【＋２０】 〜学園シリーズ 未来編〜
Waiting for You
〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***
それは、突然やってきた。
予想も予感も何もなく、まさに青天の霹靂。
驚きの声すらまともに出なかった。
ずっと一緒に居るもんだと信じて疑わなかった。
でも、それは、突然やってきた。
＊＊＊＊
俺は悲しみの海に漂い、溺れるなんてのは趣味じゃねぇ。そんなのは何の得にもならねぇし、状況が変わる筈もねぇんだから。
「決まったもんはしょうがねぇよな」
しっかりと受け止めるのも男だろうが。
そして自分でそうと決めると、案外と気持ちも落ち着いてくる。
元気でな。ちゃんと生きてろよ。
俺にはそれしか言えなかった。
＊＊＊＊
でも、やっぱり。
あの時は本当に、どうなるかと思った。正直耐えられる自信もなかった。でもそれを言ったらアイツもきっと同じ思いなんだろうし、だから必死で堪えたんだ。
またすぐ会えるさと思っていたけど、確かその次に会えたのは、それから2年ほど経った時だった。そして、"また近いうちに会おう"と不確かな約束をした。
その約束を胸に。毎日を過ごしていた。
＊＊＊＊
「今度、そっちに寄るよ」
「おう、そうか。期待しないで待ってる」
何度となく繰り返された、そんなやり取り。時にはメールで、またある時には滅多に無いけど電話で。すぐにでも会えるような気がして、でもいつ会えるんだろうとぼんやりと考えて、朧げな再会シーンを思い描いて日々を繋いできた。
もう、さすがに辛いとかは思わなくなった。アイツが元気でやってる事が分かっているのだから。居場所がイマイチ掴めなくて、それでも俺との連絡用のメールアドレスだけはずっと変わらなかった。俺のメールはいつも長くて、書いた後にあちこち削って短くしていた。それに引き換えアイツのメールは簡潔過ぎて、行間を読むのにも一苦労だった。
でもいいんだ。元気にしてるみたいだから。
最後に会ったのはいつだったか。その前の時から5年、いや10年は経っていたような気がする。と言う事は、今から何年前なんだ？
年を取ると時間の流れが妙に速く感じる。自分ではそれほど変わったとは思ってないんだが、それでもきっと変わったんだろう。
♪♪
「！」
慌てなくてもいいのに、俺は急いで携帯のメールを確認した。間違い無い、ゾロからだ。
『今からそっち行く』
え？今からって....。
俺が家に居るかどうかも確かめもしないで、だいたい今日来るなんて知らされてなかったし。
一体いつ、帰ってきてたんだ？
"今から"って、何時頃？早く連絡くれれば何か作っておいたのに。とにかく何か簡単な物でも、無いよりはマシだろう。俺は椅子にひっかけておいたシャツを掴んで袖を通しながら玄関へと早足で歩き、スニーカーに足を突っ込んだ。踵は踏んづけたまま、ドアチェーンを外していると、チャイムが鳴った。
「誰？」
覗き穴に目を近づけた。
「嘘.....」
つい昨日も来たみたいな顔をして、ゾロが突っ立っている。だから俺も当たり前のようにドアを開けて言った。
「お帰り、ゾロ」
「おう」
口の端を少し上げた、変わらない笑い方。ちょっと近くまで出掛けて戻ってきたみたいな、小さなバッグを片手に。
＊＊＊＊
「今、買い物に行こうと思ってたんだ....入れ違いにならなくて良かったよ」
ゾロは部屋の隅にバッグを置いただけで、そのまま立っている。
「俺、ひとっ走り行ってくるから....お前疲れてるだろ？ゆっくりしとけよ」
「いや、一緒に行く。荷物持ちくらいはさせてくれ」
「そうか？じゃ、頼む」
俺達は近所のスーパーへ買い物に出掛けた。せっかく持ってくれると言うので、必要な物を目一杯買い込んだ。
二人の間に時間は関係無かった。
ごく当たり前に話し、相槌を打つ。
