〜青い薔薇 番外編 5〜
Sleeping Tiger
〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***
野獣のように、目をギラギラとさせた男が、真正面から一直線に欲望をぶつけてくる。それは荒々しく熱く激しい。
俺は翻弄される。揺さぶられる。心の中まで焦がされ蕩ける。
殺さねぇ程度に、切りつけてくる。
恐怖などない。
--------眠れる虎を起こしたのは.....
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
朝、目覚めると。
隣には俺の愛しいヤツが眠っていて。
起こさねぇよう、そっとベッドを抜け出して。
朝食の用意をする。
旨そうな匂いに誘われて、そのうち起きだしてくれば、その乾いた唇に朝一の濃厚なキスをくれてやる。ヤツは適当にそれをかわして、頭をボリボリ掻きながら洗面所へ向かうのだ。
それが日常だった。
ゾロと出会って一緒に暮らし始めて、まだ1年にも満たない。初めて肌を合わせた時から、相談をしたわけでもないのに役割は自然と決まっていた。自然と、と言えば聞こえがいいが、俺が勝手に事を進めてしまったというのが本当のところだ。
それからも逆転することもなく、見るからに男らしくて攻めっ気溢れるイメージからは想像もできねぇほど、ゾロは俺に素直に抱かれている。抱かれている、と言ってもマグロと言うわけでもなく、途中までは俺の上にいることだって多い。
お陰さまでマンネリとかもなく、まだ当分終わりが来そうにない、長い蜜月を楽しんでいるところだ。
「ゾロ、俺....多分俺の方がお前を好きだから」
「何言ってんだ。絶対俺の方だろ....」
互いに負けず嫌いなせいで、そんなやり取りを日常的にやっている。俺たちの職場の先輩、エースに言わせると、「目も当てられないほどのバカップル」らしい。
ゾロはホストで、俺は元ホストで今はシェフ(厳密には、ホストシェフらしいが)。同じ店で働いている。ゾロは店のNO.3で、いつも指名予約が詰まっている。クールな俺様キャラが売りになっている...らしい。本人から聞いた訳ではない。店のチーフ、シャンクスの話だ。
そのキャラ作りは叩き込まれたモノなのか、実は持って生まれた素質なのかは知らない。俺に対しても、時々その俺様な態度を取ってみせる。それが何とも板に付いている。正直、俺は結構好きだ。そして、それは情事の時でも同じことで、俺は完全にリードされてしまう。かなり行為の進め方は濃厚で、耳元で結構卑猥な言葉も囁かれたりと、世間一般の男と何ら変わりはねぇ。
それでも。
そうであるにも関わらず、最終的にはゾロは俺を受け入れる。
一度逆になりかけた時、俺は怯んでしまった。ゾロはそれ以上は手を出してはこなかった。
まだ受け入れる勇気もないクセに、「好きにしろ」と煽ったことが何度かあった。でもゾロは結局何もしなかった。
たまに「今日は俺がヤル」とゾロが宣言することがあったが、俺の方が自信が無くて、先送りにしてしまったこともあった。
強引にヤラれたことなんて一度も無かった。だから、ゾロは本気ではないんだと思っていた。試しにヤッて、うまくいけばいいか...そんな程度のモノだと思っていた。きっとこのままずっと、ゾロは俺を受け入れていくものだと思っていた。
ところが最近。
ゾロが変わりつつある。
誘い方も巧くなったし、何より積極的だ。これは歓迎すべきことだから何も不満はない。一つだけ言わせてもらえば、「どうやって誘うか」ということを考えたりする必要がなくなったのが、少々つまらない。
ゾロの背後からの抱擁と囁きは、もう反則以外の何物でもない。あれに抗える方がどうかしている。ゾロもそれに気付いたのだろう、回数を増すほどに、俺を陥落させるまでの時間が短くなってきている。
「ここ....こうされるの、好きなんだろう？」
そんなコト、耳元であの声で言われただけで....あぁ、マズイ、思い出しただけでも....。
そして、つい最近のことだけど。
