〜小悪魔の館〜
オレンジの風に吹かれて
〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***
サンジがゾロに触れた。ゆっくり手を往復させると、時々ゾロの腰がもぞもぞと動いた。サンジは少し楽しくなってきた。もっと感じろ、と思えるほどに。
「クショッ」
「てめっ、汚ぇな」
サンジが鼻をすすりながら、ゾロから離れた。浴槽の中には入らず、その外で座っていたので、身体も乾いてきていた。湯が冷めてきたせいだろうか、浴室内の温度も下がってきている。
「もう、ここ出た方がいいんじゃね？」
サンジは手に付いた白濁を洗い流しながら言った。2回目は少し力の抜き方を覚えたのか、ゾロは遠慮がちながらも声を出していた。
(何だろう？この中途半端な充足感....いやちょっとそれも違う....)
一応スッキリした気もするが、まだ何か足りない。男同士というのはひっかかるが、気を遣う事も無く欲求を解消する行為だけ。出すモノは出したのだから、これ以上何を求めるというのだろう。
「これ、かけろ」
ゾロはシャワーの湯をサンジに向けた。冷めた身体が温まる。
「先に出てろ」
気持ち良さそうに湯を浴びるサンジに向けて、ゾロは言った。二人仲良く出て行くのも何だか変だと思ったのだろうか。
「あぁ、じゃお先に」
サンジの白い背中を見送る。
何事もなかったかのように、浴室を出て行った。ゾロは今度は自分が湯を浴びる。冷えた身体にイキナリかけたので、その温度差に目が覚めるようだった。
「....コレ全部夢って...事にできねぇかな」
これから面倒臭い事が起こりそうで、ゾロは少し憂鬱になった。
手早く身体を拭き衣服を簡単に着けたサンジは、更衣室から梯子を下りた。階下は既に元のように片付けられていて、誰も居なかった。サンジがつい先ほど見た光景が、ぼんやりと浮かんでくる。
(あれは....何かの間違いで、俺の思い込みだ。あんな事がある筈がない)
サンジは無駄と知りつつ、自分に言い聞かせるように、その虚しい言葉を口にした。また、喉元が苦しくなり目頭がじんわりと熱くなる。
「何とかして、見なかった事にできねぇか？無かった事にできねぇか.....？」
サンジは思った以上に自分が傷ついている事を知る。幼い頃から色々辛い事を経験し、厳しい環境で育ってきた。考え方は甘くは無いと思ってきた。多少の事には動じない自信があった。
「ナミさん.....」
声を上げて泣きたい気分になった。しかし、もうゾロが浴室から出てきている頃だろう。聞かれるのも嫌なので、ぐっと堪えた。しかし、涙が一筋流れ、肩も小刻みに震えている。
「へっ？」
一瞬何が起こったのか、分からなかった。
「......な、何だ？」
背中に当たる温もり。
「.......マリモ？」
「....いつまでもメソメソしてんじゃねぇ」
いつ下りてきたのだろう？全く気付かなかった。
「何の真似だ」
「....てめェの背中がガラ空きだったからよ」
「別に戦闘中じゃねぇから、関係ねぇだろ」
「注意力無さ過ぎだ。俺が居るのにも気付かなったクセに」
ゾロの腕がサンジの両脇から回されてきた。
「....おい、もういいから離せよ」
「....本気で言ってねぇだろ」
「なっ....どういう意味だっ...俺はっ」
「......どうしても嫌だってんなら」
ゾロの腕が引っ込んだ。サンジはホッとすると同時に、説明の付かない空虚感に襲われる。それを振り払うよう、とりあえず話し始める。
「マリモ、喉渇かねぇか？」
「ん？あぁ....そうだな」
「何か飲むモン作るよ」
「酒...ねぇのか？」
「バーカ。風呂上りに酒なんて駄目に決まってんだろ」
「何で？」
「水分補給に酒ってオカシイだろ！ちょっとは頭使え！」
「.......ちっ」
何だ、酒が飲めると思ったのに....。小声でブツブツ言いながら、ゾロはサンジに付いてキッチンへと向かった。
＊＊＊＊＊＊＊＊
やはり自分のテリトリーだと落ち着く。自然と足も速まる。サンジはカウンターの中へ入り、グラスを2つ出した。冷蔵庫で冷やしておいた、紅茶の残りを注ぎ分けた。
「丁度2人分。ミルクは要るか？」
「いらねぇ...そのままで」
「あいよ」
冷えているので鼻を近づけても分かりづらいが、口に含み、喉を通る時に良い茶葉独特の香りを放つ。サンジはナミと2人で淹れたてを楽しんだ時を思い出し、また少し気分が沈みそうになる。
「.....旨ぇな、コレ....いつものじゃねぇな」
「分かるのか？」
「全然違う」
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