俺がキッチンに立つと、ゾロも隣で手伝ってくれた。知らない間に手際も良くなっていて、一瞬だけ月日の流れを感じた。そして二人で作った物をテーブルいっぱいに並べて食べた。
ゾロから突然聞かされた時は驚いた。
「サンジ、俺.....転校するんだ」
「転校？何、遠くに行くのか？」
「うん....」
「どこ？」
行先は近隣の地方都市くらいだろうと思っていたら、ゾロの口から出たのは外国の地名だった。時差ボケするくらいの距離にある、とても遠い場所だった。
「いつ...？行くんだ？夏休み？」
「いや....5月...遅くても6月には」
「そんな急なんだ」
現地の学校の編入に備えて、勉強もするとかで少しでも早く行くのだとか。俺は話を聞いたばかりで、頭が混乱しかけたが、ゾロはもう次の事を考えているのだろう、落ち着いた様子で話していた。
ここで俺が取り乱したりしちゃ駄目だ。ゾロが行き辛くなるのは俺だって望んでねぇ。だから、笑顔で送り出してやった。
「元気でな。ちゃんと生きてろよ」と。
そして出発の日まで、1ヶ月以上あったのに、二人でゆっくり会う事は無かった。会えなかったんじゃなくて、会わなかったのだ。ゾロは小まめに連絡をくれたのに、俺が何かと理由を付けて会わなかった。
その2年後。バイトで資金を貯めた俺は短い旅に出た。ゾロに会うために、生まれて初めての外国への一人旅。俺は大学の試験休み中だったけど、ゾロの方はこっちとは事情が違って週末しか休みが無かった。ほんの短い日数の滞在だった。
色々時間を工面して都合を付けて、ゾロは俺の19歳の誕生日を祝ってくれた。
「サンジ」
「.....ん？」
「どうした？」
「あぁ.....何か昔の事、色々思い出してた」
「前に会った時の事か？」
「お前が向こう行ってから、会ったのって2回だったよな？」
「そうだったか？そんなに会ってなかったか？」
「そうだ。今度会いに来るとか言って、全然来やしねぇ」
「俺も色々忙しかったんだ」
俺の方も何かと忙しかったのは事実だが、離れてから20年経つなんて。
ソファの足元に敷いたラグの上に胡坐をかき、ゾロは缶ビールを飲んでいる。俺の作ったつまみを時々口に入れ、旨そうに食べる。俺はあまり飲めないので、煙草を吹かすだけ。
「そんなに経ってたんだな....」
「うん」
「二人ともいいオッサンだ」
「あぁ」
ビールをあおるその姿は、確かに年を取った気もするが、それほど老けたとも思えない。だからなのか、本当に久しぶりなのに、つい最近会ったような気がしてならない。
「ゾロ」
今さら、もしかして嫌がるかも、と思ったが、俺は膝をついたまま身体を伸ばし、ゾロの肩に手を置いた。ゾロはビールの残りを飲み干すと、手にしていた缶をきゅっと握り潰してテーブルに置いた。
「今飲んだばっかりだから、酒臭ぇぞ」
ゾロの言葉は聞き流して、何の躊躇いも無く、俺はそのまま唇を近づけた。ゾロの手が俺の首の後ろにそっと回された。俺はまだ半分も吸っていない煙草を、灰皿の中に転がした。
懐かしい唇の感触。それはビールの苦い味しかしなかった。まだひんやりとしていて、舌を差し入れたその中もまだ冷たかった。重なり絡まり合う舌のざらつきと温度差に、背中がぞくぞくしてくる。
「変わらねぇな」
ゾロはそう言うと俺の後頭部の髪を指で梳きながら、キスを続けている。
「髪の感触も匂いも....このあたりの...」
ゾロの唇が俺の耳たぶから首筋へと滑り降りた。俺の身体が反射的にぴくりとすると、ゾロの微かな鼻息が首にかかった。見えてはいないけど、ニヤリとしたゾロの顔が浮かんだ。
「他も変わってねぇか、確かめる」
ゾロは自分が座っていた場所を空け、俺の身体を置いた。袖だけを通して着ていたシャツを脱がされ、そのままラグの上に寝かされた。
「サンジ」
そう名前を呼ばれただけで、俺の身体に熱が篭る。まるで印がついているかのように、際どいところばかりにゾロの唇が触れてくる。目を閉じて耐えていると、ゾロが自分の衣服を脱ぎ捨てる気配がした。
「お前も...」