ついに途中までではなく、最後まで逆転したままという事態となった。俺が望んだ結果だった。ゾロは何度も何度も「本当に大丈夫か？」「いいのか？」と訊いてきた。ただきっかけは、俺が誘ったのではなく、ゾロの「俺がヤル」という言葉だったが、それは「言葉に出さないと実行できないから」だったのだろう。
「痛いか？もうやめようか？」
「バカ、やめるなよ！」
そんなやり取りが何度も繰り返された。ゾロが俺を大切にしてくれているのは充分すぎるほど分かった。が、しかし。痛くてもそれは、最初のうちの、ほんの短い時間だけ。
俺ってそんなに弱々しく見えるんだろうか？
そりゃ、ゾロに比べればほんの少し身体も細い。でも力はあるし筋肉だって相当付いている。
俺はゾロを叱咤激励し、最後までやり遂げるよう導いた。こんなこと、あんまり聞いたことねぇけど。そして何とか無事コトを終えたのだが。
俺を傷つけたと言って、自分を責めていた。逆に俺の方が、その様子を見ていて痛々しく思うほど。でも何度も俺が説明し、何ともないのだということを伝えた。
俺はゾロから大切にされ、愛されていることを実感した。
それからというもの、何度かゾロは恐る恐るながらも俺を抱いた。俺を傷つけてしまう、壊してしまうと不安を口にしては、俺に「バカかてめェは」と怒られていた。そして今後のことへの不安まで口にした時は、マジで呆れてしまった。
「また、俺を抱け」
そう言ってやったのに、ゾロはまだ不安そうな顔をしていた。
俺はお前が思っているほどヤワじゃねぇ。
そしてさらにゾロは変わってきた。
俺も結構慣れて、受けるのも悪くねぇと思い始めていた。
抱いている時はまさにネコのように、柔かくしなやかなイメージそのもので、気を許した相手にしか見せない体勢で俺を誘い込んでいた。
そのネコが虎になった。
いや、眠っていた虎が目覚めたと言った方が近いか。
大変なヤツを起こしちまった。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
朝、目覚めると。
隣には俺の愛しいヤツが眠っていて。
起こさねぇよう、そっとベッドを抜け出そうなんてすれば。
「まだ、行くな」
その俺の愛しいゾロが、いつの間にか伸ばしてきた手で俺の手首を掴む。
ぐいっと引っ張ると、俺を腕の中に抱え込む。
「あ....ヤベ....」
ゾロが下半身をぐいぐいと強く押し付け、やがて擦りつけてくる。
「おい、ゾロ....」
呆れたフリをしてそう言う俺の方も、簡単に反応してしまうから始末が悪い。
「これだけでも、結構気持ちイイもんだな」
「おい、ちょっ...そのままイク気じゃねぇだろうな」
「それもいいかもな」
「後が面倒だろっ...冗談よせっ」
「いや...これ結構クセになるぜ....」
「もういい....俺がシテやるから待て」
何だか乗せられてるなぁ、と分かってはいるのだが、俺は手早くゾロの下半身を露にし、ケアをしてやることになる。どうも自分の中にある、奉仕の精神が激しく表に出てくるらしい。
ちょっと変わったシチュエーションのせいか、あるいは寝起きだからなのか、ゾロのソレはかなり大きさも硬さもMAXに近い感じだった。さすがにコレを見て「挿れて欲しい」とは思えない。そんな状態で、俺の手の中でダラダラと透明の液を垂らしている様は、かなり卑猥だった。
俺は、ゾロが我慢できずに懇願してくる顔を想像しながら言ってやった。
「さぁ...どうして欲しい？こんなになってるぜ？」
素直に言えば、すぐ気持ちよくしてやる。
しかしゾロは表情を変えずに低めの声で言った。
「わかってんだろーが....さっさとその口でヤレ。それとも俺の方から喉の奥まで突っ込んでやろうか？えづかねぇよう気ぃつけろよ」
(ええええーっっ？？！！)
ゾロが、あのゾロが...。
いや、思い起こせば、時たまその片鱗を見せていた。まぁ心技一体なんだなと好意的に捉えてはいたが、もう今のこの状態は、そんな範疇を超えている。
ちらと見やるとゾロはニヤリと笑って、少し凶悪そうな表情も見せる。
(俺...食われるのかっ？？)
