〜小悪魔の館〜

オレンジの風に吹かれて


　〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***




「明日は島に着くから、皆各自準備しておいてね」
「わー、どんなところかなぁ」
「何か珍しい物あるのかしら」
「食材調達リスト、完璧」
「色々買う物がいっぱいだわ」
「うめぇモン、あっかなー....しししっ」

天候は穏やかで、明日は問題なく上陸できるだろうというナミの見立てだった。





翌日、下船の準備中。リュックを持ち上げようとしているゾロの元へナミが近付く。

「ゾロ、これ良かったら使って」
「あァ？」

ゾロがろくに返事もしない内に、ナミは手に握っていた物を、リュックのポケットに突っ込んだ。

「使い方のメモも付いてるから...。じゃ」
「お、おい...一体何なんだ」

確かめる暇も無いまま、ゾロはリュックを背負い、腰に差した刀の位置を確認し船を下りる。

「マリモ！」

さっきまで視界には居なかった男が近付いてきた。

「おい、おめぇ先に下りたらヤバイだろ！」
「あァ？」
「どっち行くか分かってんのか？」
「適当に歩いてたらいいんじゃねぇのか」
「ちゃんと効率よく廻って、色々チェックしとくんだろうが！どんな店があるかとか、どういう人間が出入りしてるかとか....」
「どこの島もおんなじもんだろ」
「俺達が常に歓迎される訳ねぇんだから、もうちょっと考えて動けよ」
「るっせーな」
「ほら、俺の後ろ歩け。先頭行くんじぇねぇぞ」
「何でおめぇに従わなきゃならねぇんだ！指図すんな」
「.....付き合ってくれるって、約束しただろ？アノ時」
「........その言い方ヤメロ」
「後ろが嫌なら、せめて横歩け。はぐれねぇようにな」
「う........」

自分では正しい道を歩いているつもりなのだが、頻繁に自分だけ違う所へ行ってしまうのだから、それ以上は強く言い返せなかった。しぶしぶゾロはサンジと並んで歩いた。

単独でも目立つ風貌の二人が、並んで歩けばさらに目立つ。すれ違う人々がいちいちチラっとこちらを見てくる。

「何か、見られてねぇか？俺達」
「ここに来るの初めてだぞ」
「俺達は初めてでも.....一応お尋ね者だからな」
「騒ぎさえ起こさなきゃいいんだろうよ」

話しながらもサンジはきちんと周囲を見ていた。時々必要な事はメモを取る。ゾロは恐らくもう方向を見失っているだろう。船を泊めた方角も分からないに違いない。

時折着飾った美女とも目が合う。サンジは適当に愛想を振りまく。今ナンパしたら成功率高いだろうなと思った。

(悔しいけど....何一つカッコ付けてねぇこの男の方が....)

服装さえもう少し気を遣えば、遠目で見ている女達も直接声を掛けてくるのではないか。そうなるとサンジがナンパに成功しても、ゾロに持っていかれるかも知れない。

(それは本末転倒だな)

一通り賑わった地域を見て廻った。それほど広くはないが何でも揃っていて、良い所だ。店の位置も把握できた。次は、少し外れた場所まで足を延ばす。酒場や宿が寂れていると少し不安だからだ。

「今日は見て廻るだけだからな。買出しは明日。持てるだけ買って、残りは明後日に船に届けてもらうか」
「ここはどんな酒があるんだろうな」
「....てめェは酒の事ばっかりか！今大事な話してんだから、ちゃんと聞け！」
「はいはい」
「ったく.....」

視界の隅に入ってきた、小綺麗な宿屋。いくつか見つけた中でも一番ましな外見だった。

(ここがいいかな)

一番目を引くという事は、ナミも他のメンツも当然見つけるだろう。一味は全員同じ宿が都合がいいだろうが、今回はちょっと違った。できれば分宿したい。

(部屋が空いてるとも限らねぇし....)

「ちょっと部屋空いてるか訊いてくる」



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微笑ましい二人。





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