ゆっくり脱がせる時間も惜しいらしい。ゾロは、俺にも自分で脱ぐように顎で示した。
「んぁ.....」
全身を愛撫され、やっと俺の中心にゾロは辿り着いた。その先端から糸を引きながら落ちている透明の液が、俺の下で皺になっているシャツに染みを作る。根元から先端へ向けて、ゾロの舌が這い上がる。さっきから焦れったくてしょうがない。
「ここの硬さも熱さも....色も」
「あ......ゾロ」
「全然変わってねぇ」
先端の一番柔かい部分に舌が到達した時には、耐え切れず声を漏らした。
「おい....ココ、さっきからずっとタラタラ出てんぞ....ヤラシイな」
「お前....そういうオヤジ臭ぇ台詞、どこで覚えた」
俺の卑猥な言葉にいちいち顔を赤くして怒っていたあの頃のゾロ。やっぱり大人になってしまうと、そういう楽しみが無くなるのが残念だ。
「ゾロ....いいのか？俺ばっかり」
「サンジの後でいい」
「ちょっとそこに座ってみろ」
ソファに背中をもたれかけさせ、ラグの上にゾロを座らせた。ゾロの股間から天を仰いでいるモノが嫌でも目に飛び込んでくる。そしてゾロはそれを隠そうともしない。俺はゾロの足の間で身体を屈め、ソレを手に取り顔を近づけた。
「サンジ.....」
ゾロの手が俺の頭に載せられた。太腿がぴくりと動き、切なそうな吐息が頭上で聞こえた。まだ唇を少し付けただけなのに、相変わらず感度は抜群だ。
「んっ」
鼻から抜ける息が、ゾロの変化を教えてくれる。俺はもっと声を聞きたくて、深くまで咥え込んだ。喉を動かしながらペニスの先端を刺激した。ゾロの手に力が入ってくる。
「サン....ジ、それ、は.....」
いきなりコレをされるとは思ってなかったのか、ゾロは僅かに腰を浮かせた。俺はその腰を抱え、口の中のモノを唇を窄めて扱き始めた。浅くしたり深くしたりと不規則な動きを加えた。
「はぁ....ぁ.....んっ」
以前に比べると声が低くなって、色気が増したようだ。俺は体中の血が躍動を始めたのを感じた。もう、自分ではどうにも収める事ができない。
「サンジ！」
ゾロが俺の腕を取り、身体を持ち上げると抱き締めてきた。俺は思わずゾロの首にしがみついた。膝立ちの状態の俺の背中をゾロの手が撫で下ろす。そしてその手がどんどん下がってきた。
「ゾロ？」
「ここも....変わってねぇ....」
尻を撫でながら、ゾロは俺の耳元で言った。そして指がさらに奥深くへと進んでいく。
「おいっ.....まだ無理だって」
「これで何とかならねぇか？」
俺のペニスから少しずつ溢れている体液を指で取り、後ろの孔に塗りつけた。まだ足りないと思ったのか、今度はゾロが、自身から糸を引きながら落ちてきている体液をさらに塗りつけた。
「さっきから俺の指に食いついてんぞ」
「知らねぇよ」
「誘うの、巧くなったんだな」
「誘ってなんか....」
つぷりとゾロの指が入ってきた。そのまま奥へ進んでくる。俺もだんだんと感覚を思い出し、ゾロの指が動きやすいよう、腰を動かした。
「すげェ....中、熱くて柔けぇ....」
「ふっ....ぁ」
「このへん....だよな？」
敏感なポイントを早くも見つけると、ゾロは何度も指で撫でてくる。そして片手で俺の腰を支えている。俺は膝に力が入らなくなり、ゾロの肩に頭を載せて耐えた。
「あっ....もう....そのへんに、しと...け」
「サンジ...顔、見せろ」
「あっ...やめっ.....」
「やめねぇよ」
俺の股間の辺りから、聞くに堪えない恥ずかしい音がする。音が出るようにゾロがわざと指を出し入れしているらしい。いつの間にかその指も2本か3本に増えているようだ。
「いい感じになってきてんぞ」
「手際良過ぎだな.....どこで鍛えた？」
「疑うのか？俺はサンジしか知らねぇのに」
この年になっても、その表情をして見せるのか。俺はその少し尖った唇に甘くキスをしてやった。ゾロも目一杯応えてくれた。
