Ｄｅｂｕｔ
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ゾロが落ち着きを取り戻したのを見計らい、サンジはそっと口を離した。ごくんと飲み干したソレは、二度目というのに量が減っていない。そしてサンジの指を取り囲む器官は程よく解れ、柔かくなっていた。今日こそ、一つになれる。サンジは深呼吸をすると、ゆっくりと指を抜き取った。
「ん.....」
脱力し、手足を伸ばしていたゾロは、身体に違和感を覚え目を開けた。まだ快感の余韻が残る身体、そして視点の定まらない目。
「ゾロ....」
サンジのキスを受け、ゾロはその金色の髪に反射的に手を触れた。耳や首にもサンジの唇が触れると、ゾロは普段の何倍も敏感に反応した。
「すげぇ、ゾロ....」
「.....何か、自分じゃねぇみてぇだ」
「今だったら.....」
今のうちなら、もう一度、ゾロを頂点に導いてやれるかも知れない。サンジは自身の下腹部の熱の塊を、ゾロの後孔へ押し当てた。ずっとこの瞬間を待ちわびながら、透明の蜜を垂らし続けていたせいで、サンジのソレはぬるぬるになっている。
「っ.....」
「んっ.....」
サンジの充分な潤滑油のお陰で、その熱く狭い道をスムーズに進んでいけた。
「やっと......こうして......」
サンジに余裕は無かった。気持ちではゆっくり、と思っているのに身体が言う事を聞かないのだ。快感がまた新たな快感を生み、貪欲に相手を求めてしまう。
このままだと、ゾロを壊してしまう。そんな思いが頭をよぎったが、本能の暴走は止まらない。サンジの動きは激しく、ゾロの中を何度も往復した。今度は指では無く、もっと熱くて太いモノが、あの部分を刺激している。
ゾロの声にならない叫びも、サンジの耳には届いていない。サンジがゾロに深い口付けを与えた瞬間、二人の腹の間で挟まれていたゾロの高まりが震え、弾けた。サンジもそれを微かに感じたまま、ゾロの中で激しく動き、欲望を吐き出し、奥へと注ぎ込んだ。
サンジが薄く目を開けると、そこは殺風景な部屋の中だった。
「ん？」
ああ、そうだったなと此処に居る理由を思い出す。ホテル暮らしはあんまり好きではない。何もしなくていいが、何もできないという不自由さがある。まだ、この雰囲気に慣れない。少し遅れて、自分の置かれている状況を思い出した。
「......あ、そっか....」
自分ひとりではなかった。そうだ、ゾロも一緒だ。サンジはゾロの腕に抱かれて眠っていた事に気付いた。寝息を立てているその男の方を見れば、普段の様子からは想像できない程、無邪気な顔をしている。
「駄目だな....俺、こういうのに弱い....」
ゆっくり寝かせてやりたいが、サンジは我慢できずにゾロに何度もキスをした。途端ゾロは顔をしかめるが、またすぐ元に戻る。
「そりゃ疲れるよな....いくらゾロだって」
これでもかと言うくらい、ゾロを愛した。それでもまだ、サンジは満足していなかった。全ての力を搾り出し、全てを与え、全てを貪った。それなのに、この渇きのような気持ちは何だろう。
「俺....どうなっちまったんだ.....」
ゾロと離れるのが怖かった。でも傍に居るのもまた、同じく怖い。寂しいとか、恋しいとか、そういうのではない。
ただ、苦しい。
サンジは、ゾロへの気持ちは全て吐露していた。ゾロはそれを受け入れ、そして自分も同じ気持ちなのだと告げられた。肌を合わせ、お互い見ていない場所は無いくらい、触れ合った。
「........」
「.....あ、目ぇ醒めたのか......」
「どうした、そんな辛そうな顔して」
「.....ゾロ.....」
「俺まで辛くなんだろ.....お前は.....笑ってろ」
「....バカかっ...そうそう面白くもねぇのに笑ってられっかよ」
「.....悩みとか....じゃねぇんだな？」
「.....いや、そうじゃねぇけど.....でも」
「？」
「困ってる事はある」
「......言ってみろ」
真剣な眼差しで、ゾロはサンジの話を聞いてくれた。話を終えたサンジの頬を手で包み、"そうか"と呟いた。
「ゾロ......俺、変だよな」
「いや、変じゃねぇ」
「俺の言った事.....分かってくれるのか？」
「あぁ.....俺に、何かできる事あるか？して欲しい事は.....」
「何も....。もう充分なくらいしてもらった」
「でも、何かがきっと足りてねぇんだ」
「......」
「それを見つけてやれるのは、俺しかいねぇ」
「お前しか......？」
そうだな、お前しか、いないんだ。他のヤツじゃ駄目なんだ。
それじゃ、きっと....
「お前にも、俺だけ......俺しかいねぇよな」
「....ん？何だ？」
「俺だけ、だろ？」
「.......何だ、独占欲強ぇな」
「.....悪ぃかよ」
「別に。俺も似たようなもんだ」
「......」
サンジは、いつの間にか、さっきまでの胸の苦しさが消えているのに気付いた。
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本気だからこそ、苦しい。
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