〜小悪魔の館〜

オレンジの風に吹かれて


　〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***




「同じ空気を共有してる同士だ。それくらい読めるさ」

(俺は今まで、コイツの何を見ていたんだろう？)

自分だけ気付かずに、ゾロは色んな事を読み取り、感じてきたのだと思うと、サンジは悔しさが込み上げてきた。

「で、どうなんだ？」
「どうって？」
「俺と....居るか？」
「......まぁ、そうなる事もあるとは思うけど」
「俺は....お前がさっきみてぇに....」
「......ん？」
「別に笑ってなくてもいいが、力抜いて楽にしてられんなら、俺も気が落ち着く」
「....」
「無理に笑わなくてもいい」
「マリモ....」
「ま、それだけだ」
「あ.....」

やっと気が済んだのか、ゾロはカウンターの外へ出て行った。テーブルの傍の椅子に座り、肘をついた手に顔を載せた。

「あ.....あぁ、そろそろ皆がコッチ来るだろ」
「呼びに行くのか？」
「え？」
「さっき、そう言ってただろ？」
「あ、あぁ...」
「俺が行ってきてやる」
「え？いやいいよ、俺が....」
「今、また顔が引きつってたぞ。無理すんな」
「無理なんか....」

と、その時。軽やかな足音が近付いてきて、扉が開いた。

「あー、お腹すいたぁ...サンジくん、もうできそう？」
「あ、ナミさんっ....そろそろ呼びに行こうかと」
「他の連中もすぐ来るわよ」
「ハイ、すっかりできてますよ〜」

表面上は、いつもの調子で喋っている。ナミも勿論気付いているだろう。ちらりとゾロの方を見やると、ふぅん、と何か分かったような顔でニヤリとする。それに気付いたゾロが"何だ？"という風に視線だけよこす。それに対してナミも"何にも"という顔で返した。


そしてそれからは、特に変わり映えしない一日が過ぎていった。サンジは相変わらずのメロリンなレディへの接し方。そしてそれ以外の男達への物言い。昨日迄と変わりは無い。ナミも変わらずサンジには、容赦なく頼み事をしてくる。

何事も無かったかのように、見える。

しかし、そんな簡単にいく筈が無い。サンジが相当な無理をして、昨日のショックを心の奥底に封じ込めて、そしてそれが....

(いつかオカシな方向へ、噴出したりしなけりゃいいが.....)

ゾロは気がかりだった。いや、実のところ本気で心配していた。自分にも責任が無いとは言えない。サンジは多少の事では顔にも言葉にも出さず、頑張り通そうとするタチだから、倒れてからでは手の打ちようが無くなる。

(コックが倒れたら、俺だけじゃなくて皆困るだろうに)

毎日美味しい食事にありつけるのもサンジのお陰。それは充分に分かっている。それが無くなってしまうなんて、考えられない。ゾロは、キッチンの調理場に誰も居なくて、がらんとしている様子を想像してみた。

想像だけなのに、妙に落ち着かない。

そこに居るべき人間が居ないだけで。

そこに行きさえすれば、確認できる姿が見当たらない、というだけで。





おやつを配り終えて、キッチンに戻りテーブルに着いたサンジは、飲み頃に少し冷めたコーヒーを口にした。向かい側にもう一人分置いてある。さっきゾロの所へ行ったら"キッチンで食べる"と言うので、ここに用意した。

まだ来ないので、コーヒーだけ少しずつ飲みながら、待ってやる。

そこへ重い靴音が近付き、一瞬止まってから再び近付いてきて、扉が開いた。その隙間の向こうに見える、回転椅子に座ったチョッパーがニコニコしているのが見えた。そこに立っているゾロの表情もまた、柔かい。

(優しい目、してんだな.....)



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このままじっと見守りたいです...





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