〜小悪魔の館〜

オレンジの風に吹かれて


　〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***



穏やかな海を進んでいくその船の上では、クルーがめいめいに自分の役割を果たしている。

長い航海の中では、悪天候に遭い、ある時には敵襲をかわし、また時には降り立った地で予期せぬ事件に巻き込まれる、という事もある。

しかし、そういう非常時を除けば、決まった仕事の合間には、彼らはそれぞれ思い思いの時間を過ごす。

何か面白い事はないか、と考える者がいても不思議ではない。




「あーぁ...紅茶が飲みたい....サンジくーん？」
「お呼びですか？ナミさん」
「オレンジティー、淹れてくれないかしら？」

ナミの一声で、ハートを四方八方に撒きながらすぐに飛んでくる、この能天気で軽そうな男、サンジは「よーろこんでぇ〜」と叫びながらキッチンへ戻っていった。彼の作る料理はデザートも含め、文句のつけようもない物ばかり。航海中に各停泊地で仕入れた料理や食材や調味料の情報は、彼の財産である。

暑苦しく口の悪い男達の中で、一歩も引けを取らず、船長をも黙らせてしまう彼女は、天候さえも操る航海士。軽い身のこなしに明晰な頭脳と美貌を併せ持つ。普段は航海日誌や海図を書く事に専念している。
ここに「お金」がからむと話は時にややこしくなる。知らないうちに、関わった者は彼女からの借金が増えていく。

毎度懲りもせず、ナミの策略により"数字の上ではあるが"背負う借金が増え続けているのは、剣士のゾロ。暑苦しいメンツの一人である。一に鍛錬、二に鍛錬....と日々「俺はもっと強くなる」だの「まだまだ甘い」だの、聞いているだけでそのへんの温度が上がりそうである。それ以外はひたすら寝ている。そしてそれは、食べる事よりも優先される。


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「今日のおやつは、オレンジマーマレードのロールケーキですぅ」
「わぁ、美味しそう....こんな素敵に使ってくれて、ありがとう」

ナミの許可により、個数限定で収穫したみかんは、こうして時々活用される。その日頃の管理は、サンジに一任されている。

「いつもありがとう」

そう言って笑顔を向けてくるのは、もう一人の女性クルー、考古学者のロビン。ナミと二人で談笑している時もあるが、大抵は一人で本を読んでいる勉強家だ。

この二人のレディの為、その他はついでに、サンジは毎日三度の食事とおやつを作っている。実は、誰よりも忙しく動き回っているのは彼だった。


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「あー....っと」

ナミはペンを置き、腕を上げて伸びをした。調子が出るとつい、休憩を取るのも忘れて作業を続けてしまう。

「肩凝ったなぁ.....」

細い首を左右に倒し、手首もポキポキやる。ちょっと目の奥もじんわりと痛くなってきた。

「これ以上は能率下がるだけだから、今日はお終いね」

ナミは道具を手早く片付けると、測量室を出た。生温かい風が髪を揺らした。目の前には命の次...のその次くらいに、とても大切なみかんの木が見える。

「ナミさん？」

声のする方を見ると、キッチンで一仕事終えたらしい、サンジがタバコを咥えて立っていた。



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という訳で唐突に始まりました。ゾロ誕だと言うのに(汗)！オープニングはほのぼのしてますが、これは世を欺く仮の姿。サンジの幸せは間もなく崩壊します....？





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