〜小悪魔の館〜
オレンジの風に吹かれて
〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***
サンジは一人宿屋へ入っていった。"ここを動くんじゃねぇぞ"とゾロには釘を刺しておいたのは勿論の事。そして数分後、ゾロの所に戻ってきた。
「部屋、かなり込んでたみてぇだけど押さえてきたぜ」
「おう」
「二人部屋....なんだが」
「それでいいだろ」
「......ツインじゃなくてダブルだけど」
「ん？」
「それしか空いてなくてよ」
「ダブルって？何か違うのか」
「あ....ま、いいや。要するに二人部屋だ」
「分かった」
今言ったら文句が返ってきそうなので、サンジは詳しい説明は省略した。どうせ後で文句言われるかも知れないが、その時はどうにもならない。正直、サンジも戸惑っているのだが。
(何か、俺が誘ってるみてぇじゃん.....)
心の隅には、そういう気持ちが無くも無い。
ゾロから言葉は聞けていないが、"好きだろ？"と訊いた時否定しなかった。確かそんな会話をした気がする。ゾロの手で快楽を得、そしてサンジの手により、ゾロは普段見せない別人のような姿を現した。
後は進むべき道は決まっているのではないか。あるいはここで考え直すべきなのか。突っ走らない方がいいのか。思いのまま動けばいいのか。
だいたいゾロはどう考えているのか。それは早ければ今夜ハッキリするだろう。
(クソ涼しい顔しやがって.....)
ゾロのその端正な横顔に、少しばかり見惚れてしまった自分にムカムカしてきた。ムカつきながらも、同時に温かいものが胸に宿っている。
(ヤキ回ったかな.....)
ほぼ見られる場所はチェックし終え、二人は宿へと戻った。受付の女がサンジの顔を見るなり宿帳を開いてペンをその上に置いた。
「こちらへお名前をどうぞ」
「こちらが鍵です」
「お部屋までご案内します」
テキパキと気持ちのよい接客をする。一見質素だが従業員教育は一流高級ホテルに引けを取らない。動きもキビキビしている。
「お食事はご用意してよろしいですか？それともお外に行かれますか？」
「.....自慢料理とかあるの？」
「ええ勿論です」
簡単な料理の説明を聞き、サンジは興味を引かれたようだ。
「じゃ、ここで頂くよ」
「食後はお部屋に何か必要でしたら、後でお申し付け下さい。お酒を召し上がるのでしたら、先にお風呂をお済ませ下さいませ」
「分かったよ、ありがとう」
「では、ごゆっくり」
ゾロは柔かい椅子に腰を下ろし、手足を伸ばしている。サンジは運ばれて来た荷物を移動させ、必要な物を取り出したり整理したりしている。
「あーメシも作ってもらえるし....楽チンだな」
「俺はおめぇのメシの方がいいが」
「......マリモ....そっか？」
「あぁ」
「......」
(コイツ....全く自覚無しかよっ)
腹立たしいような、嬉しいような、悔しいような。
サンジがバスルームのドアを開け、中を確認する。その背後でゾロもチラリと見ていた。
「風呂...すぐ入れるみてぇだぜ？」
「......結構広くてキレイだな」
「な、何だそこに居たのかよ....」
振り返ったそのすぐ目の前に立っているゾロと目が合い、サンジは少しばつが悪そうに視線を外した。しかしゾロの方は逆にサンジを目で追った。
「酒飲むんだったら先に風呂入っとけって....」
「あぁ、さっきそう言われたな」
「メシまで時間あるし、どうせする事ねぇだろ」
「じゃ、今から入るか....ゆっくりと」
サンジはゾロのすぐ横をすり抜け、着替えを取りに荷物を置いてある場所へ向かう。
「一緒に入るだろ？」
この広さなら当然の事とは思ったが、ゾロが一人で入りたがっているかも知れない。サンジは確認のため訊いてみた。
「あぁ.....俺はどっちでも構わねぇ」
ゾロならこう答える事は予想できたのに、ついつい訊いてしまう自分に苦笑する。余程の事が無ければ断わらない、という事を知っているのに。
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