〜青い薔薇 番外編 4〜
飛翔〜AnotherStory〜
〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***
は急に疲れを感じた。ずっと同じ筋肉を使っていると、他の部分まで疲労してくる。ここは熱い湯に浸かって身体を解すのもいいだろう。
「あ、じゃ私、お風呂お借りします」
「ん？...結局風呂にするのか？」
「ええ」
「じゃ...俺と入るか？」
「ゾロ、さっき入ったばっかだろ」
「ええええ、そんな、一人で入れるわよ！」
「背中とか...洗ってやるぞ」
「いいえ、結構です！」
「何、遠慮してんだ...おかしなヤツ」
(駄目駄目、おかしいのはあんた達よ！)
そんなおかしなヤツらの居る場所から遮断された、一人静かな空間に入ると、やっとは自分を取り戻した。と、同時に今自分がここに居ることが、とても現実のこととは思えなくなってきた。
(有り得ない...んだけど、でも...そうなのよねぇ)
熱いシャワーで腕の筋肉を解す。かなり酷使したことに気付く。
次第にリラックスしていく。このままうっかり眠ってしまったら大変だ。途中、冷水を首に当てた。
「さ、そろそろ出ようかな」
先ほどの究極の三択で、逃げに入ってしまった。『頭を冷やして、それから考えろ』って言われても、どうすれば。あの雰囲気からして、やっぱり描かないといけないような感じだった。
「何であの二人、あんなに描かれる気満々なの？」
バスルームを出ると、サンジの声がした。
「ちゃん...そこに置いてあるバスローブ使って」
何で女物があるのかは、訊かないことにして、遠慮なく使わせてもらった。
「どう、描いてくれる気になった？」
は、考えた。確かにもう、限界近くまで描き続けてはいるが、まだ描きたいという気持ちはある。
(ゾロの全裸か...確かに魅力的だわ)
それに、二人の"生のカラミ"も、冗談半分としても、楽しそうな響きだ。
「じゃ...もう一生に一度のことなので、描かせてもらいます」
「俺の？」
「はい」
「ちゃん...断ってもいいんだよ？」
「は自分の意思で言ってるんだ。目を見れば分かるだろ」
「ゾロ、私はいつでもOK」
「よしきた...」
ゾロは、半分脱ぎかけになっている、バスローブの前を全開にした。
(うわ...)
は何とか耐えて、怯んだ顔をしないよう努めた。
「、絵を描くって楽しい？」
「そりゃ...勿論」
「俺も描いてみたいんだけど」
「へっ？」
「の絵」
「えええっ？」
(何を言ってるんだろうか...この男は？)
「俺とサンジで、どっちが上手く描けるか...ってことで。二人で描くからモデルになって」
(二人に見られながら...って、そんなコトできる訳...)
「いいねぇ、ちゃんを描くのかぁ」
「い、嫌ですっ...モデルは私じゃなくて...」
「、お前がモデルだ」
「そ、そんな...私...」
「どうする？さっさと決めろ。三択だ」
「１．俺達二人が絵を描くから、がモデルになる。勿論ヌード」
「２．俺が絵を描くから、とサンジでカラミをする。いいと言うまでジッとしてろ」
「３．絵はサンジに描かせて、この俺と組め。俺は指示通りにはやらねぇ。好きに動くから覚悟しろ」
「.......................」
さっき、ゾロの全裸を描けるのは魅力的だと思った。しかし、今のから、その選択肢が無くなっている。
「ほらぁ...ゾロがそんな悪魔みたいな究極の選択を迫るから...ちゃん、固まっちゃったじゃないか」
「悪魔とは何だ。夢のような選択だろ」
「おめぇみたいなヤツと組まねぇって。ちゃん、悩むことないよ。俺と組もう？」
「...」
(どれか選ぶしかないなら...やっぱりそうなるのかな？)
の思考回路は狂い始めていた。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
サンジがの元へ近付いてきた。楽しそうに少し微笑んでいる。そして、のすぐ隣に座った。
「ゾロ、ちゃんと描いてくれよ...特にちゃん、綺麗にな」
「おう、任せとけ」
ゾロもヤル気満々である。サンジは、さぁ始めようか、と言いつつ接近してくる。
(カラミって...どうすんのよ...)
