒落たバーへゾロを連れていった。あまり騒がしくなく、落ち着いて話ができそうだった。
ジントニックを2つ注文すると、間を空けずにエースが口を開いた。下手に沈黙して待っていても切り出しにくいだけだ。
「ここからは敬語ナシだ」
「はぁ....」
「俺のできることなら何でも協力するぜ？ゾロ」
「んっ...んんっ」
ゾロは咳払いだけして、まだ話そうとはしない。
「まぁ...気楽に話してくれよ。サンジのこと....なんだろう？」
「あぁ...まぁそうだけど」
「うまくいってない...ってことは全然無さそうだしな」
「それは....」
「セックスのこと？」
「ぐほっ....」
「.....あはは..悪ぃ.....」
「.....」
「あのさ....こないだちょっと覗いちまったんだけど....お前ら超仲良すぎだったように見えたけどな？」
「あれは.....」
「あの日だけたまたまだった....ってことか？正直、俺すげぇ羨ましかったぜ。あんなセックスしたことねぇよ」
「......」
自分から相談をしたものの、予想外に自分とサンジとの情事の話を持ち出され、いたたまれなくなったゾロだった。しかし全てを見られてしまったことは事実で、誤魔化しようもなかった。
一体何が悩みなんだろうか。エースは興味津々だった。
「俺は....アイツを抱きたいと思うのに」
「....うん」
「いざとなると.....何か違うっつーか.....何か知れねぇけど違和感があって.....」
ゾロは自分の身体が、サンジを受け入れるのが当然のようになっていることを話した。
「....うん、それで....」
「結局、自然と受身を選んでしまう」
「うん」
「....俺じゃできねぇのか？って言われて」
「ちゃんと説明した？」
「一応....」
「分かってくれたのか？サンジは」
「結構.....喜んでくれた」
「......じゃー問題ねぇじゃねぇか」
「ただ....本気で今日はヤル...って思った時に限って....」
「......」
「次にしろ、って言われたりして.....」
「うーん....なるほどねぇ」
「どうしたら自然に....いくんだか」
「今が自然なんじゃねぇの？」
「そうかも知れねぇけど」
「もしさぁ....自然にサンジを抱きたいって気持ちになったら、そうすればいいと思うけど？」
「....」
「今日はオレがやる！みたいな意気込みは必要ないんじゃねぇ？」
「そう思わねぇと....」
「それは不自然ってことだろ？」
グラスから一口飲むと、エースは続けた。
「もう何度も数え切れないくらい、サンジから愛されてるってことだな」
「....？」
「身体が覚えちまってるんだろ。気持ちより先に反応するんだ」
「....」
「同じことをサンジにもしてやれれば....自然に逆にもなれると思うけどな」
「同じこと....」
「先手を打って攻めていけば"今日はゾロがしてくれるんだな"って思うだろうよ」
それも試した気もするが、どうも途中からうまくいかなくなるようだ。何かが足りないのだろうか。
「ゾロ、俺一つ気になってたんだけどさ....」
「？」
「サンジは....まだ全然....」
初めてエースがサンジに触れた時。サンジが受けだと信じて疑わなかったエースが、実はその逆だという意外な事実に驚いていた。
「.....まだ....全然ってことはねぇけど....」
「少しは.....それなりにやってるって訳だな？」
「その...指はまだ中指くらいしか....」
「あぁ、いいよそんな詳しく言わなくても....質問が悪かったな」
「アイツもまだ慣れねぇみたいで、でも何とか指だけなら大丈夫そうなんだけど。その、最初に触ったときは....アイツちょっと嫌がってたような気がして」
「サンジがそう言ったのか？」
「いや....受けいれようとしてくれた...最後まで」
「でも....至らなかった？」
「俺に最初からその気がなかったから....ちょっとどんな反応するかと思っただけで」
「....大事にし過ぎだな」
「え？」
「そんなに恐る恐るじゃなくても、意外と大丈夫だって。愛し合ってんなら、ちょっとくらい平気だろ」
「そうかな」
「そうだ。そんなに優しい気持ちがあるんなら、傷つけることもないと俺は思うけど」
「うん.....」
「お互い労わり合うのはいい事だけど....時にはちょっと....こう、激しくってのもいいんじゃねぇの？変化をつけねぇと」
「変化....か」
「あ、趣向を凝らせとか言ってんじゃねぇからな！」
何だよ....。コイツは何でこんなに自信無さげなんだよ。いつも堂々としてて、客にさえ媚びないというのに。
そんなにサンジに惚れてんのか。
馬鹿馬鹿しくてやってられっかよ.....