ゾロが俺の髪を掴み、早く咥えろと顎で示す。俺はおずおずと近付いて、その先端を一舐めした。ゾロの身体が僅かにぴくっと動いた。続けて根元と先端を往復して舐め、ぱくりと咥えた。
「ん...ふっ」
ゾロの鼻から甘い声が微かに漏れたのを聞き、俺は異常に嬉しくなった。やっぱり性格が変わったとしても、感度の具合まで変わる訳がねぇ。どうだ、俺のテクでさんざん気持ちイイ思いをしてきたんだ。忘れられる筈がない。
俺の絶対的自信。ゾロは数え切れないくらい、俺の手や口技で喘ぎまくり、何度欲望の詰まった雫を撒き散らしてきたか。
そんなことを考えていると、どんどん俺の中の征服欲が大きく育ってくる。このゾロを組み敷きたい。
「何、やってんだ？そんなんで俺をイカせられると思ってんのか？」
「....」
「もっと動け」
「んんっ」
「吸い付きが足りねぇ」
「んぐっ」
俺に咥えさせながら、ゾロは俺を完全にコントロールしている。
何でこうなるんだ？
ゾロの言うまま、手で示されるまま、俺はゾロ自身を愛撫した。
ゾロの手の力が強くなる。
「くっ.....はぁっ」
ゾロも自分で腰を振り、俺の口内で暴れまわる。苦しかったが、もうすぐ終わるだろうと踏んで、俺は耐えた。
「くぁっ....んっ」
俺の喉を目掛けて、激しく射精された。苦しい筈なのに、ゾロの匂いが口内に広がり、俺はいつもより興奮してくるのが分かった。
俺はゾロをイカせた気がしなかった。俺の口を使ったゾロの自慰行為のようだった。それはそれでまた一興。
ゾロは自分の気が済むと、自身を俺の口から抜き取った。口元からは飲み込めなかったゾロの体液の残りが、だらだらと流れてくる。ゾロは手の平でソレを受け止めると、「舐めろ」と言うのだ。
ぺろぺろと舐めても手の中にまだ溜まっている。舌で掬い取るのは難しそうだったので、唇を付け吸い付くように飲み込んだ。手の平や指の関節の内側や指の間の皮膚の皺の間にほんの少し付着したモノまで、舌で撫で取り唇で吸い出す。
ゾロの息が気のせいか、少し荒い。
あぁ、やっぱり、指の間は特に弱いんだったな。わざと念入りに舐めてやったんだから。俺は気をよくし、ゾロの耳の後ろを同じようなやり方で舐めた。続いて耳の中。ゾロの吐息の変化がよく分かる。次は....。
「おい....調子乗ってんなよ」
「....へっ？」
目元はこの上なく色っぽくて声も少しハスキーになってきているクセに、睨みを利かせながら、吐き捨てるように言う。
あぁ、何としてでもこの男を押さえつけたい。
いや、いっそ俺がそうされてもいい。
この、どっちつかずな状態に置かれていることが一番苦痛だ。
ゾロ、お前はどうして欲しいんだよ？
そして俺はどうしたいんだ？
悶々とする。
そして、それが日常となった。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
そうだ、俺は朝食を作るんだった。
あぁ、でも。
........。
下半身に篭っている熱が退きそうにない。
自分で出すか。
ゾロにお願いするか。
お願いって....それは違うだろ。でも、今はそうしないとシテくれそうにもない。いや、今までだって、ちょっとだけお願いしてみたら「ちっ、しょーがねーなぁ」と言いながら、ちゃんと気持ちよくしてくれたんだった。
何だか今のこの状況は、それすらも怪しい。
「ゾロ？」
「....ん？」
「あのさぁ.....」
俺は下半身の高まりがゾロの目に付くよう、わざと少し前に突き出すようにしてベッドの上に座っていた。どうだ、コレ見て何とも思わねぇのか？
「何だよ？」
明らかにわざと見ないように、ゾロはそ知らぬフリをして、淡々とした声で答えた。何だよ放置の焦らしかよ？
あ、そうだ目の前にいっそ、俺のモン出せばいいんじゃねぇか？ご開帳されれば幾らなんでも見過ごすこともできねぇだろ。
俺はプライドなんてものは、どっかに置いてきたと自分に言い聞かせ、ハーフパンツを脱いだ。下着の中から押し上げる俺の息子は、もう先走りをかなり出していて、その部分だけ布の色が変わっていた。
これを見れば、ゾロだってどうにかしてくれるだろう。
「おい、コラ...何シカトしてんだよ？」