ゾロが俺の腰に両手を添えると、俺は息を少しずつ吐きながら腰を沈めていった。真正面のゾロの顔を見ると、目を閉じ下唇を噛み締め、息を詰めている。
「はっ.....」
「ゾロ？」
「.....キツイ」
「当然だ。ずっと使ってなかったんだからな」
「.....俺の為に？」
「.....バカ野郎」
沈めた腰を揺らせてみると、ゾロは薄く目を開けた。小刻みに呼吸をしながら俺に合わせてゾロの腰も動く。そうしているうちに的確に、あのポイントに当たり始めた。
「くっ...」
「あっ....」
「降参か？」
「まさか....俺を舐めんな」
俺は腰を退き、再び元の位置に落とした。薄く開いていたゾロの目が見開かれた。俺は何度もその動作を繰り返す。
「おいっ....そんなに動くなっ」
「何だ、降参か？」
「んな訳あるか....これくれぇ」
「もっと早くできるぞ？」
俺は容赦しなかった。だんだんとゾロは視点が定まらなくなり、目をギュッと瞑った。
「あっ....んっ....」
「いい顔だ.....すげぇそそるな....」
「うっ....ちょ....まて」
「待って欲しい？じゃ、ちょっと中休み」
一番深いところまで沈めたまま、俺はゾロの胸にもたれ、ふーっと息を吐き出した。俺の中でゾロのモノがぎっしりと詰まっているのを感じる。ほんの少し下腹部に力を入れてみると、ゾロのカタチが手に取るように分かった。
耳のすぐ傍で、ゾロの歯軋りと、喉の奥から搾り出すような小さな声が聞こえる。俺の腰から背中にかけて、ゾロの手が掴むところを探しているかのようだ。
「てめっ.....」
「待てって言うから、止めてやったのに」
「クソ.....」
ゾロの手は忙しなく、俺の後頭部から首、背中と落ち着く場所が定まらない。俺の尻に当たっている、ゾロの身体の最も柔かい部分が、もぞもぞと蠢いているのが分かった。
もう少し楽しみたかったけど、ゾロのあんまり切なそうな目が、それを躊躇させた。
あの頃のように言ってみたら、どう答えるだろうか。
「ゾロ、どうしたいのか、言ってみな？」
ゾロは唇を俺の耳に近づけて言った。
「サンジの......中で.....イキたい」
再び動き出すと、ゾロも時々下から突き上げてくる。負けず嫌いなヤツだから、簡単には終わらせてはくれない。俺は身体が崩れそうになりながらも、ゾロに負けまいと激しい動作を繰り返した。
「ぐっ...ぁ」
「んっ....」
互いの背中や肩にかかる手が、規則的な痙攣に合わせて動いている。少し遅れて息を大きく吐いて、やがて身体が弛緩していった。ゾロの腹の上には、俺の吐き出したモノが溜まっている。ラグの上で皺くちゃになっている俺のシャツを引っ張り、そっとソレを拭き取った。
「いつまでこっちに居られるんだ？」
「.....ま、しばらくは」
「決まってねぇのか？」
「まぁな」
「......？」
ゾロの身体は俺に密着したままの状態で、俺も離れようともしないでゾロの背中に腕を回していた。
「サンジの顔見たら....すぐ戻るつもりだった」
「....え？」
「気が変わった」
もう何度目かも知れない、ゾロのキス。とほぼ同時に俺の中で何かが膨張した感覚があった。
「.......！」
「まだいけるだろ？」
「てめ......っ」
「無理か？なら....」
「.....来い」
ゾロがまた動き出した。俺の中がいい具合に解れているのだろうか、一旦静まっていた快感の波が、舞い戻ってくるのを感じた。
「感度、良くなったな」
「お前は元々良かったよな」
「......」
「ゾロ？」
「すげ...」
言った矢先、ゾロの表情が変わった。俺の身体を支えるゾロの手に、再び力が込められた。眉間に皺を寄せ、抑え切れない吐息が時々鼻へ抜ける。俺ももっと動いてやりたいが、ゾロの動きが的確過ぎて、思うように力が入らない。
「あ......」
「サン.....ジ」
「俺の事は気にするな....」
「くっ....」