エースは、それでも何とかゾロの力になりたいと思っていた。
「どうだ？今夜早速頑張ってみるか？」
「ええっ？」
「そんな驚くことねぇだろ」
「幾らなんでも....」
「じゃ、さ....」
「.......」
「イメージトレーニング、やっておけば？」
「イメージ...？」
「頭ん中で想像して、ある程度予行演習しておくんだよ」
「うーん...そんなにうまくいくかな」
「大丈夫.....俺が保証する」
「え....？」
「あのさ.....あの時の要領で....俺はイイと思うぜ」
「......」
あの時......。ゾロは思い返してハッと気付いた。そうだった....ほんのひと時ではあったが、エースと同じベッドでのあの行為。あまり、思い出したくはなかったけれど。
「あれと同じようにやれば....すんなりいくと思うけどな」
「あれは....」
「結構慣れてるように思ったけど....違うのか？」
「慣れてるってことはねぇけど....どっちかつーと初心者に近い...ような...(そうでもねぇような....)」
「えぇ？.....じゃ、俺、練習台だったのかよ？！」
「あ....いや.....」
「やってくれるね......俺、マジ....感じたんだけど...初心者でアレって....やっぱ素質あるんじゃねぇの？」
「....感じた....？」
「あぁ....かなりヤバかった。あれであともう少し時間かけて....中で....指増やして.....ゆっくり解してやるといい」
「.....うん」
「.....何なら、これからちょっと練習してみるか？」
「へぇっ？」
「......くくっ.....冗談だよ」
「......」
「いや、冗談だけど...もし必要なら練習台になるぜ？今回も」
「.......いや、いい。何とか自力でやってみる」
「そうか。うん、それがいい.....健闘を祈るよ」
何でここまで親身になってやるのか。エースもだんだん分からなくなってきた。そしてゾロもまた、何でこんなに洗いざらい話してしまったのか。
二人の間に何か不思議なものが芽生えてきているようだ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「ゾロ....お帰り」
「ただいま」
サンジはゾロに駆け寄ると、軽くキスをしてきた。
「メシ、できてるぞ......ところでおめぇ、珍しいモン飲んできたんだな」
「へっ？」
「普段ジンなんか飲まねぇだろ？」
「あ、あぁ......」
「俺の鼻を侮るなよ？」
さすが料理人だな....。いや感心している場合ではない。この男、すっかり感づいているではないか。
「何か心配事あるんなら、俺に言えよ」
サンジは料理をテーブルに運びながら、ゾロに"早くうがいと手洗いして来いよ"とまるで母親のような目線で言った。
「何か、出来上がってから気付いたんだけど、ゾロの好物ばっかりになっちまってよ。こんなに食えるかってくれぇの量になった」
「どれも旨そうだ....ありがとな」
「どういたしまして」
食後のコーヒーを飲みながら、ゾロは考える。エースに色々話を聞いてもらって、何とかやれそうな気はしていたが、やはり実行に移すとなるとどうすればいいのか。自然に、自分のペースにもっていくには、何をすればいいのか。
「ゾロ....？」
「あぁ？」
「どうしたんだよ？」
「い、いや....」
「らしくねぇな....仕事の悩みってわけじゃなさそうだし....」
「.....」
「さては....俺をどうやって口説こうか考えてたな」
「げふっ....ごほっ.....」
「本当、分かりやすいねぇ....何、たくらんでんの？ちゃんと説明しろ」
「........」
「怒らねぇからさ....」
「.....今日こそ......ヤル」
「ヤルって何をさ」
