悪夢一夜
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ピリリリリリ....
仕事が終わり、サンジとゾロが店を出た数分後。携帯の着信。
「はい？」
『お〜〜...サンジかぁ？』
「......？」
『ちょっと助けてくれねぇか』
「...エース...さん？」
『エースでいいって言っただろ...いや、それより』
「いったいどうしたんです？」
『ちょっと面倒なことになってな』
「面倒？」
『事情は後でちゃんと話すから...迎えに来てくれねぇか？』
何だか分からないが、エースから電話が来るなんて滅多にないことだ。サンジは、そのまま話を聞いた。
「....はい、じゃ、行きますから。少し待ってて下さい」
『悪ぃな...』
サンジが電話を切ると、ゾロが心配そうに声をかけた。
「エース...さん、何かあったのか？」
「ゾロ...ちょっと寄り道するぞ」
「どこへ？」
「警察」
「ケーサツ？」
「何か誤解があって、捕まったんだと。一応身元引受人がいねぇと帰らせてもらえねぇから...って」
「何でサンジに頼んでくるんだ？」
「エースは結構やってるんだよ。過去に2度ほどシャンクスが迎えに行った。さすがにもう頼めねぇんだろう」
「そうか。じゃ、急いで行ってやらねぇと」
「悪ぃな...」
「お前が謝ることねぇ。さ、行こうぜ」
警察署に行くと、事情を詳しく聞かされた。今日はエースの客と"アフター営業"があり、居酒屋で飲んでいたのが、その相手が恐ろしいほどの酒豪。ついつい飲んでしまったらしい。その後一人で夜食を食べに立ち寄った店で、食べながら眠ってしまい、目覚めてそのまま寝呆けた状態で、店を出たところを、食い逃げと思われて警察に通報された...と言う訳だった。
何とか誤解は解け、エースは無事釈放されたのだった。
「ホント、すまねぇなぁ...サンジ...、それとゾロもな」
「まぁ、いいんですけど...もう何回目ですか？次期チーフがこんなことじゃ...」
「それを言うなって。それにまだまだチーフなんて、俺には無理だ」
「でも他に誰がいるんですか？」
「サンジ、お前がホスト辞めるからだろっ。NO.2の抜けた穴、どんだけ苦労して埋めてるか、わかってんのか？」
「それを言われると.....」
「サンジがNO.1に格上げになって、俺がチーフ。これでシャンクスが安心してスカウトとマネージャーができるんだろ」
「全部俺のせいですか..すいませーん、エース先輩」
「ゾロ、サンジはな、俺に対してもいつもこんな調子だ。お前にも生意気でカッコつけてんだろ？」
「....いえ...全然」
「へぇ？そうなのか？」
「...俺には...」
「ゾロっ、余計な事言わなくていいぞ。エースは誘導尋問の天才だからな」
「人聞きの悪ぃ事を...俺はゾロに訊いてんの」
ゾロは何と答えたものか、困惑した。そして咄嗟に話題を変えた。
「エースさん...これから帰るんですか？送りましょうか？」
「ゾロ...何て優しいんだよ、おめぇ！もう、俺、ゾロに惚れそうだよ」
「ゾロ、酔っ払いに優しくすることねぇ！図に乗るぞ」
「なんでぇ、サンジはすっこんでろ！俺はゾロと話をしてるんだっ...」
送る、と言ってもエースがどこに住んでるかなんて、ゾロは知らない。サンジにしたって詳しくは知らないが、ここからも店からも、遠いことだけは知っていた。
「店の宝のNO.1ホストのエースが行き倒れになったら、俺達の責任だから、連れて帰ろう...。ゾロ、それでいいか？」
「あぁ..、俺も今そう考えていたところだ」
かくして、エースを二人の部屋へ連れ帰ることになった。
「どうぞ、エース先輩」
「エースでいいって....サンジ」
意味ありげに、エースがサンジの肩をポン、と叩く。サンジに続いて部屋に入った。最後に入ってドアを閉めたゾロに、エースが話しかける。
「ゾロは、よくサンジの部屋に来てるのか？」
「え...まぁ..」
「....一緒に住んでるのか....もしかしたら」
「....」
「エースには言ってなかったけど...そうなんだよ」
「シャンクスは知ってんだな？」
「まぁ...な」
「あーあ、酔いが醒めちまったぜ」
エースは、艶のある黒髪をかき上げると、ソファに座った。
「悪ぃ、水くれねぇ？」
「はいはい、ちょっと待ってて...」
サンジがキッチンへと姿を消した。エースはゾロに小声で話しかけた。
「お前らさ、ただのシェアリング？それとも...同棲？」
「エースさん...」
「エースでいいよ。俺はおめぇの上司でも何でもねぇから」
