〜小悪魔の館〜

オレンジの風に吹かれて


　〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***




「おい、休むんならちゃんと休め」
「......」

ゾロは自分のすぐ傍を手の平で軽く叩いている。隣に来いと言っているらしい。

「コック、この部屋にはベッドが1個しかねぇんだな....」
「あ、あぁ....そのようだな」
「その代わり広いから、まぁ男二人何とか寝られるだろう」

やはりゾロは分かっていなかったようだ。でも文句を言うかと思ったが意外とあっさり受け入れている。

こういう部屋の存在すら知らないのだ。

(世間一般の事を、あまりにも知らなさ過ぎる。今までよくやってこれたな)

ゾロの隣に身体を横たえたサンジは、ゾロの方へと身体を向けた。

「な、マリモ....」
「ん？」
「俺、今日ほどお前の事知りたいと思った事はねぇよ」
「もう知ってるだろ」
「いや.....一体何を考えてんだか、分かんねぇし」
「俺は何も隠しちゃいねぇし、企んでもいねぇ」
「......」
「思った事しか言わねぇし、嘘もつかねぇ」
「.....あぁ」

(でも、思った事を全部言ってる訳じゃねぇだろ)

「......俺の何が知りてぇ？」

ゾロも身体を横に向け、サンジの方を見た。

「....全部....他の誰にも見せてねぇ事、誰も知らねぇ事」
「............それなら」
「....」
「それなら、おめぇの事も全部見せろ」
「.....あぁ」
「他では言えねぇ事でも、俺には言え」
「....あ、あぁ」

ゾロの手がサンジの頭に伸びた。長い前髪をかき上げると、いつもは隠れているその部分に唇を落とした。"俺だけが知っている"とでも言うつもりなのだろうか。

(もしかして....見かけによらず独占欲強いとか？)

普段そうそう他人に触れられる場所ではないせいか、何だか落ち着かない。唇が瞼を撫で、吐息がかかり、睫毛の生え際に沿って舌先が触れると、身体の力が抜けていくようだ。

「もう降参か？」
「な訳ねぇだろ.....こっちからはまだ何もしてねぇ」
「ん？何してくれんだ？」
「それは後のお楽しみだ」
「じゃ、今は...」

またゾロの唇がサンジの肌に触れる。ただ滑り下りてくるだけで、サンジは背中がぞくりとする。唇のすぐ横を通過すると、顎を食み、さらには喉へと移動する。サンジが堪らずゾロの顔を引き戻し、唇を重ねようとした。ゾロは少しだけ顔を背けた。

「それは後にしろ」
「....いいだろ、キスくらい」
「...いいけど....よくねぇ」
「何で....」
「.....」
「何も隠さねぇんだろ？思ってる事言えよ」
「.......分かんねぇ」
「？」
「うまく言えねぇが....今はマズイ」

今してしまうと、厄介な事になる.....とでも言うのか。

「あぁ、俺も多分....マズイっちゅうか、ヤバイ事になるな」
「.....おめぇも？」
「そんなの当たりめぇだろ。気持ちいいんだからさ」
「......」
「でも、目の前に居るのにさ.....我慢できっかよ」
「おい......んっ」
「んん......」

サンジの舌が入る。歯列に沿って上顎を端からなぞる。ゾロの舌の表裏を舐め、ゆっくりと食み、吸い上げる。ゾロの抵抗が続いたのは、ほんの数秒だけだった。

「ぷは....っ」
「欲しい.....」
「.......」
「おめぇが....全部欲しい.....俺も」
「......」
「俺の全てをおめぇにやるから」

何も包み隠さない、サンジの本心を渾身の思いで伝えた。

「..........」
「..........」

そこへ、ドアをノックする音。

「ん？」

しばらく間があり、もう一度ノックの音。

「お客様」

もうそんなに時間が経ったのだろうか。

「お食事できてますので、いつでもお越し下さい」
「....あ、はい分かりましたー、すぐ行きます」



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サンジってイイ男だなぁ。





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