「お前をヤル....この俺が」
「......お前が？」
「おう」
「で、一杯ひっかけながら、誰かにコツでも伝授してもらったのかよ？」
「う.....」
「エースだな」
「.....うん」
「...........」
あぁ、サンジやっぱり呆れてるんじゃねぇか。ゾロはそう思い少し焦った。
「普通、人に相談するか？」
「.....」
「別に....俺はいいぜ？」
「本当か....？」
「ただ.....俺も初めてだからよ」
「それは分かってる」
「時間かけた方がいいし.....週末だな」
「今夜は駄目か？」
ゾロの目は真剣そのものだった。
(その目に俺は弱いんだって....分かってんのかよ)
「....分かったよ」
サンジは立ち上がって、ゾロの腕を取った。
「ゾロ、ささーっとシャワー浴びるぞ」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
二人の、唇が触れ合う音だけが響く。何度も何度も、吸い合う音がする。唇が離れるとサンジは言った。
「ゾロ....何か考えながらするのやめろよ」
「....おめぇのことしか考えてねぇ」
「.....次どうするか、とか段取り考えてるんだろ」
「.....まぁ、それもあるけど」
生真面目なヤツだな....とサンジは呟いて、ゾロの頭を撫でる。可愛くて仕方がない。今すぐ抱いてやりたい。でも今日は男を見せてくれるそうだから、もう少し待ってみる。
「俺が気持ちよくなること....してくれよ」
言わなくても、してくれるだろうけど。ちょっと口に出して言ってみた。
ゾロの手がサンジの身体をゆっくり撫でていく。同時に唇で耳や首のあたりを攻める。胸まで下りてくる頃には、サンジの呼吸も少し荒くなってきていた。ゾロの手はサンジの下腹部に到達している。硬く勃ちあがっているソレに、軽く手が触れただけで、ぴくりと反応した。
「サンジ」
「ん？」
「ココ....すげぇ熱い」
「おめぇのも....同じくれぇ熱いぜ？」
サンジのことに夢中になっていたので、ゾロは自分のことをすっかり忘れていた。サンジの手で触れられ、思わずビクッと身体を震わせた。
「おい....まだ触るな」
「えー？俺にも触らせろ」
「我慢......きかなくなる.....」
「ほんっと、真面目なんだから....」
名残惜しそうに、サンジはゾロから手を離した。ゾロは愛撫の動きを再開した。扱きあげる手が一往復するごとに、ゾロの手はサンジから溢れる蜜で濡れそぼった。サンジはゾロの首に抱きつき、耳元で話しかける。
「なぁ....まだ触らせてくれねぇの？」
「もう....あと少しだな」
「俺....もうかなりキテルんだけど」
それじゃ...とゾロは身体の向きを変え、頭をサンジの下腹部へ向けた。サンジに促され、彼の顔の上あたりに膝立ちで跨った。
「すげぇゾロ...べとべとになってんぞ」
「おいっ....息かけんな」
「そんなに感じるかよ？」
サンジの煽りに乗せられそうになるゾロ。目の前のサンジの高まりに舌を滑らせる。少し触れただけで、ソレは敏感な反応を見せた。先端を舐めながら、根元からゆっくりと握った手を先端へ向けて動かした。
「んぁっ....」
いくら舐めても、後から後から蜜が溢れてくる。ゾロの手のひらに熱と脈の動きが伝わる。と、そこへ我慢も限界に近いサンジの方も動きを再開した。
「ああっ.....んんっ」
ゾロは口を閉じるのが間に合わず、声を出してしまった。サンジの愛撫を受け、膝が崩れそうになる。ゾロは呼吸を整え、サンジ自身から糸を引きながら溢れ続けるモノを、指で拭い取っては後ろの窄まりに塗りつけた。最初は軽く、次は襞を少しずつ解すように。そしてさらには浅く指を挿入してみた。
「んんっ.....ゾロ....」
「.....痛くねぇか？」
「.....うん」