ゾロが腰を強く突き上げてきた。グラインドも激しく、俺の中を何度もかき回した。
「あ....分かった....分かったから....一緒に.....」
「んっ.....」
「んぁっ...ぅ.....」
ゾロのペニスがさらに大きくなったのが分かった。俺は最後の気力を振り絞り、長めのストロークで腰を動かすと、ゾロは唸りながら俺の腕を掴んだ。その痛さが一瞬消えるほど、俺の頭の中が白く弾け、数秒間呼吸が止まったみたいになった。そして目を開けると、俺自身が放った白濁が、俺と、そしてゾロの腹の上をとろりと流れ落ちていくのが見えた。
「シャワーくらい一人でできるだろ」
「サンジ、本当は一緒に入りたいクセに」
「ちっ....お前に合わせてやってんだ」
本当はどっちでもいいんだけど、俺は一応文句を言いつつゾロとシャワーで洗い合っている。俺がトイレで事後処理している間に、先に済ませておけと言っておいたのに、俺が来るまで待っていたらしい。
久々だから、ちょっと照れ臭いとか、そういうのはゾロには無いのだろう。俺はゾロの真正面に立つのは何だか恥ずかしくて、そっと後ろを向いた。ゾロが俺の背中に湯をかけると、そのまま抱き締めてきた。
「初めてサンジの家に泊まった時、一緒に風呂入ったよな」
「.....そうだったな」
「あの時初めて.....」
「........俺の口の中で...」
「うわ、変なコト思い出した」
「俺が初めて手でシテやった時も、口でシテやった時も」
「もういいよ！」
「......お前、泣きそうな顔してたな」
「もういいって言ってんだろ！」
「....すげェ昔の話だろ？」
「.....でも、よく覚えてるから」
「忘れられねぇ？」
「忘れられるもんかよ」
「俺様のテクが？」
茶化した言葉にも反応せず、ゾロは続けた。
「.....サンジとの事は、全部忘れねぇよ」
「.....ゾロ」
俺は振り返ってゾロの方を見ようとしたが、阻止された。ゾロは背後から俺を強く抱き締めたまま、話を続ける。
「忘れた事なんて、ねぇよ」
「俺だって」
「だから、ずっと忙しくしてたら....思い出す度辛いから.....こんなに時間が経って」
「バカだなぁ.....」
俺はゾロの手を取り、甲にキスをした。
「何で会いに来ねぇんだよ？それか連絡してくれたら会いに行ったのに」
「そんな事したら.....」
「......？」
「二度と離したくなくなるだろ......」
本当にバカだな....だったら一緒に居ればいいじゃねぇか。でも、もうそれすら簡単にできねぇくらい、お互いの立場が変わってしまったんだよな。どっちかが片方に合わせるのが、無理になっていて.....それは一方が何かを犠牲にするという事。
でも、もうそろそろ、落ち着いてもいい頃じゃないだろうか。お互い、やりたい事も十分できたと思う。俺は、ここを出て、ゾロの元へ行ってもいいとさえ思い始めていた。でも、確かゾロは、すぐ戻るつもりが気が変わったと言っていたみたいだったが。
「しばらく、ウチに居ろよ」
「....うん」
「ずっと居てもいいぞ」
「それは....」
「やっぱり向こうに戻るんだろ？」
「でもすぐ帰ってくる」
「向こうの家とか....仕事とかは？」
「こっちでもできる。アパートはすぐ引き払う」
何だ、もう決めてるんじゃねぇか。
そっと振り返ると、少し真面目な顔をしたゾロが居た。ただ、全裸だから真面目度は半減するんだけど。俺は正面から近付き抱き締めると、ゾロの耳元で小さい声で、でもハッキリと言った。
"一緒に暮らそう"
もう、離さない。
fin.
■"会うは別れの始まり"の別バージョンとして書かせて頂きました。やや精神的SZっぽい演出がありますが、一応ZSです。前述の方では二人の先にあるのは"別れ"かも知れなかったのですが、こちらは別れません！
皆さんはどちらがお好みでしょうか？
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