「....あァ？」
「どうにかしろよ」
こんな上から物を言うやり方が、ゾロに対して効果があるなんて到底思えなかった。むしろ逆効果ではないだろうか。でも俺は、もう本当に限界だった。身体ではなく、心が。
「どうにか....って？」
「てめェ....」
俺は何だか頭がよく回らなくて、それ以上言葉が出てこなかった。
ゾロが自分の下半身にかけていた薄いブランケットを捲り上げると、思わず俺はゾロの身体に目を奪われた。
さっき俺が脱がせたまま、何も身に着けてはいなかったから。
勿論それを隠すなんてゾロはしないから。
ソレは実に偉そうに、ゾロの腹の上にどん、と乗っかっていた。
「どうだ？まだ元気だぞ」
「んっ.....」
「どうにかして欲しいんだったな？コレ、ぶち込んでやろうか？」
ゾロの目がギラっと光ったように見えた。
虎、のように。
俺は食われると思った。
ゾロが俺に覆い被さり、器用な左手で下着を取り去った。そして俺自身を握りこんできた。
「んんん.....」
「そんなに待ってたのか？」
「ぁ....ん....」
ゾロを組み敷くどころか、こんな些細な行為で俺は、声をあげて感じている。
もういいよ。我慢なんてしてられっか。
でも....何か、違う気がする。
「オラ、何考えてやがるっ....集中しろ」
「んあっ」
俺を握る手の力が少し強くなった。まだ握ってるだけで上にも下にも動いてはくれない。頼む、擦って.....扱いて....ぐちゃぐちゃにしてくれ。
「何でこんなに濡れてんだ？」
「うっ....ぁ」
「この手を.....動かしたらどうなるんだろうな？」
ゾロはまだ手のひらを固定させたまま、親指だけを動かして、先端のくびれを何度もひっかけるように撫でてきた。
「んぁっ.....」
「また....いっぱい出てきたぞ.....どうしようもねぇな」
また親指で、粘液を先端に塗りつけながら撫でている。俺の背中に、何とも言えない痺れが走る。
「すげェ....カッチカチになってきてんぞ....」
「あっ....」
「もう出るんじゃねぇか？」
この期に及んでも、まだ手を動かしてはくれないゾロ。
俺は目尻から、涙が滲んできているのを感じた。ゾロは顔を近づけてきた。こめかみに唇を付け、目尻に舌を這わせてきた。
「はっ...ん」
下半身のソレとは、ほど遠いその場所への接触さえ、今の俺には物凄い刺激となった。
「あ....駄目っ....だ」
下腹あたりがキュッとくる感じ。
しかしそれが少し緩んだ。ゾロの手が俺の根元をしっかりと握りこんでいる。
「まだイカせねぇ」
ゾロが耳元で低く囁いた。バカやろっ....その声ヤバイって....
本当に、ヤバイんだって。
もう駄目だと思った瞬間、ゾロは目の前から消えていた。途端、俺自身の締め付けが無くなり、代わりに熱くて柔かい何かに包まれた。
眩暈が幾重にもなって襲ってくる。
身体がふわふわと浮き上がる感覚。
「はぁ....あああぁ........」
出すつもりのない声が、長く糸を引くように出てくる。
これが自分の声かと思うとかなり恥ずかしい。でも同時にどうでもいい気にもなったきた。
「んんっ....ぐっ」
どうにも例えようのない解放感。下半身が弛緩しているのが分かる。
「サンジ」
「へ？」
俺は間抜けな声を出したみたいだった。
今日、初めて名前を呼ばれて、一瞬誰のことだか分からなかった。
「ゾロ」
「おはよう」
唇の少し横の部分に、キスをされた俺は、頭がまだぼんやりとしている。
「何だ、夢か....」
俺はほっとしたような、ちょっと残念なような複雑な気分で体を横に向けた。やけに下半身が軽い。
「あぁ？何も穿いてねぇ....」
昨日寝る前にはちゃんと着てたと思ったけどな...。その後またコイツとヤッタんだっけ？さっきの変な夢の記憶が邪魔して思い出せない。
と、その時、空気の動きに乗って、アノ匂いがしてきた。さっき出したばかりと分かる、生々しい匂い。
「どうした？」
「なぁ....ゾロ」
「ん？」
「俺....どこに出した？」
「......何を？」
「アレだよ....この匂いの元」