半分恐る恐る、でもどこかで逸る気持ちを抑えながら、ゾロは最奥を目指して指を進めていく。少し入ってはいったん退く。何度も潤いを補充しながら。でもまだ奥までは無理そうだった。
「ひぁっ....！」
サンジの裏返りそうな声。指に代わってゾロの舌がその部分に触れたからだ。襞を押し分け、唾液を少しずつ注入し、舌で奥へと進んでいく。内側を広げるような気持ちで、入れるだけ入っていく。舌の動きがむず痒くて、サンジはどうにも落ち着いていられない。
「んんんっ.....嫌だ...ゾロ」
ゾロは舌を抜き取り、もう止めようか？とサンジに問う。
「やめんなっ....バカ」
ゾロは困惑する。
「いいから....続けろ」
また、舌で触れた。外気に触れて冷たくなった入り口が、反射的に固く閉じられた。もう一度舌で触れると、また元の柔かさに戻っていく。
「指....挿れるぞ」
「....好きにヤレ」
言葉はぶっきらぼうだが、サンジの声は上ずって掠れていた。
もう一度唾液で潤し舌でかき回した後、ゾロの指がゆっくりと入る。さっきとは違って中はだいぶ柔かくなっている。試しに指をもう1本増やしてみると、思ったよりすんなりと入った。ゆっくりと第二関節まで深めていく。
「んんっ....」
「痛いのか？」
「....バカ...いちいち訊くな」
「サンジ」
「大丈夫だから」
俺の方が励まされてどうする？とゾロは気を取り直し、空いた方の手でサンジ自身を握りこんだ。不意を突かれたサンジは、思わず鼻に抜けるような甘い声を出す。少し勢いを無くしかけていたソレは、再び熱を帯び硬くなり始めた。
サンジがゾロの腰を抱え、太腿に顔を押し付けてくる。腿の付け根に彼の息がかかる。もう、限界が近付いていることが分かる。ゾロは少しだけ勇気を出して、指を3本に増やした。関節を少し曲げながら、内壁をまんべんなく撫でていく。指が届く範囲いっぱいに探っていく。
「ああ....ゾロ」
「痛かったら言えよ」
「痛くなんかねぇ....いちいちうるせぇよ」
指先に何かが触れた。
「んああっっ！」
サンジの反応が変わった。ゾロの指の腹が探り当てた場所を何度も撫でる。
「やめっ...んんっ」
サンジの腹には先走りとは違う濁った体液がぽとぽとと零れていた。
「ゾロ....」
さらに掠れた声で言う。ゾロはゆっくりと指を抜き、サンジから零れたモノを舌で取り始めた。くすぐったくてサンジは身をよじらせる。
サンジがゾロ自身に息をかけながら言った。
「もう....限界超えそうになってんぞ？早く....来いよ」
「俺も...挿れてぇ」
「来い」
サンジが身体を横に向け、息を整えていると、ゾロの手がサンジの腹を抱えうつ伏せにさせた。そして膝を曲げ、腰を上げるよう促した。ゾロが背後から近付き、肩や首筋にキスを落とす。サンジは自分の足の間に、ゾロ自身の存在を感じている。
何してんだ、早く来ればいいのに。サンジは黙って待つ。
ギシ...とベッドが軋む。ゾロが少しずつ膝でにじり寄っている。
「んっ」
ゾロの手がサンジの熱に触れた。再び、限界まで硬さを増した。
「んんっ...いっ...」
ゾロが入ってくる。少しずつ。実際はとてもゆっくり恐る恐る動いているのに、サンジには、熱く硬いモノで突き破られそうに感じた。
「いっ...痛....」
その短い言葉をゾロの耳が捉えた。彼の動きが止まった。
「痛いか....」
「平気だって」
「....やっぱり....」
「やめるなよ」
「....」
「ちゃんと、こっちも触っててくれよ...その方が楽だから」
サンジの言う通りにしてみると、後ろの締め付けが少しだけ緩んでゾロも楽になった。これなら何とかできるかも知れない。
「あと少し...いくぞ」
「うっ....」
「くっ.....」
やはり。それでもまだキツイことには違いない。ゾロは初めての圧迫感に耐えながら、腰を押し進めていく。