「はぁ...」
「同棲なら...ホストにとって致命的だぜ？客にバレたら終わりだ」
「それは...よく分かってます」
「.....そっか、同棲か...サンジとデキてんのか....あ〜つまんねぇの」
サンジが水差しとグラスを持って、リビングに戻ってきた。そこには引きつった表情のゾロと、ニヤニヤ顔のエースが居た。
「ゾロ...おめぇ...何か喋らされたか？」
「サンジ、まぁまぁ...ゾロは今、少々混乱中だ。何も言うな」
「さっき、あれほど注意したのに...」
「だからな、サンジ。別に俺に隠すことねぇだろ？惚れちまったもんは仕方ねぇ」
「ゾロ、一体どこまで喋ったんだ？」
「サンジ！俺が悪ぃんだよ...ちょっと、からかうつもりだったんだが」
「俺は何も喋ってねぇけど...。エースさんが勝手に想像して言ってるだけだ」
「なっ...」
「サンジも、否定しねぇとこ見ると...やっぱ二人はそういうことなんだな？」
「またヤラレタ...」
「ただ、エースさんの想像が、的を射ていただけで..」
「ゾロも、ちょっとは否定しろよ！」
「どうせそのうちバレるから、いいだろ」
「ゾロは大人だねぇ...そうそう素直で正直が一番だよな」
こうしてエースは、二人に関係を白状させてしまった。そして、もう遅いのでそのまま泊まることになった。
サンジの作った食事を3人で摂り、そろそろ寝ようかという時間になった。
「悪ぃな...お邪魔虫で」
「全く...この貸しは高くつきますよ？」
「覚えとくよ」
「ここに、ベッド置いときますから、勝手に寝て下さい」
「なぁ...お前らって...一緒のベッドで寝てんの？」
「そんなこと訊いてどうするんすか？」
「いいなぁ...どっちか俺と一緒に寝てくれねぇ？俺さ、いつも誰かと一緒に寝てるからさぁ...人恋しくてさ」
「そんな面倒まで見られませんよ...我が儘ばっかり...」
「....俺で良かったら」
「何ぃぃ...ゾロっ、お前何言ってんだ！」
「そうか..ゾロ、おめぇいいヤツだなぁ！」
サンジは見えない青筋を立てて言った。
「じゃぁ...3人で寝る」
こうして、まんまとエースの策に嵌った二人。
しかし、誰が真ん中に寝るかで、モメた。
「こういうのはジャンケンで公平に決めよう」
「駄目。俺が真ん中。エースがゾロに手を出さねぇ保証はねぇ」
「大丈夫だ、俺、男だし」
「そんなのアテにならねぇ」
「お前らを見てたら、それは凄く説得力あるな」
「...眠い。早く寝たいんだけど？？」
どうしても真ん中に寝たいエースだったが、サンジに阻止され、仕方なくゾロを真ん中へ入れた。
「俺、こっちの端でいいよ...で、真ん中がゾロな」
「俺...どこでもいいから、早く寝たい」
「ゾロ...俺の隣でゆっくり寝ろ」
「エース！ゾロに触んな！」
「何だよケチだな...頭に触っただけだろ」
「zzzzz」
「ほらぁ...俺が撫でたら気持ちよくなって、寝てるじゃんか」
「ゾロと俺との大事な時間を...エースっっ！！」
「ほらほら...可愛いゾロが起きちゃうぞ？サンジ君」
「るせぇっ！おめぇも寝ろ！」
「それは無理...こんないい男二人が傍に居られちゃぁ...俺、テンション上がるわ」
「あんまり悪ノリするんなら、追い出しますよ？？」
「怖ぇぇ...。俺、サンジも結構好きなのにな...傷つくぜ」
「とにかく、真ん中は俺だから。エースはこの端。気に入らなければ、さっきの折り畳みのベッドで一人ゆっくり寝て下さい」
「サンジ...ここでは敬語はいらねぇから、俺に優しくしてくれよ」
「だったら、言うとおりにしろよ」
「うん、分かった分かった...。ここでいいよ」
やっと寝る場所が決まり、エースは大人しくなった。やれやれと溜息をつき、サンジは二人の間に入り、横になった。
明かりを落とし、目を閉じる。サンジはすぐに寝付けなかった。
両側にいる男二人は、いずれも寝つきがいい。
何て羨ましいヤツらだ、とサンジは思う。そのうちゾロが寝返りを打って、無意識にサンジの首元に顔を近づけてきた。息が首にかかる。
そして、エースもまた同じく寝返りを打ち、ごろんとうつ伏せになる。その拍子に手がサンジの胸に載ってきた。
これでは眠れない...。サンジはイライラしてきた。ゾロをどかせればいいのに、それができない。ゾロの唇がサンジの肌に触れているのが、だんだん気持ちよくなってきたのだ。また少しゾロが動き、顔が接近した。
(何だよ...寝てても俺を誘ってやがる)
