〜青い薔薇　番外編 4〜

飛翔〜AnotherStory〜


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は、考えた。確かにもう、限界近くまで描き続けている。

(ゾロの全裸か...確かに魅力的だわ)

それに、二人の"生のカラミ"も、冗談半分としても、楽しそうな響きだ。

「じゃ...もう一生に一度のことなので、描かせてもらいます」
「俺の？」
「はい」
「ちゃん...断ってもいいんだよ？」
「は自分の意思で言ってるんだ。目を見れば分かるだろ」
「ゾロ、私はいつでもOK」
「よしきた...」

ゾロは、半分脱ぎかけになっている、バスローブの前を全開にした。

(うわ...)

は何とか耐えて、怯んだ顔をしないよう努めた。

「これ、全部脱いだ方がいいか？」
「...いえ、今はそのままで」
「了解」

は座る位置を少しずつ変えながら、描きやすい角度を探していた。少しでも美しい姿を、この白い紙の上に残したい。

鉛筆の音だけが、聞こえる。息さえもひそめずに居られない程の、静けさ。

ずっと同じ姿勢でいると眠くなるのか、ゾロの目が気だるそうに見える。むしろ色っぽい。

(あ...ど、どうしよう...)

眠くなると、少し変化するらしいアノ部分に、思わず目がいった。半分ほど起き上がりかけている。

(半分て言っても...元々のサイズが凄いから..ああ私ったら何を考えてんだろ)

しかし、これも絵としては面白いかも知れない。は再び鉛筆を走らせた。恐ろしい程の集中力が戻ってきた。

「ちゃん...またアノ目になってきた」
「いい目だ」
「ところでゾロ...半勃ち」
「眠くなってくるとな...」
「どうせなら、完勃ちにしとこうぜ？」
「何で？」
「描きやすいんじゃねぇの？」
「カキやすい？」
「そういうジョーク、俺は受け付けねぇんだよ」
「そう聞こえたんだから、しょうがねぇだろ」
「今の描き終わったら、俺が手伝ってやる」
「今でも触りたそうなツラしてやがる」
「そりゃ、目の前にあるんだからな」

(あの...お二人とも...私の存在忘れてない？)

は、何とか描き終えた。丁度集中力も切れてきたところだ。

「できたっと！」
「お、どれどれ...」

サンジとゾロが寄ってきた。

「おー！すげぇ..」
「うぉっ...」
「ど、どうかしら...？」
「俺ってやっぱ...いいモン持ってんな」
「この微妙な状態のモノを...見事に描いてる」
「...一応ホメてもらってるみたい...？」
「ちゃん..後でこの絵のコピー、くれない？」
「何に使う気だ」
「使う..って、ゾロ、そんな生々しい言い方すんな」
「それで何をする気だ」
「大して変わんねぇよ！時々眺めるだけだよ」

(本当、イチイチ二人で盛り上がるから、大変だわ)

「それじゃ、ちゃん...次はこんな感じでどう？」

ゾロの背後からサンジが手を伸ばし、ゾロの身体をあちこち触り始めた。

「次は完勃ちのゾロを描けば？」
「画用紙からハミ出す程あるぞ」
「オヤジみてぇなコト、言ってんじゃねぇ！」
「ごちゃごちゃ言ってっと、全然勃たねぇぞ」
「ゴメン...じゃ、これでどう？」

ゾロの顔を後ろへ向かせると、サンジからキスを仕掛けた。何度もゾロの舌を舐め、吸い上げ、またゾロも同じように応えた。

思わず見惚れる。

しかし、はっと気付き、自分の仕事を思い出した。手にした鉛筆が走り出した。今日はかなり調子がいいみたいだ。そんな様子に気付いているのかいないのか、サンジとゾロは、今していることに夢中になっていった。

ほぼ完全な大きさになった、ゾロ自身を見せ付けるかのように、サンジがゆっくりと触り始めた。ゾロの吐く息が時々鼻に抜ける。

(な...何だかいよいよ本格的になってきた...どこまでヤル気なんだろう...やっぱり最後まで？)

は、スケッチブックの紙を1枚めくり、次の新しい紙を出した。さっきの絵は殆ど描けているので、また後で仕上げることにする。休む間もなく、鉛筆を動かしていく。
ペンケースをチラ見すると、まだ予備の鉛筆が2本あった。この調子だと、あと何度削らないといけないのか。ここまでの勢いで続けて描くなんて、どうして予想できただろう。