「動くぞ」
「.....」
時々サンジ自身を扱きながら、ゾロは腰を動かした。サンジのイイ場所を探ってやろうとか色々考えていたものの、そんな余裕は全くなくなった。サンジはゾロの手がもたらす快感に集中していた。その後ろで感じる圧迫感と相まって、感度が上がってきているようだった。
「俺...もう」
「....んっ.....好きに.....ヤレよ......」
サンジを包むゾロの手の動きが速くなる。もうゾロの方も限界だった。自分でどんな動きをしているのかも分からなくなってきた。
「あっ....くぁっ.....」
「ゾロ.....ゾロ........」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
息が落ち着くのを待ちながら、ゾロはサンジの身体を抱いていた。
「ゾロ.....生きてるか？」
「....あぁ」
サンジからキスをされ、それを甘く受け止めたゾロ。
「フツー、お前からしてくるもんだろうが....」
サンジは文句を言いながら、また唇を寄せてくる。全ての力を使い果たしたかのような、ゾロの頭をゆっくりと撫でてやった。
「結構よかったぜ」
「.......まだまだ.....ってことだな」
「何だよ随分控え目だな」
「........」
ゾロはサンジの胸に頭を載せ眉間のあたりをぐいっと押しつけている。
「ゾロ....？」
「ん」
「なぁ....どうした？」
サンジがゾロの頭を掴まえて、顔を上げさせた。鼻の頭に光るモノが一瞬見えた。ゾロは慌てて手の甲で拭った。
「ゾロ...ああっおめぇ....俺の腹んとこにぃ....」
透明の何かがぽとっと落ちたように見えた。ゾロはそれを手でとりあえず拭った。それが少し糸を引いたのを見て、汚ぇなー！と文句を言おうとしたサンジは、ゾロの顔を見て言葉を引っ込めた。
「.......どうしたんだよ」
「うるせぇ」
「.....目ぇ....赤いぞ」
こんなゾロの顔は初めて見た。そして少し鼻声にすらなっている。
「......お前を....」
「うん？」
「...傷つけた」
「はぁ？ゾロ、おめぇ.....」
「.....痛いのに我慢してくれてたんだろ？」
「....そんなの気にするなよ...それに痛いってほどじゃなかったし。本当に最初だけだから」
「痛いって言ってたじゃねぇか」
「あれは....ちょっと....そんな気がしただけで....でも思ったほどじゃなかった。もっと痛いと思ってて身構えてたからさ...実を言うと」
「.....本当か？」
「....この際正直に言うとさ....ちょっと怖かった」
「..........」
「だって俺、お初だったんだぜ？」
「....」
「お前にくれてやったんだ。有り難く思え！」
グス....。ゾロの鼻をすする音がした。何だよ、これじゃ一体どっちが、ロストヴァージンだったのか分かんねぇよ。
「ほれ、じっとしてろ」
サンジがティッシュペーパーを取り出してきて、それでゾロの鼻を拭いてやった。ゾロは大人しくサンジにされるままだ。
サンジは思わずゾロに抱きついた。思い切りしがみついたので、ゾロは反射的に引き離そうとする。
「おいっ....待て」
「おめぇが可愛過ぎるからいけねぇんだろーが！」
「俺は何も....」
「自分では分かんねぇだろうけど....すげェ可愛いって」
「......それを言うんなら....」
「ん？」
「.......」
「....何？」
「............お前の方こそ........」
俺が何だって？サンジは聞きたくてたまらない。でもどうせゾロは言ってはくれないだろう。
いい。それでもいいんだ。
「ゾロ」
真っ直ぐにゾロの目を見つめると、しっかりと見つめ返してくる。
「好きだ、ゾロ」
「....あぁ」
