〜小悪魔の館〜
オレンジの風に吹かれて
〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***
男部屋とは比べ物にならない位、広々として豪華な調度品もある女部屋。ベッドに横たわるナミ。ソファではロビンが本を読んでいる。そんな夢のような空間にサンジは呼ばれていた。
「じゃーサンジくん、早速お願い」
サンジはいたって冷静に、落ち着いてマッサージを始めた。ここにはロビンも居る訳だし、おかしな事にはならないだろう。
「あー、すごく凝ってるね、ナミさん」
「いっ痛っ.....うーっ効くぅ」
「ゴメンよ....でもこれでも殆ど力入れてないから....よっぽど凝ってるんだね」
「うっ....痛いけど本当によく効くわ.....」
「後でお風呂で身体を温めて、凝った場所には熱めのシャワーを当てるといいよ」
「そうするわ.....後で一緒にお風呂行かない？ロビンも一緒に」
「へっ？」
「うふふっ....コックさんなら一緒でも構わないわよ」
「ぬわっ....」
「もー、やーねっサンジくんったら！嘘よ！そんな事したら大変よね」
「鼻血で失血死するわね」
「や、やだなー二人とも....からかわないでくれよ....」
「サンジくんがいいなら、私達別に構わないけど....ゾロに怒られそうだから、やめとくわ」
「あら、剣士さんのお気に入りになっちゃったの？」
「どうやら、そんな感じがするのよね.....何かが二人の間に...」
「何をっ...もういい加減に....何でマリモなんか」
「まぁ、どっちでもいいけど。あ、サンジくん、次は背中のもうちょっと下と.....腕もお願いできる？」
「はいはい.....」
くすっと笑いながら、またロビンは読書を続ける。ナミは気持ちよさそうに目を閉じている。こんな場所に居ながらも、サンジは心から楽しむ事ができなかった。
「本当にありがとう。助かったわ」
「どういたしまして。またしてあげるから」
「チョッパーがね、いい薬を調合してくれたのよ。寝る時に痛いところに貼れるようにしてあるの」
「早く楽になるといいけど....書き物はせめて一日おきに」
「できるだけ、そうするわ....じゃ、おやすみなさい、サンジくん」
「おやすみ、ナミさん」
＊＊＊＊＊＊＊＊
男部屋に下りてくるとサンジは着替えを持って、ダイニングへと向かった。明日の朝食の仕込をしなければいけない。その間にナミとロビンが入浴を終える筈だ。
それくらいの時間になれば、ゾロも展望室から下りてくるかも知れない。
(何で気になるんだ....)
サンジは少し戸惑いながらも、嫌な気はしなかった。
手早く作業を終えキッチンを出る。測量室まで行くと、笑い声が聞こえてきた。扉を開けると、さきほどおやすみの挨拶をしたばかりの、ナミとロビンが本棚の前で並んで立っていた。手には本を数冊抱えていた。
「あら、サンジくん。今から？」
「あ、あぁ....今から」
「私達先に済ませたから....ごゆっくり」
二人とも洗い髪が綺麗だ。サンジは手を振りながら梯子を上っていった。
「サンジくーん！お湯の温度いつもより2度くらい高いから...のぼせないように気をつけてね...」
「分かった」
更衣室にも浴室内にも誰も居ない事を確認し、ホッとした。やはり風呂は一人でのんびり入るのがリラックスできていい。衣服を脱ぐと、タオルは腰に巻かずに手に持ってそのまま入った。浴室内は確かに昨日より湿度が高い気がする。湯温のせいで湯気もこもるのだろう。
浴槽のすぐ傍まで来ると、何やらほんのり良い香りがする。
(これは....？)
ナミとロビンが時々使うらしい、肌に良いというエッセンスオイルか、あるいはリラックス効果のある何かだろうか。温度を少し高めにしていると言うのも、これのためなのだろうとサンジは思った。さっき彼女らとすれ違った時も、良い香りがしていた。
「やっぱりレディが居ると居ないとでは、世界が変わるよな」
男しかいない船の上では考えもつかない事だろう。サンジは身体を洗い、次に髪を洗いかけると、更衣室に人の気配を感じた。確かめたくても丁度額のあたりにシャンプーの泡が落ちてきているので、目が開けられなかった。
(まぁ、この船の誰かしか来る訳ねぇんだから....)
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