嵐のあと


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嵐が吹き荒れた後に残されたのは、ぐったりと疲れきった二人。

「...今日が日曜で良かったぜ」
「マジ...疲れた」

二人並んでベッドに突っ伏しる。互いに顔を伺い見て、目が合った。どちらからともなく、フッと鼻で笑いながら、相手の方へ手を伸ばす。

「ゾロ、油断すんなよ」
「ん？」
「エースの狙いはお前だから」
「何で？サンジじゃねぇのか？」
「お前が店に入ってきてから、エースの視線感じたこと、無かったのかよ？」
「はぁ？？そんなの知らねぇよ...つか...お前の...」
「俺の？何？」

ちょっと口ごもりながら、ゾロは続けた。

「お前のこと以外、頭回ってなかったからな...」
「ゾロ...」
「クソ...何言わせんだ...」
「自分で勝手に言っといて...。でも、俺もそうだった」

思いがけず、ゾロの口から嬉しい言葉を聞けて、ちょっと得した気分のサンジだった。

そう、あの頃は...。
自分の気持ちすら、よく分かってなくて。
ゾロがどう思っているかなんて、全く考えが及ばなくて。
些細なことで一喜一憂していた。
それで、ナミやシャンクスの格好の餌食になっていた。

今思えば、笑い話だ。あれからまだ1年も経っていない。もし、サンジがホストを続けていたら、シャンクスが新人のスカウトに力を入れることもなかっただろうし、ゾロが店に来ることもなかっただろう。来たとしても...サンジとの関係は、今のものとは違っていたかも知れない。

一つ選択肢が違っていたら、今とは違う人生が待っていた。

「お前が来てくれて...本当に良かったよ」
「ん？」
「俺がホスト辞めて...しばらくゆっくり、次の事考えようと思ってたけど、シャンクスの強い一言で、店に残った」
「そうか」
「お前も、よく辞めずに、俺の研修についてきてくれたし」
「色々あったなぁ」
「俺のお陰で、ネクタイの結び方もマスターできたし」
「...それを言うなって」
「結べなくて困り果ててるお前の顔、今でも忘れらんねぇ...」
「サンジ！」

それ以上喋るな、とばかり、ゾロがサンジの口に指を当てた。

今まで、話題にこそ出さなかったが、店でのゾロの研修中、何かとエースが首を突っ込んできたり、こっそり様子を見ていたり...ということがあり、サンジはいつも不思議に思っていた。

でも、だからと言って、とりたてて深く考えなかったのは、目の前のことに必死だったから。ゾロのことしか頭になかったから。

今は....その頃に比べれば、多少は余裕も出ただろうか？

「なぁ、ゾロ」
「ん？」
「俺...変わったか？...あの頃と比べて」
「さぁ...どうかな...変わってないんじゃねぇか？」
「....一つのことを除いてはな」
「一つのことって何だよ？」
「今は、お前に惚れてるってことだ」
「.......何だ....」

ゾロは、少し勿体ぶったような口調で続けた。

「あの頃から、もう俺に惚れてたのかと思った」
「バーカ、自惚れてんじゃねぇぞ」

ゾロがこんなことを言う時は、すこぶる機嫌が良いのだろう。サンジの手がさらに伸ばされ、ゾロの髪を梳く。

「お前は、俺に惚れてくれてねぇの？」
「...んなの、わざわざ訊くんじゃねぇ」
「俺にだけ言わせて、ズルイぞ」
「おめぇが勝手に言ってんじゃねぇか」
「そうだけど...」

意地でもその言葉を言わせたくて、サンジは頑張ったが、ゾロは鼻先で笑うだけで、言ってはくれなかった。

「でも...さっきのあの一言、すげぇ嬉しかったぜ」
「さっきの？何だ？」
「エースが帰り際に言ってただろ、もし俺達が別れたら...って。そしたら俺達、言い返しただろ」

異口同音に、『別れない』と。

「別れるなんて、考えもしなかったからな。自然に口に出た」
「今日は...ある意味災難だったけど、嬉しいこともあったから、良しとするかぁ...」

サンジがゾロに近付いた。軽くキスをすると、ゾロもそのまま返してくれた。そして、サンジはゾロの胸に抱きかかえられた。

「少し眠るか」
「何か目が冴えてきたんだけど.....」
「じゃぁ...ちょっと運動するか？」
「え？」

疲れていた筈の二人も、いつの間にか体力が少し回復していた。そのせっかく回復した分を、これから消耗しようとしている。

「あ...ゾロ...」
「いいから...俺に任せとけ」

ゾロがそう言うのなら、とサンジは全てを任せることにした。たまには、こういうのも悪くはない。ゾロの手の動きは、とにかく優しくて、何度も落とされる唇も、柔かくて温かい。

「ゾロ...、何でこんなに優しいんだ？」
「.......惚れてるからに決まってんだろ」
「え？今、何て....」

何でもねぇよ...と小さく呟いたゾロは、また先ほどの行為を続ける。サンジは、ゾロの言葉が嬉しくて、気持ちが昂っていった。

「.....この先もずっと、俺に惚れてろよ」

それに返事をする代わりに、ゾロの一際熱いキスが降ってきた。

言われなくたって、ずっと惚れてるさ...

サンジが聞いたらきっと喜んだだろう、その言葉を、ゾロは心の中で呟いた。


fin.

■二人の邪魔をしたはずのエースの行動が、かえって二人の絆を強めたみたいです。何だか甘々になってしまいました。こんなのゾロじゃなーい！と思われましたらゴメンナサイ。
この後、勿論アレな感じに事は進みます。ご自由に想像してお楽しみ下さいませ。




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