「お前も言えよ」
「.....あぁ....」
「こら！目を逸らすな！」
その言葉を口にしないまま、ゾロの目は自然と閉じられた。慣れないことをして、さぞかし疲れているだろうから、しばらくは、起こさないでいてやるよ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ゾロの寝顔を眺めながら、いつの間にか眠ってしまったサンジは、腰の辺りに柔かい温もりを感じて目覚めた。
「ゾ....ロ？」
すぐ近くにゾロが居る。サンジの腰を手の平でゆっくりと撫でている。
「これでちょっとは楽になるか？」
ゾロの囁き声がサンジの背筋をぞくっとさせた。
「.........優しいんだな」
他にもっと気の利いた言葉があるだろうに、それだけ言うのが精一杯だった。これほど心配させるくらい、サンジは自分が痛々しく見えるのだろうか、と。そんなに痛がったような覚えもないのだが。
「もういいよ。大丈夫だから....ありがと」
「そっか？無理すんなよ」
また耳元で囁かれる。腰に触れていたゾロの手の温もりに、サンジはだんだん焦れったくなり、その手を掴み思わず自分の下腹部へ誘う。
せっかくのゾロの労りを踏みにじるような行為かも知れなかったが。
「サンジ....」
「....おめぇが悪い」
「....なんでだよ」
「....さっきから、その声がエロい」
「あのな....前からこんな声だろ。今さら言われても.....」
必要以上に耳元に近付いて喋ったことは、認める。でもそれはゾロの計算とかではなく、ただ目の前にサンジが居たから。自然にそうなってしまっただけのこと。
「そういうことだから、おめぇが責任取れ」
「勝手に勃たせといて、俺のせいか」
「おめぇ以外、誰が居るよ....存在自体がエロいんだよ」
「どっちが....」
いい加減黙らせようと、ゾロはサンジの唇を塞いだ。すぐに舌も入り激しい攻防が始まった。
「ほら....やっぱりおめぇはエロい....もう俺、これだけで....」
俺の方も、たいがいヤバイぜ。ゾロはサンジの首筋に唇を這わせながら、左手でサンジ自身を握りこむ。ゆっくりと上下に手を動かし始めた。やがて粘っこい水音が手の内側から漏れてくる。
鼻から続けざまに抜けてくる、サンジの甘い声。閉じた唇をこじ開けるように、ゾロの右手がサンジの顎を掴む。指が差し込まれる。
「ふぁっ....」
指を噛まないよう口を開ければ、声はそのまま出てきてしまう。その声を聞きながら、ゾロはサンジがどこまで上ってきているのかを量った。
「ゾロ....」
「ん？」
「もう.....イキ...そ.....」
「いいぜ」
「おめ....は」
「気にすんな」
気にするなと言われても、さっきから足にぶつかってきている、ゾロの下半身の硬い部分がどうしても気にかかる。こんなモノを無視できるわけがない。
サンジはゾロの左手を掴み、動きを止めさせた。そしてそのままゾロの下腹部へと移動させる。
「何のつもりだ」
「てめェのもヤレ」
「何でだ？イイとこだったのに」
半ば無理やり自分のモノを掴まされたゾロ。その上からサンジの手が覆い被さり、上下に動き始める。
自分でシテいるのに、自分じゃない。サンジの意思で動かされる手。ゾロは、慣れた感触が自分の予測できない動きをすることで、普段感じないような快感を覚える。
「くっ....」
「ほらぁ....ゾロ、我慢しないの」
「あぁっ...ぁっ....ぁっ....」
「本当におめぇの声はエロい」
ギリギリの状態にあったサンジの声は上ずっていた。
「このままイク？」
「おめぇが先だったのに....」
「順番なんてどうでもいいだろ」
「くぁっ...ぁっ....ん」
「その声...クルよ」
サンジは堪らなくなり、ゾロの手から自分の手を離し、我を忘れて自分自身を扱き始めた。一瞬それに目を奪われたゾロは手の動きが止まってしまった。