「......何だ覚えてねぇのか」
「いや....覚えてるような気がするけど....確認までに」
ゾロはニヤニヤしているだけで答えない。
「ヤラシイ顔しやがって....」
「あァ？スケベ面のおめぇに言われたか...」
「なぁ？教えろって！」
俺はゾロにぐっと近付いて迫った。ゾロは反射的にキスをしてきた。
「こら！誤魔化すな！」
「ん？なんだ、シテ欲しかったのかと思った」
「いや...これはこれで嬉しいけど....って違うっ」
ゾロの顔はまだ、すぐ目の前にある。睫毛が意外と長くてちょっと可愛い。
あ.....また違うことに気を取られてしまった。
「俺が残らず全部飲んでやったけど....悪かったか？」
「......」
「ご馳走様でした....これでいいか？」
一瞬だけ笑顔を向けられて、あぁ、そうなの？と納得する。
「お前、イった後....寝ちまって」
「........」
「俺のを突っ込み損ねた」
「....何ぃ？」
色々記憶がごちゃまぜになっているところへ、ゾロのこの発言で俺は余計混乱した。
あ、それで結局アレは夢じゃなかったんだな....夢であって欲しかったけど。
「思い出してきたか？」
「ゾロぉ....」
「怒るなよ」
「あんなコトされて....いくら俺だって」
「どうにかしろって言ったの、おめぇだろ」
「だからって....」
「俺が全然手を動かしてなかったのに、あれだけ感じさせてやったんだぜ」
「....それは...」
「アノ後、俺のを挿れて啼かせてやりたかったのによ...惜しかった」
「.....？」
「ん？」
「....で、ソレ、どうしたんだ？俺が寝ちまってから」
俺はゾロの下半身に視線を移した。
「俺もまた眠くなったから、結局そのまんまだ」
「それは悪かったな....」
俺はゾロのブランケットをどけると、何も着けていない下半身が露になった。特に隠すでもなく、ゾロは黙って俺を見ている。
「もう、鎮まってるから、いいよ」
「鎮まってる...フリだけだろ」
「平気だって」
そっとそこに指先で触れてみた。少し緊張が走り半勃ちになった。
「すげぇ敏感だな」
「こら、よせって」
ゾロの欲情した声なんて、すぐ分かる。そう、隠すなんてことはしねぇヤツだ。
「シャワー、行こうぜ」
「......」
返事は無かったが、ゾロは俺と一緒に起き上がり、ベッドから下りた。その一瞬下げた視線。その横顔の色っぽさに、俺の心臓は跳ね上がる。
「ん？」
「ゾロ....」
「何て顔してんだ....早く慣れろよ」
「へっ？」
「俺に惚れたか？」
「....バカかっ.....今初めて惚れたんじゃねぇぞ....ずっと前からだっ」
「そーかよ....」
俺がついつい思った通りを全部吐き出してしまったことに気付いた時には、ゾロはさっさと先に歩いて行ってしまった。
アイツ....耳が赤くなってやがる。
「ゾーロ？」
「んだよ」
振り返ってくれよ。
バスルームのドアを開けて、ゾロはそのまま前を見ながら言った。
「ほら、早く来やがれ。思いっきりぶち込んでやっからよ」
何だか声に迫力がない気がする。
これならイケルぞ。
俺は深呼吸をすると、ドアを後ろ手で閉めた。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
手早く身体を洗うとゾロが背後から両手を回してきた。
先手を打たれてしまったが、まぁいい。背中にゾロの身体が密着する心地よさと引き換えに、俺は早々に諦めた。ゾロの顔が近付いてくると、まだ何もされないうちから背中がゾクゾクしてくる。気配と、微かな吐息だけで、俺の心拍数が上がる。
何で、慣れてくれないのか、俺の身体は。
耳の中を舐めてくるのも、耳たぶを甘く噛んでくるのも、首筋からうなじにかけて唇を滑らせてくるのも、鎖骨のあたりを軽く吸ってくるのも。
全部分かってることなのに。
全然慣れずに毎回気持ちが昂って、力が抜けそうになって、頭ん中がぼーっとしてくる。そしてそれは、もう今となっては、されるのが当たり前になっている。
そしてそれが始まりの合図。
「んっ」