は、窮地に立たされた。もう駄目。逃げ出したい。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ぐ...ぐぶっ...ごぼっ.....
「ぐはぁっ...」
危うく溺れるところだった。湯船に浸かりながら、ウトウトしてしまったらしい。
「あ〜危なかった...」
こんなところで命を落とすなんて、あまりにもドラマチックな人生の幕切れだ。
「そんなバカなこと、あるわけないじゃない」
妄想もここまで来ると、心臓に悪い。
「そろそろお風呂出ないと...」
ついつい逃げ腰になり、お風呂を選んでしまった。でもそれは、選択を先延ばしにしただけ。結局は、あの雰囲気からして、やっぱり描かないといけないような感じだった。
「何であの二人、あんなに描かれる気満々なの？」
バスルームを出ると、サンジの声がした。
「ちゃん...そこに置いてあるバスローブ使ってくれていいからね」
何で女物があるのかは、訊かないことにして、遠慮なく使わせてもらった。
「どう、描いてくれる気になった？」
は、考えた。確かにもう、限界近くまで描き続けてはいるが、まだ描きたいという気持ちはある。
(ゾロの全裸か...大いに魅力的だわ)
それに、二人の"生のカラミ"も、冗談半分としても、楽しそうな響きだ。
「じゃ...もう一生に一度のことなので、描かせてもらおうかな」
「俺の？」
「はい」
「ちゃん...断ってもいいんだよ？」
「は自分の意思で言ってるんだ。目を見れば分かるだろ」
「ゾロ、私はいつでもOK」
「よしきた...」
ゾロは、半分脱ぎかけになっている、バスローブの前を全開にした。
(うわ...)
は何とか耐えて、怯んだ顔をしないよう努めた。ゾロがニヤリとしながら言う。
「、絵を描くのって楽しそうだな。俺も描いてみたいんだけど？」
「へっ？」
「の絵」
「えええっ？」
(何を言ってるんだろうか...この流れ、変だ)
「俺とサンジで、どっちが上手く描けるか...ってことで。二人で描くからモデルになって」
(二人に見られながら...って、そんなコトできる訳...)
「いいねぇ、ちゃんを描くのかぁ」
「い、嫌ですっ...モデルは私じゃなくて...」
「、お前がモデルだ」
「そ、そんな...私...無理、絶対無理！」
「どうする？さっさと決めろ。三択だ」
(駄目...選んだらまた、おかしなことになる...)
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
(..............)
水の音。食器がぶつかる音。
(何だろう..いい匂い)
「ちゃん？」
「........へっ？」
「朝御飯、一緒に食べよ」
ソファの肘掛にもたれ、眠っていたらしい。が身体を起こすと、毛布がすべり落ちた。
(何か、変な夢を連続で見た気がするけど...よく覚えてないな...ま、いっか...)