「ゾロっ.....おめぇもそのままヤレっ」
「....」
ゾロも同じように自分を扱き始める。サンジが空いている方の手を伸ばしてきて、ゾロの空いている手を掴んだ。もう、イキそうだという合図に思えた。
「んんっ..ああっ」
「うぁっ....ぐっ....」
二人の腹に互いの放った精が飛び散った。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「ゾロ....」
「んー...」
「そろそろ起きとく時間だ」
「あー....」
「風呂入ってシッカリ目ぇ覚ますぞ」
「おー.....」
「こら！横着すんじゃねぇ！」
ゾロは腕を1本だけ出して、サンジの身体に掴まっている。顔すら出してこない。
「はいはい、さぁ出ろ。時間無くなるぞ」
「うぅぅ....」
ゾロをベッドから引きずり出し、サンジはバスルームへ向かう。いつに無く寝起きが悪いゾロが、どうにも可愛く思えてしょうがなかった。疲れ果てている原因が、この自分なのだから。
サンジは昨日のゾロとの行為を思い出し、ふと思った。
かなり、愛されている。自惚れではないと思う。
そんなサンジの表情を、ゾロが捕らえた。じっと見たあと一言。
「締まらねェツラ」
一言多いこの男を好きで仕方なくて。でもつい、何だとコラ...と勝手に口に出てしまう。そんなサンジを楽しそうに見ているゾロもまた、同じ思いなのだろう。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
店の通用口から二人連れ立って入ると、先に来ていることが極めて珍しい人物が立っていた。
「おはよう...お二人さん」
「おはようっす」「うーっす」
聞きたいことがあって、こんなに早く出勤してきたのだろう。全く、他人の事は放っておいてもらいたいものだ。
「エースさん、早過ぎなんじゃ？」
「そりゃ、もう俺、心配で心配で眠れなかったからさぁ....」
「それはどうも」
「それで？どうだったんだよ？」
コソコソとゾロに耳打ちしているつもりなのか、あるいはわざとなのかは知らないが、殆ど会話の中味がサンジに筒抜けだった。サンジは半分呆れながら、二人を見ていた。
「どうって....別に....」
「.....あのサンジの顔のメロメロ具合から察するに....」
「え？そんなに？」
思わずゾロはサンジの顔を改めて観察した。特に変わらないいつもの表情に見えた。
「........良かったなぁ〜ゾロ、いやぁ....オメデトウ！！！」
「....っ....ちょ、ちょっと.....そんなデカイ声で」
あちゃー、またエースにまんまと乗せられやがって.....。サンジはやれやれと言った顔をした。
「でもな、ゾロ。これからも初心忘れるべからず。慣れるまでは手抜きするんじゃねぇぞ？ま、分かんねぇコトがあったら、いつでも俺に訊けよ！」
「あ....はぁ.....その時は」
「ゾロ！もういいから！仕事の準備しろ」
サンジはそれだけ言うと、キッチンへと向かった。少し歩いて振り返ると、エースがこちらを見ながら口をぱくぱくしていた。"オメデトウ"と唇の動きだけ読み取れた。何だか一つ、借りが出来てしまったようだ。
"アリガトウ" サンジは、その言葉を小さく呟いた。
「たまには俺のお節介も役に立つだろ？」
エースは少し嬉しそうに、静かに笑った。
fin.
2009.08.13
■エースの助言のお陰か、ゾロの愛の深さなのか。一体いつになったら？とヤキモキさせていた二人がようやくです。これに味をしめたゾロは野獣への道を....突き進んで行くのかどうかは神のみぞ知る。
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