〜小悪魔の館〜

オレンジの風に吹かれて


　〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***




「とにかく何か違う」

いつも最小限の言葉でしか物を言わないゾロが、精一杯何かを伝えようとしている。サンジは、黙ってゾロの言葉を待った。

しばらく待った。



「今日はこのへんにしといてやる」
「何だよそれ」
「風呂、行くか」
「へっ？」
「何か、色々考えてたら、頭が沸きそうになってきた。サッパリしてぇ」
「勝手に行けばいいだろ」
「もう結構遅い。さっさと入って寝とかねぇと」
「大きなお世話だ」
「....ちゃんと寝ろって、チョッパーにも言われただろ」
「また、そうやっててめェは....」
「あァ？」

サンジはまた、言葉を呑み込む。



チョッパーが言うから、じゃなくて。
俺が心配なんだろうが。
でも....何で心配なんだ？
他のヤツらが心配するから、メシの味に影響するから、それから....。


「コック」
「.....」
「来いよ」
「....？」
「まだ....話が....」


ここでずっとウダウダやっていても時間の無駄だろう。サンジは仕方なく、ゾロと大浴場へ向かった。


＊＊＊＊＊＊＊＊


測量室の外のバルコニーにナミが居た。ゾロとサンジがやや離れ気味で一緒に歩いてくるのが分かり、不思議そうな顔をする。

「どういう風の吹き回し？」
「.....」
「ナミさん、夜風当たり過ぎねぇように」
「ゾロと何かあったの？」
「いや、特には....何にもねぇけど」
「ゾロ....いつもの"気"が無いのよねぇ」
「そう？」
「何か...気が逸れてるって言うか....」
「ナミさん、マリモの事よく分かるんだね」

(お、俺何言ってんだぁ....)

あら、と言うような顔をするナミ。

「...って言うか、私じゃなくたって、ロビンだって、ウソップだって....分かると思うわ」
「....そ、そう？」
「大丈夫？サンジくん」
「あ、あぁ....」

(俺、何をこんなに動揺してるんだ....)

ナミは測量室の中を指差した。

「ねぇ、サンジくん。ゾロ、もう上がっていったみたいよ」
「あ、あぁ.....いいんだ別に」
「サンジくんも早くお風呂入って、寝ないと駄目よ。チョッパーも言ってたわよ。サンジくん普段から働き過ぎだって。まぁ、それは私達にも責任あるんだけど....いつも任せっきりだから」
「いやいやいや....俺の務めだから全部....」

ナミに手を振り、サンジは測量室へと入った。ゾロはさっさと更衣室へ上がったらしかった。

(ナミさんまで....チョッパーの言葉を借りて....俺の事思って言ってるんじゃねぇんだな)

サンジは溜息を一つついて、更衣室への梯子を上った。脱衣籠の一つにはゾロが脱いだらしい服と着替えが入っている。サンジも衣服を脱ぎ始めた。腰にタオルを巻き、浴室の扉に手をかけた。

(あれって....昨日の事だったよな？)

あれほど衝撃的な出来事が連続で起きたのに、そのどれもが鮮明で尚且つ、朧げな記憶として頭の中に残っている。もう忘れたいと思うのに、忘れたくないとも思う。

全て忘れられたら、どんなに楽だろうか。

「おい、コック」
「......っ」
「何そんなトコに突っ立ってんだ？」
「お、おぅ.....」
「今、いい湯加減だ、入ってこい」

昨日の事が、まるで無かったかのようだ。ゾロは黙々と身体を洗っている。

「....たまには、こういうのもいいだろ」
「へっ？」

ゾロがサンジの背中に石鹸で泡立ったタオルを当て、洗い始めた。サンジは思いもよらない事で、少し慌てた。

「あん時のでけェ....城の大浴場で.....皆で入ったっけな。ココももうちっと広かったら、全員で入れるのにな」
「てめェと入るだけならまだしも、全員で入るなんてまっぴらだぜ....俺は静かに入りてぇんだよ」
「.....俺とだったら、まだいいのか？」
「....なっ...例えばの話だ」

サンジの背中を洗い終えると、泡を流した。ゾロの手がサンジの背中を滑り下りた。



BACK←←　→→NEXT

---

結局また一緒にお風呂です....





Pirates MENU

NOVEL MENU


TOP