俺は少し後ろを向かされて、ゾロからの激しい口付けを受けた。もう俺にはカケラも抵抗する気力などなかった。口の中で動き回るゾロの舌は、熱くて蕩けるような感触をもたらした。
俺の腰にぶつかるゾロの高まりへ、手を伸ばした。かなり熱を持ち、硬くて張りがある。きゅっと握り、ゆっくりと上下に扱き始めた。すぐに手が粘液で濡れてきた。
「はぁ.....」
俺の耳元でゾロの小さな喘ぎが聞こえる。
「ふあっ...」
ゾロの手も同じく俺を愛撫し始めた。気持ちよくてたまらないけど、俺はその手を制した。身体をゾロの方へ向けた。ゾロの潤んだ目が、半開きの唇が、全てを伝えてくる。
ゾロの手を取り、俺の肩に載せさせると、膝を落とした。勃ちあがるゾロ自身が目の前に近付いてくる。ゾロの匂いが鼻を掠めた。
閉じたままの唇で、先端とくびれの部分を撫で回す。亀裂から透明の液が滲んでくるのが見えた。そっと舌先で受け止める。
「ゾロ...肩痛ぇ....」
「すまん...」
力を逃がしきれない手、ぐらつく膝。意外と限界が近いということか。少し待ってろ、楽にしてやる。
広げた舌をゾロ自身に絡ませながら、口の中へ呑み込んでいく。また、一回り大きくなったような気がした。俺の肩の上では、ゾロの手が落ち着きを無くしているのが分かる。
焦らしたい。けど、啼かせてイカせたいと、俺の二つの欲求が頭の中をグルグルしてくる。
あと少しだけ。俺は舌だけを少し動かしながら、ゾロの腰に手を回して支えた。時折ぐいっと俺の方へ身体を押し付けてくる。今どんな顔してるのか、見てやりてぇ。
しばらくすると、ゾロの手の力も強くなくなって、落ち着いてきたように感じた。そろそろ頃合か。いい加減顎も疲れてきた。ゆっくりと、歯がぶつからないよう注意しながら、頭を上下に動かし始めた。
「んんっ....」
ゾロが俺の肩を掴んで、耐えているような声を出す。もう少し我慢してろ、いや...我慢するな。
唇を少し窄め、吸い上げながらさらに動かすと、ゾロは鼻に抜ける声を聞かせてくれる。
あ、ヤバイ。今、すげぇ突っ込みたくなってきた。
ゾロはもう寸前のところにまで来てるだろうから、そんなコト言ったら殴られそうだな。
「んぁ....お...い」
「...え？」
今、俺に話しかけた....？
「手ぇ....かせ」
手？俺はゾロが差し出した手に自分の手を近づけると、指をまとめて掴まれて、それを.....
それを、ゾロの股間へと引っ張り込まれた。ちょうど指先が、そこに下がる柔かい嚢に当たっている。
「ココも...触って欲しいのか？」
「違う....その後ろだ」
後ろにあるのは、ソレしかねぇけど。多分間違いないんだろうけど、俺は慎重に指を辿っていった。焦れったそうなゾロの舌打ちが聞こえた気がした。
粘膜の窄まりに指を載せると、ひくっと蠢いて、拒絶どころか誘惑してくる。いつの間にこんな風になったんだよ？
ココ、どうして欲しいんだよ？
一応訊いてやった方が盛り上がるのか、黙ってさっさと進めた方がお気に召すのか。なかなか俺の愛しい恋人は、扱いが難しい。
「......焦らすな」
搾り出すような、掠れた声を、確かに聞いた。
俺の心臓の動きがまた激しくなる。あぁもう、半日も経たないうちに、一年分くらい余命が減ったぜ。
焦らすもんかよ。
もう、俺の方が焦らされてるみてぇだ。
つぷりと挿れてみれば、ゾロのゆっくり吐く息。ちゃんと合わせて呼吸している。中もある程度は湿っているが、激しく動かすのは無理そうだ。
「ちょっと、待ってろ」
俺は石鹸を手に取り、多めに泡を立てながら、また指を挿し入れてみた。大丈夫そうだ。ゾロも静かに俺を待っている。
関節を曲げ伸ばしすると、少し指が締め付けられる。だんだんそれもなくなると、指を増やす。いつもより柔かい気がして、俺は一気に3本に増やした。
ゾロの、口からゆっくり吐く息。俺の耳にも届いている。
ゾロの中は熱くて柔かくて、指が同化しそうになる。その指先でゾロの腹の方向目掛けて、内側から撫でてやる。
撫でながら、しばらくほったらかしになっていた、ゾロのペニスを頬張ってやる。一気に熱が戻ってくる。
「んあっっ」