サンジは我慢できず、ゾロの口元へ自分の唇を寄せた。エースはよく寝ているから大丈夫だろう...。そのまま背後を確認せず、サンジはゾロへのキスを始めた。一度やり出すと、もう止まれない。どんどんエスカレートしていく。
サンジの胸に載ったエースの手が、いつの間にか下腹部にまで下りてきていた。サンジが気付いた時には、その手は股間をまさぐっていた。
「ちょ...っ....どこ触ってんだ...っ、寝惚けてんじゃねぇ....エースっ」
「....んん...サンジ君...そんな声出すと...ゾロが起きるぞ...」
「起きてるんなら、何でそんなとこ触って....ぅっ...やめ...」
「何か、いい感じになってきてるな...サンジ、溜まってんじゃねぇの？ちゃんとヤッテんの？」
「そんなに触られたら、誰だって...ホントいい加減に...」
「んん〜...サンジ...もう朝？？腹減った....」
「ゾロ、ゴメンな...まだ早いから寝てろよ」「ゾロ、俺の胸においで」
「エース...邪魔するんなら、今からでも出て行ってくれ」
「つれないなぁ...サンジ」
(何で、俺、こんな目に遭うんだ...チクショー！)
「サンジ...ゾロが起きねぇよう、静かにしとけよな？」
「あんたが何もしなければ、静かにできるって..くっ...」
「もう俺...我慢できねぇ...サンジ、な、ちょっとだけだから...」
「やめっ...う...」
エースの客には、何人か男もいて、お陰でその方面のテクニックも相当なものだった。サンジも一応そのことは知っていたから、充分警戒していたのだ。
しかし、ここまで上手いとは....。サンジの理性は崩れ始めていた。
「もう...エース....やめ...」
「サンジ、こっち向いてくれよ...」
「嫌だ...」
ゾロがこっちを向いて寝ている。それなのに背を向けるなんて。
もし、ゾロが目を開けたら。今のこのサンジの顔を見たら。暗闇でもきっと分かる。
サンジはゾロの肩を抱え、頭を自分の肩に載せた。もし目を開けても、サンジの顔が見えないように。サンジのすぐ耳元で、ゾロの寝息が聞こえる。
エースの手の動きは巧みだった。サンジは腰がぐらぐらしてきた。
「サンジ...すげぇ濡れてる...熱い...堪んねぇ...」
「はぁ...こんなこと....して....俺、許さねぇからな....」
「このままイカせようか？」
「もう...止めろ...」
「いいのか？こんなとこで」
「....トイレ行って...」
「え？自分で出してくんのぉ？...そんな勿体ない..じゃ、俺がキレイにしてやる」
「....やっ、ちょっ.....ヤバイって....」
不本意ながら、エースのテクニックに溺れてしまったサンジ。終わったその後も、すぐには解放してはもらえなかった。
「サンジ...おめぇの...ここらへんか？」
「マジ...勘弁して...そこは....」
「開発されてねぇの？...え、まさかサンジが上なの？」
「もう、俺をどうする気...」
「ふーん...あのゾロのあの顔で...そっかー...それもソソルなぁ...」
「変な想像するな...ぁあっ」
「ビンゴ！ここだな...じゃ、こんな風に...どう？」
「ああ...や...エースっ...指を抜けっ....」
「そんな声出したら、ゾロが起きるぜ？」
「クソ...覚えてろ...」
「そんな事言っても...また反応してるぜ...すっげー硬い」
「んんっ...ぁ..もう....」
「せっかくなのに、ゾロが寝てて残念だなぁ？」
「後でどうにかする....ぁ...」
「もう1回、俺が出してやろうか？」
これは悪い夢だ。何でこんな展開になってしまったんだ。サンジは泣きたくなった。でも、この苦しさから逃れる術は、他にない。
「ま、お前から頼んでくれるのを待ってても、無駄だからな」
エースはまた、サンジの下半身へ頭を載せた。サンジの身体が敏感に反応する。
「もう抵抗するな、サンジ」
「したって無駄なんだろ...クソ野郎」
そして2度目の絶頂も、エースの口内で迎えた。
何て無力なんだ...何て情けねぇ...。サンジはすぐ傍で寝息を立てている、ゾロの方を見ながら思った。何だか視界がボヤケている。
「サンジ..泣いてんの？」
「るせー...てめェには関係ねぇ」
「ゾロが眠ってて...良かったな」
「よく言えるな、そんな事」
「ハラハラしながらだと、余計燃えたんじゃねぇの？」
「蹴り落としてやろうか？」
「...怖い怖い...さーて俺、トイレ借りるわ...」
「あっちの奥だ」
「サンキュ...ちょっと時間かかるかも...出してくっからよ」
「おい...」
「え？何...」