ゾロのモノを扱くサンジの手の形にも、つい目を奪われる。そうだ、これを描かなければ。が描いている間は、サンジは手の動きを調節していた。絵がまだ描き終わらないうちに、途中でゾロが果ててしまわないように。
お陰で途中何度か、ゾロの苦しげな表情を見ることができた。しかし、はその顔を見ていても、全く分かっていなかった。自分の作業に全神経を使っていたからだ。

あと、少しで...この絵はこれで終わり。そう思っていると、サンジが言った。

「ゾロ...次はイカせてやるから....」
「くっ....ぁ...」

よく頑張った、とサンジはゾロの頭を撫でながら、もう一方の手では、ゾロ自身の根元をぐっと握っていた。

の作業も終わった。

「はぁ...できた」
「ちゃん...もう、ゾロ限界だから...。でも間に合ったみたいだね？」
「あっ！やだ私、気付かなくてごめんなさい...ゾロ、大丈夫かしら」
「それは平気だけど...もう今からフィニッシュかけるけど...。このままの体勢でやっちゃうから」
「このまま？」
「あ、俺は前に回るけど...ゾロはこのまま。だから顔はシッカリ見えるよ？」
「いえ...そこまで見たら、何だか悪いから...」
「遠慮しなくていいよ。最後まで見てあげて。ゾロ、すげぇイイ顔するんだから」
「....そ、そうですか...じゃ、遠慮なく」

今まで目の前で展開されてきたモノは、普通は見るなんて考えられないモノばかり。その中でもとりわけ、"見てはイケナイモノ"があるとすれば、まさにこれから繰り広げられる光景に違いない。

サンジがゾロの足元に膝を落とした。ゾロの腰に手を当て、股間に頭を持っていく。

(や、やっぱりソレ、するんだ...)

もしこの絵も描くんなら、横から見ないと。は思った。でももう、集中力は切れていた。

(さっきの絵で、充分..いえそれを超えている)

「ああっ...は...んっ、サンジっ....」

サンジの頭を掴み、絶頂を迎えたらしかった。そのゾロの表情が、の予想に反して荒々しく、そして美しかった。

(貴重なモノを見せてもらった..って思っていいのかな)

「ちゃん？」
「...はい」
「後は、俺がヤルんだけど...それも描く？」

サンジが着ているバスローブも、紐がかなり緩んでいる。その紐に手をかけた。

(せっかくだから、サンジ君の身体も見ておきたいけど..いや、描いておきたいけど)

「描くんなら、角度とか考えるけど、見るだけなら、もうヤリたいようにヤルよ？」
「....自由にしてて下さい...その方がきっと...イイ顔が描けそうだから」
「最後は多分俺、セーブ利かないから...時間足りなくなってしまったら、ゴメンね？」
「どうぞ気にしないで」
「じゃ....」

場所を替え、ベッドの方へ移動すると、サンジはゾロの身体をうつ伏せにした。

それから丁寧な愛撫がゾロの前後共に施され、彼の下半身は再び力を取り戻し、サンジを待てる状態になった。サンジ自身がゾロの身体に打ち込まれると、ゾロの身体がしなった。

(何て綺麗な...これこそ絵に描いたようなポーズ)

でもこれは、自分には描けない。は鉛筆には触れず、今の光景をしっかり心に焼き付けようとした。二人の荒い呼吸、何度も軋み続けるベッド。

「あっ...ゾロ...俺っ...」
「ふっ...ぁ...んん...」

そして二人は同時に歓喜の声を上げ、崩れ落ちた。二人の激しい胸の動きがしばらく続く。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

(一体何だったのかしら....)

はぼんやりと考えていた。目の前には、疲れて重なるように倒れている二人がいる。そっとしておいてやろうと、彼女は音をできるだけ立てないように、その場を去ろうとした。

しかし、サンジは完全には眠っていなかった。

「ちゃん...」
「ん？」
「絵、描けた？」
「うん...結構たくさん描けた。ありがとう」
「あのさ...お風呂に入っておいでよ。今は俺達使わないし。あと、そこの棚にある物使ってくれていいから」
「そんな...ちょっと厚かましいような」
「遠慮しないで、本当にいいから」
「...それじゃ、お言葉に甘えて」
「ふぁぁ〜...」
「あ、ゾロ...」
「ゾロ、おはよ」
「あ、じゃ私、お風呂お借りします」
「ん？...風呂か？」
「ええ」
「俺と入るか？」
「ええええ、そんな、一人で入れるわよ！」
「背中とか...洗ってやるぞ」
「いいえ、結構です！」
「何、遠慮してんだ...おかしなヤツ」

(駄目駄目、おかしいのはあんた達よ！)