ゾロを支えるのも結構辛い。今丁度指先がイイ場所に触れたらしい。口の中のゾロも、もう限界いっぱいという感じだった。コリっとしたその部分に、もう一度指で何度か触れてやる。
「ああっ...あんっ....んん...」
口の中で、ゾロの匂いを感じた。今、すげぇ気持ちイイんだろうな.....。少し前までの俺は、まだコレを知らなかったから、ゾロが感じている顔を見れるだけで充分だった。
でも、知ってしまった。
いいんだか悪ぃんだか、俺も同じ快楽を覚えてしまった。一体どうしてくれるんだよ。
「サン.....ジ...っ」
「ん？」
「また....おめ....ちが....こ、と、か.....」
「あ、ゴメンゴメン....ちょっと俺の方もヤバかったから....」
それは嘘ではない。俺はゾロの痴態を見ているだけで、どうにかなりそうだった。
「サン、ジ.....」
「ゾロ...？」
「イカせろ」
そこからは、記憶が曖昧で、俺はなりふり構わずゾロを掻き抱いたと思う。時々タイルが痛いと思ったりもしたが、大した問題ではなかった。俺の微かな記憶が夢でなければ、俺はゾロを前からも後ろからも、激しく突きまくっていた。
手の中のゾロが激しく痙攣したのに合わせ、俺もゾロの中に精を吐き出した。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ん？
確かゾロは、"思いっきりぶち込んでやっからよ"とか言ってなかったか？まぁ、あんまり本気出して言ってるようには聞こえなかったけど。
何か、いいように乗せられた気もしないでも....。
「ごほっ....」
ゾロがシャワーの湯をかけてきた。
「何...」
「ほら、洗ってやるから」
「....うん」
しかし何でこんなにケロッとしてるんだ？俺は腰も膝もかなりキテるんだけど。コイツだって結構負担がかかっていたと思うのに。
俺がじっとしていると、ゾロは手で撫でながら身体を流してくれた。股間も腹も太腿も、誰のモノで、それが汗か唾液かアレなんだかソレなんだか判別つかねぇくらいベトベトになっている。ゾロが丁寧に撫でて洗ってくれるのはいいが、それがまた気持ちよくて、つい感じ入ってしまう。
「おいっ....てめェな....」
ゾロも本気で怒ってはいないが、一応怒ったような言い方で、俺の股間を眺めている。
「あーあ、勃っちまったじゃねぇか.....ゾロがあんまり巧いから」
「このエロ眉毛」
「エロさで言ったらお前の方が上だろ」
「いーや、おめぇだ」
ソレ、どーすんだ？とゾロはクスッと笑いながら指差してくる。
「どうせヤッテくれねぇんだろ？いいよ、トイレで出してくる」
「へぇ」
「何なら、見に来るか？」
「おう、見せてくれ」
「.............」
やっぱり、ゾロ。お前性格変わったんじゃね？
「やっぱり見せねぇ」
「あぁ？たった今、見に来いっつったじゃねぇか」
「冗談に決まってんだろ」
「逃げるのか、男らしくねぇ」
「ちゃんと男だ！コレ見りゃ分かんだろ！」
「だーから！見てやるっつってんだろ！」
「ちげーよ！見せねぇっつってんだろー」
ゾロは薄っすらと笑いながら言う。
「おい.....もう必要ねぇんじゃねぇか？」
ゾロの視線の先にある、俺のモノはすっかり大人しくなっていた。
「へっ、これくれぇで萎んでやがる。大したことねぇな」
「んだとコラ」
傍から見れば相当ウザイ二人に違いねぇ.....
ひとまず良かった、俺は食われるのかとビビッてたら、ゾロの中から目覚めたのは、まだクソ生意気なガキの虎だったようだ。
まだ.....しばらくそのままでいてくれることを願うだけ。
fin.
2009.08.19
■ストーリーの流れもなくオチもなく....申し訳ございません(大汗)。ゾロは攻める楽しみを覚えてしまったようです。でもゾロサンでガシガシ攻めるはずが....予定外なサンゾロになってしまいました。どんどんゾロが違う人になってきて、本当にスミマセン(陳謝)
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