「いや...」
「まさか...そんなことねぇよな？」
「手伝うよ」
サンジは、何か、そうしなければいけないような気がして、エースとトイレに入った。腰掛けたエースの身体の中心に、屹立するモノに手を伸ばした。
「どういう風の吹き回し？」
「俺だけしてもらっちゃ、不公平だろ」
「あんなに怒ってたのに？」
「無理やりするから」
「ちゃんと了解取ってからならOK？」
「了解なんか一生しねぇよ」
「片意地だな...こんな気持ちいいこと」
サンジの口が、エース自身を呑み込んだ。エースの息が乱れ始めた。
「すげぇ...上手いじゃねぇかよ...サンジ、相当やってんな」
あまりゆっくりしている暇はないし、そんな気分でもなかった。サンジは容赦なく愛撫を与え続けた。
「これで愛があれば、もっと気持ちいいんだけどな...サンジ...」
(そんなモン、あるわけねーだろ)
さらに早く動かすと、エースはサンジの頭を掴み、唸りながら達した。息がしばらく荒く続き、痙攣と同期して精を吐く。口を離したサンジは、それを飲みもせず、便器の中へ吐き出した。
「うっわ〜...興醒め...俺、立ち直れねぇ....」
余韻に浸る間もなく、エースが苦笑いしながら、股間を拭いている。
「まぁ、それだけ俺、嫌われたってことだな...」
先に手を洗ってトイレから出たサンジは、ベッドに戻った。ゾロはそのままの場所に寝ていた。ゾロの横に潜り込むと、ゾロがこちらを向いた。
「サンジ...」
「ゾロ...ご、ごめん...起こしたか」
「何してた？」
「え？」
「エースと...」
サンジは口ごもる。戻ってきたエースも事態を飲み込み、ベッドには入らず成り行きを見守る。
「好きにされてんじゃねぇぞ」
「ゾロ...おめぇ」
「俺は寝つきはいいけどな、目ざといんだ」
「え？」
「全部聞こえてた」
「なっ...おめぇ...じゃ、助けてくれたっていいじゃねぇかよ！」
「何言ってんだ。男だろ？逃げられるだろ...何で抵抗しねぇ？」
「いや...それは...」
「...流されてんじゃねぇよ」
ゾロはサンジの長い前髪をかき上げた。
「ホント、てめェは目の前の快楽に弱い」
「そんな...身も蓋もねぇ言い方しなくたって」
「ずっと聞かされてる身にもなりやがれ」
え？？？
そうか...
「ゾロ...悪ぃ...」
「トイレ行きてぇのは、俺の方だ」
「...じゃ....俺がしようか？」
「触んなっ！」
ゾロが怒ってる...？どうしようどうしよう...。動揺するサンジ。
「おい...何やってる...サンジ」
「だって...おめぇ」
「手では触るな...分かったか？」
「....う...うん...」
サンジはおずおずと、ゾロの下半身へ顔を近付け下着を下げると、手は使わず口だけで愛撫を始めた。ゾロの手がサンジの頭を押さえている。
(あ...そう言えば...エースはどうしてるんだっけ？)
騒ぎの元であるエースは、ベッドルームのドアの傍で、事の成り行きを見ていた。
「あ〜あ...結局、俺はダシにされただけか...。ちょっと邪魔してやろうと思ったのに、余計仲良くなっちゃったじゃねぇの...チッ」
ベッドの上では、ゾロが遠慮無しに声を上げていた。多分、エースに聞こえるように。
(ゾロ...見られてると燃えるタチだったのかよ...知らなかった...)
ゾロは、エースへの当て付けに、普段は出さない声を出してみたのだった。しかしサンジは大きな勘違いをすることとなった。
こうして、思いがけず、眠れぬ一夜を過ごした若者達。
「邪魔したな〜。楽しかったぜ、お二人さん！ありがとな」
「二度と来るな」
「お疲れっした」
「ゾロ、そんな言葉かけなくていいっ」
「一応、疲れただろうし」
「てめェはアホかっ」
「何だとぉっ！！」
エースの存在など無視して、喧嘩を始めるあたり、大してダメージは受けていないようだ。
「おめぇら、もし別れたらさぁ...俺と付き合ってくれよな？」
「別れねぇよ！！」「別れるかよ！」
息もピッタリである。
「諦めねぇからな...」
エースはそう言い残して、立ち去った。
fin.
■あまり多くは語らないことにします(笑)。3人の会話って難しいですね。それぞれ誰が喋っていたか、わかりましたか？色分けした方が良かったでしょうか...。全員キャラ崩れは、故意にやりました...ごめんなさい〜！ゾロは一体クールなのかボケなのか...作者にも分かりません...(大汗)
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