「食べられる？」
「...うん....そう言えばお腹すいてきちゃった」
「カフェオレ、甘い方がいい？」
「ううん、シュガー抜きで」
「ゾロは濃い目で...ミルク少な目でいいか？」
「おぅ」
サラダとチーズオムレツとフレンチトースト。どれも美味しそうだ。
「ゾロは幸せね。毎日美味しい物作ってもらえて」
「そう思ってくれてたら、いいんだけどな」
「....」
「まぁ、俺がやりたくてやってるだけだから」
「作るのもまた、幸せってことね？」
「そういうこと」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「じゃ、私そろそろ帰らなくちゃ。本当に長いこと、お邪魔しちゃって...」
「ぜーんぜん！とっても楽しかったよ、ちゃん」
「俺も、結構楽しかったぜ」
「そう言ってもらえると...」
は荷物をまとめ、帰り支度を始めた。
「忘れ物...気をつけて」
「うん...大丈夫」
「あ、ちゃん...良かったら連絡先教えて？」
「え...、それじゃ、これ...」
は自作の名刺をサンジに手渡した。
「遠いから大変かも知れないけど...また良かったら来てよ？」
「うん、またいつか」
「、次は俺と一晩付き合え」
「えっ？ゾロと...」
「酒、な」
「あ、あぁ、お酒...ね。いいわ、付き合うわよ」
「酒以外でも、付き合うぜ？」
「まぁ、その時の気分次第でね」
「何だ、最近、ゾロは女癖悪くなったのかよ？」
「あぁ？おめぇに言われたかねぇ」
「俺はフェミニストなんだ。間違えるな」
本当に仲がいいことで...。は苦笑しながら二人を見ていた。
「じゃ、ホテルまで送るよ」
「ううん...ここでいい...すぐにタクシー拾えると思うし」
「そう？本当に？」
「ええ」
「じゃ...またきっと、キミと会えますように..」
サンジの柔かい金色の髪が、の頬を撫でた。柔かい感触が近付いてくる。
「サンジ君...んっ」
「........」
「おい、サンジ...、また眩暈起こしてんぞ？」
倒れそうになる。ゾロがすぐに反応して、抱き留めた。
「本当に、世話が焼けるぜ...」
間もなく気が付いたは、二人に伴われて、部屋を出た。しかしまだ何となくぼんやりとしていた。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
あれからどうやって帰ったのだろう？は気がつくと、タクシーの中に居た。メーターを見ると、まだ走り出したばかりの数値だった。
何だか頭がぼうっとしている。今の自分でさえ、夢の中にいるような気がする。
「お客さん、XXホテルで良かったんですよね？もう着きますよ？」
「ええ、ありがとう...」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ホテルの部屋に戻ったは、荷物の整理を始めた。バッグからスケッチブックを取り出して、パラパラと眺めてみた。
「えええっ...こんなのいつの間に描いたのよ！」
サンジとゾロが全裸でカラんでいる。それも何枚も描いている。
「これ...私が要求したポーズなのかな...？」
描く私もアレだけど、描かせてくれる二人もスゴイ。
「もう、こんな機会には、恵まれないよね、きっと」
バラバラと紙をめくっていくと、さらに過激な絵が出てきた。
「う、うわぁ〜っ...」
思わずスケッチブックを落としそうになった。静止画ではなく、今まさにヤッテます、という絵が次々に現れた。
「それにしてもゾロの絵、何でこんなに多いのかしら...」
は、いくら考えても思い出せなかった。でも、確かに自分が描いたのだ。何かが降りてきて、彼女を突き動かした...そんなところだろうか。
「変わってるけど、素敵な二人だったな」
は、二人に会った記憶が鮮明なうちに、スケッチに着色し始めた。やり出すと楽しい作業だ。
(ん？)
一番最後に描いた絵の、さらに1頁空けた次に、まだ絵がある。
「なっ..何よこれっ...」
明らかに、が描いたものとは鉛筆のタッチが違う。絵全体がまるで違う。
「こんなの...覚えがないんだけど....？」
と、多分サンジらしき人物が、そこに描かれていた。描かれているということは、こういうことも、あったという事だろう。
しかし誰が描いたのか...
「もう、何でもアリな世界ね.....深く考えない考えない！さ、明日に備えて、帰る支度しよっと」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
♪♪♪〜
の携帯にメールが届いた。
サンジからだった。
『ちゃん、ごめん..言いそびれた！
Happy Birthday, to you』
ありがとう、サンジ君...。
ちょっと感動して、もう一度読んだ後、は画面を閉じた。
♪♪〜♪♪〜♪♪〜
今度は電話の着信。
「えっ...はいはいっ..」
彼女は電話に出た。
「はい」
『？』
「...ゾロ？」
『幾つになったんだ？』
「...レディに年訊くんじゃないわよ」
『そうだったな』
「本当に...」
『来年は、俺が祝ってやる≪オイ、コラ...抜け駆けすんじゃねぇ、テメェ≫...何だ、うるせぇな』
「何か外野がウルサイね...？」
『バカは放っとけ≪ンだとぉゴルァ≫』
「賑やかだね...」
『おめでと...じゃ、な....』
ゾロもね、ありがと。
今年の誕生日は、一生忘れられないだろう。
絶対に。
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