〜小悪魔の館〜
オレンジの風に吹かれて
〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***
少人数用の部屋もあるらしく、食事はそこに用意してくれている。どれも美味しそうだったが、何より二人でゆっくり食べられるのは嬉しい。食前酒が小さなグラスに入っていた。
聞いていた予定時間より多少早かったが、腹もいい具合に空いてきていたので丁度良かった。もし後少し遅かったら、部屋から出られなかったかも知れない。
(危なかった.....)
ゾロはその危険を察知していたのだろう。"後にしろ"とはそういう意味だったのだ。
(後のお楽しみだ、って自分で言っときながら、我慢できなかった....でも？)
すぐ傍には、ピッチャーから酒らしきものをグラスに注いで上機嫌な顔を見せている男。
「おいマリモ」
「あぁ？」
「涼しい顔しやがって......やっぱおめぇのせいだろうがっ」
「ん？」
半分聞いていないようでもある様子で、グラスの中身をぐいぐいと喉に流し込んでいる。
よくよく考えてみれば、サンジが我慢できなくなったのはゾロのせいだ。さんざん人を煽っておいて、"後にしろ"なんて酷な話ではないか。
(絶対わざとだ！でなければ超タチ悪ぃ天然タラシだぜ！)
サンジがゾロの方を見ると、何も気にしていない風に酒を飲み、料理を平らげている。
「ん？さっさと食えよ。無くなるぞ」
「言われなくても食うさ！」
「.......何怒ってんだ？」
「い、いや別に怒ってねぇが.....」
「これ、旨ぇぞ.....」
サンジからは届かない場所にある料理の一品から、ゾロが切り分けてフォークで刺すと、サンジの方へ差し出した。そのままサンジの口へ近付けてくる。
(えええ....っと、もしかして食えって事なのか？)
「ほら、口開けろ」
「....」
かなり大きく開けないと入りそうにないサイズだ。仕方なくサンジは大口を開ける。そして無事に口の中へ料理の欠片が入ってきた。
「.......旨ぇな」
「だろ？」
「......」
満足そうにサンジが食べるのを見ているゾロ。
(コイツ.....恥ずかしいとか全く感じてねぇっ)
ここで照れたりしていては、どうやら身が持たないらしい事に気付く。この鈍感ノーデリカシーな男は、やはり何も考えていないのだ。そうだそうに違いない。
テーブルに出ていた物は全て二人の胃の中に収まった。
(じゃ、後は部屋でゆっくり....)
「コーヒーでも」「酒だな」
息はピッタリだが、考えはまるで似ていない。
片付けに来た従業員に、後で部屋にコーヒーセットと酒を運んでくれるよう頼むと、二人は部屋へ戻った。
「あんなに飲んだのに、また飲むのかよ」
「殆ど飲んでねぇ....あんなの飲んだウチに入らねぇ」
「程ほどにしとけよな」
「別に浴びるほど飲む訳じゃねぇ。ちゃんと味わってる」
「おめぇさ、人一倍傷を受けてんだからさ.....そこんとこも考えろ」
「しっかり食って寝てりゃ、傷なんて自然に治る」
「麻酔が効きにくいだろうが」
「痛みは我慢すりゃいい」
「おめぇ....もしかしてアレか....」
「あァ？」
(そうだ。凶悪な面して刀振り回してっから騙されてた。絶対ぇコイツ....マゾだ)
「我慢して済むならそれでいいだろ」
「じゃぁ酒も我慢しろ」
「そいつはできねぇ」
「痛いのを我慢するよりずっと楽だろ！」
「飲まねぇヤツには分からねぇ」
サンジにとっては、本当はどうでもよかった。ゾロは飲んでも酔わないし、性格も変わったりしない。そのまま寝てしまったり記憶が無くなるなどという事もない。誰にも迷惑はかかっていないのだ。
そこへドアノックの音に続き、従業員の声がした。
「失礼しまーす」
"お、酒がきたか？"と嬉しそうな顔になるゾロ。ワゴンに載せられている酒瓶が色とりどりで綺麗だった。サンジはコーヒーポットを下ろしながら少し寂しそうな声で言う。
「さてと....俺はコーヒー淹れるかな」
「俺のも淹れてくれ」
「ん？酒....じゃねぇのか？」
「おめぇのコーヒー、飲みてぇんだ」
「そ、そうかよ.....別にいいけど.....」
(クソっ....いちいち人が油断してるトコばっか狙ってんじゃねぇよ！)
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ゾロってこんなヤツだったかな...(汗)
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