〜ある古城にて〜
虎目鷹の目、蛇の道は蛇
〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***
こんな好機、この先多分、いや絶対に遭遇する事はないだろう。
自分には野望がある。が、それ以上に大切な物がある。それを守る為ならば......。
みすみす逃すなんてしない。そんな事をすれば、この先死ぬまで後悔する事になるだろうから。
ゾロが"その男"と過去に一度刃を交えた時は、全く歯が立たず敗北した。そしてその男をいつか越えてやる、倒すのだと強く思い続けてきた。
ゾロは、まだ遠く手の届かない筈のその男と、思わぬ形で再び出会う事となったのは、当然自分の強い運が引き寄せたからなのだと、信じて疑わなかった。
傷もまだ癒えないその身体で、気持ちばかりが焦る。"海へ出なければ"と。そんな時もゾロを静かに諭したのは、その男。勿論、ゾロがそれを素直に受け入れる筈が無い。
しかし。
もっと強くなるには、これしかない。ゾロは彼に教えを乞う道を選んだ。
今のゾロには"野望より優先させるべき何か"があるのだろう。それを理解したその男は、いずれ自分の首を狙ってくるであろう事が分かっていてもなお、その願いを聞いてやろうという気になった。
馬鹿げている。そうかも知れなかったが。
「頼む、俺に....剣を教えてくれ」
越えたい男、"鷹の目"が今自分の前にいる。そしてゾロは床に額を擦り付けて、ただひたすらに頼み込んだ。
「この俺に頭を下げるとは....よほどの....」
「とにかく強くならなきゃいけねぇ。それに、次にお前に会うまでに、俺が生きてるとは限らねぇ.....今、強くなりてぇ」
「強くなって、どうする」
「まずは、お前の首だ」
"お前を、越える為"
ゾロの強い語気に、鷹の目のミホークは、フッと笑った。そしてそのまま、声をたててしばらく笑った。
一体この若き剣士は、自分の言ってる事が分かっているのか。頼めば何とかなるとでも思っているのか。取り合えず安易に強くなろうと言う気なのか.....。
しかし、もうすでに、
ミホークが思っていたよりずっと、ゾロは強くなっていた。
(あの時とは違う.....)
多くは語らずとも、彼ほどの剣士ともなれば、自然と分かるのだ。
まだ自分の半分ほどの年で、経験もたかが知れている。しかし、何か得体の知れない、とてつもない力を感じる。
それを見極めたい。若い身体の奥に潜む力を引き出し、成長していく様を。
「稽古をつけろと言っても、ロロノア....」
弟子など持った事が無いので、教えると言ってもピンと来ない。
「とにかく手合わせしてくれ。それで、悪いところを教えてくれ。どう直したらいいのかも.....」
「注文が多いな。何でそこまで....」
「教えてくれるって言ったじゃねぇか.....それにあの時....」
"この俺を越えてみよ"と、確かに言った。いつまでも待っている、と。その本人に修業を見て貰えれば、いつだか知れない"その時"もぐっと早く訪れる筈だ。すぐに越える事が容易ではないのは分かっている。しかし、近付く事ならできる。
ミホークは立ち上がると、ゾロに背を向け、ゆっくりと数歩足を運んだ。
「よく分かった....もういいから頭を上げろ」
ゾロは口をきゅっと結び、希望に満ち溢れた瞳で顔を上げた。もう今からでも稽古を始めたそうな表情だ。しかし当のゾロは.....とても今身体をまともに使える状態ではない。
二人のやり取りを見ていた少女が口を挟んだ。
「最初ここに飛ばされてきた時は、死に掛けだったんだ！それより、死んでると思った！私が折角怪我の手当てしてやったのに....毎日世話してやったのに.....また外で暴れてそんな身体に.....バッカじゃねーのか！」
「ゴースト娘......この際ついでだから、もう一度手当てしてやれ」
「何で私がっ....」
「これくらい、大した事ねぇ....これくらい....」
だからガキは困る....とミホークは溜息をつきながらゾロと向き合った。
「怪我が治ったら、好きなだけ相手をしてやる」
「......」
「早く治せ.....この俺の気が変わらないうちにな」
ゾロは思わず顔を綻ばせる。湧き上がる喜びをできるだけ抑えながら答えた。
「...........あぁ、分かった.....できるだけ早く治す」
じゃ、頼む...とまるで当然のような顔で、ゾロはその少女、ペローナに言った。
「てめぇ、もうちょっと丁寧に頼め！本当は嫌だけどな！しょうがないからしてやるよ！」
ペローナも、この二人がやろうとする事に興味津々だった。
→→NEXT
初挑戦の原作ベースです。広い心で読んで頂ければ嬉しいです。
Pirates MENU
NOVEL MENU
TOP