〜小悪魔の館〜

オレンジの風に吹かれて


　〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***




「ははっ....全くナミさんには適わねぇなぁ」
「手、しっかり手当てしとけよ」
「あ？」
「今夜....ナミの処へ行くんだろうが」
「おいおい....変な風に言うなよ...ただ肩凝りのナミさんをだな」
「用が何であれ、いい事じゃねぇか。お呼びがかかって」
「.....皮肉かよ、それ」
「...いや、ただそう思っただけだ」
「おめぇは....あれから....」
「ん？」
「その....ナミさんと....」
「.....特に何も無ぇ」
「別に....次の約束とか、ねぇって事か」
「....そういうのは無ぇ。突然言われるからな。続く事もあれば、忘れたみてぇに長く開く時もある」
「また....次もあるって意味だよな」
「....何でそんな事訊く？」
「......」
「できるもんなら、てめェに代わって欲しいくれぇだ」
「ええっ？？」
「.....」
「.....お、俺？」
「.....おめぇ、ナミに惚れてんだろ？アイツの相手すんのに丁度いいじゃねぇか」
「......え？」
「....おい....何だ、大丈夫か....？ちゃんと聞いてたのかよ」
「.....あ、あぁ.....俺は駄目だ。俺に務まる訳ねぇだろ.....ってか.....」

サンジにとってあの衝撃的な場面を、記憶から消し去る事など、不可能に近かった。

(お、俺に代われって....そういう意味かよ....ビビッたぜ)

おかしな勘違いをして、挙動不審になったサンジをゾロは黙って見ている。サンジも何も無かったかのように振舞った。

(俺はてっきり....ナミさんじゃなくて俺の相手を...って意味かと....。はは、ンな訳ねぇよな)

「......」
「俺はおめぇみたいに割り切れねぇ。ナミさんとそんな関係になったら、とても普通に接するなんて無理だ」
「そうか....かと言って他に代わってもらえるヤツなんて....」
「......」
「肝心の借金は、大して減らねぇし.....」
「....おい」
「あァ？」
「もう、やめろ」
「.....ん？」
「今は上辺だけの関係でも.....そのうちどうなるか分かんねぇ」
「どうなる...って？」
「どっちかが惚れちまったら....」
「それは無ぇな」
「何でそう言い切れる？」
「アイツには、そういう気持ちが全く湧いてこねぇ」
「今はそうでも」
「今後も一切無ぇ」

(おめぇがそうでも.....ナミさんが....そのうち情が移るって事もあるじゃねぇか)

「コック....何をそんなに....」
「俺は.....」
「何だ？」

返事を待ってるのかと思えばそうでも無く、ゾロはテーブルの上で組んでいる自分の手を見ている。何か考えているようだが、何も言わない。そして、手をついて立ち上がった。

「さて、そろそろ行くか」
「鍛錬の時間か」
「また....来る。水でも貰いに」
「水筒、持ってくか？」
「いや.....ここに来る」
「.....」

サンジの胸がざわついた。ゾロが水一杯の為にここまで来ると言うだけで。


＊＊＊＊＊＊＊＊


夕食の後片付けも終わり、チョッパーがサンジの手を診察すると言って保健室へ連れていった。ゾロも特に用が無いのでキッチンを離れ、ダイニングの隅のソファに腰を下ろし、伸びをした。

「ゾロ、悪いわねぇ。ちょっとサンジくん借りるわよ？」
「あァ？何で俺に言う？」
「何だか最近仲いいじゃない。この後しばらく借りるから....一応言っとこうと思って」
「....まだ、傷は癒えてねぇ」
「....」
「そこんとこ、考えてやってくれねぇか」
「....あんたが、そこまで言うなんてね」
「ん？」
「ゾロがそんなにサンジくんに優しいなんて....て言うか、サンジくんもあんたの事を憎むどころか、何だか頼ってる感じがするし。これって...」
「何が言いてぇ？」
「......相思相愛....ってとこかしら」


ゾロの反論を聞く前にナミは席を立ち、"入るわよー"と声を掛けて保健室の扉を開けた。サンジと何やら相談した後、保健室から出て行った。この後サンジはナミの処へ行くのだろう。



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ナミさんに指摘されちゃいました。でも自分でそう思わない限り、ゾロは動きませんよね、きっと。





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