がシャワーを浴びて戻ってくると、何やら美味しそうな匂いが漂っていた。

「ちゃーん、朝御飯できたよ、一緒に食べよ」
「...あ、ありがとう...そう言えばお腹すいたな」
「カフェオレ、甘い方がいい？」
「ううん、シュガー抜きで」
「ゾロは濃い目で...ミルク少な目でいいか？」
「おぅ」

サラダとチーズオムレツとフレンチトースト。どれも美味しそうだ。

「ゾロは幸せね。毎日美味しい物作ってもらえて」
「そう思ってくれてたら、いいんだけどな」
「....」
「まぁ、俺がやりたくてやってるだけだから」
「作るのもまた、幸せってことね？」
「そういうこと」

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

「じゃ、私そろそろ帰らなくちゃ。本当に長いこと、お邪魔しちゃって...」
「ぜーんぜん！とっても楽しかったよ、ちゃん」
「俺も、結構楽しかったぜ」
「そう言ってもらえると...」

は荷物をまとめ、帰り支度を始めた。

「忘れ物...気をつけて」
「うん...大丈夫」
「あ、ちゃん...良かったら連絡先教えて？」
「え...、それじゃ、これ...」

は自作の名刺をサンジに手渡した。

「遠いから大変かも知れないけど...また良かったら来てよ？」
「うん、またいつか」
「、次は俺と一晩付き合え」
「えっ？ゾロと...」
「酒、な」
「あ、あぁ、お酒...ね。いいわ、付き合うわよ」
「酒以外でも、付き合うぜ？」
「まぁ、その時の気分次第でね」
「何だ、最近、ゾロは女癖悪くなったのかよ？」
「あぁ？おめぇに言われたかねぇ」
「俺はフェミニストなんだ。間違えるな」

本当に仲がいいことで...。は苦笑しながら二人を見ていた。

「じゃ、ホテルまで送るよ」
「ううん...ここでいい...すぐにタクシー拾えると思うし」
「そう？本当に？」
「ええ」
「じゃ...またきっと、キミと会えますように..」

サンジの柔かい金色の髪が、の頬を撫でた。柔かい感触が近付いてくる。

「サンジ君...んっ」
「........」

「おい、サンジ...、また眩暈起こしてんぞ？」

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

あれからどうやって帰ったのだろう？は気がつくと、タクシーの中に居た。メーターを見ると、まだ走り出したばかりの数値だった。

「お客さん、XXホテルで良かったんですよね？もう着きますよ？」
「ええ、ありがとう...」

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

ホテルの部屋に戻ったは、荷物の整理を始めた。バッグからスケッチブックを取り出して、パラパラと眺めてみた。

「えええっ...こんなのいつの間に描いたのよ！」

サンジとゾロが全裸でカラんでいる。それも何枚も描いている。

「これ...私が要求したポーズなのかな...？」

描く私もアレだけど、描かせてくれる二人もスゴイ。

「もう、こんな機会には、恵まれないよね、きっと」

バラバラと紙をめくっていくと、さらに過激な絵が出てきた。

「う、うわぁ〜っ...」

思わずスケッチブックを落としそうになった。静止画ではなく、今まさにヤッテます、という絵が次々に現れた。

「それにしてもゾロの絵、何でこんなに多いのかしら...」

は、いくら考えても思い出せなかった。でも、確かに自分が描いたのだ。何かが降りてきて、彼女を突き動かした...そんなところだろうか。

「変わってるけど、素敵な二人だったな」

は、二人に会った記憶が鮮明なうちに、スケッチに着色し始めた。やり出すと楽しい作業だ。

「さ、明日は帰るぞ」

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

♪♪♪〜

の携帯にメールが届いた。

サンジからだった。

『ちゃん、ごめん..言いそびれた！

Happy Birthday, to you』

ありがとう、サンジ君...。

ちょっと感動して、もう一度読んだ後、は画面を閉じた。

♪♪〜♪♪〜♪♪〜

今度は電話の着信。

「えっ...はいはいっ..」

彼女は電話に出た。

「はい」
『？』
「...ゾロ？」
『幾つになったんだ？』
「...レディに年訊くんじゃないわよ」
『そうだったな』
「本当に...」
『来年は、俺が祝ってやる≪オイ、コラ...抜け駆けすんじゃねぇ、テメェ≫...何だ、うるせぇな』
「何か外野が騒がしいね...？」
『バカは放っとけ≪ンだとぉゴルァ≫』
「賑やかだね...」
『おめでと...じゃ、な....』

ゾロもね、ありがと。

今年の誕生日は、一生忘れられないだろう。

絶対に。


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