〜小悪魔の館〜

オレンジの風に吹かれて


　〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***




悔しいんだか嬉しいんだか分からないまま、サンジは2人分の豆をドリッパに入れた。その間ゾロは、酒の種類を確認していた。珍しい品でも混じっていたのだろう。

「意外だな。目の前に酒が並んでるのに、コーヒーを選ぶとは」
「選んだんじゃねぇ。酒は後で飲む」
「ほら、熱いから気をつけろよ」

ゾロと二人っきりでコーヒーを飲むなど、考えも及ばない事だった。穏やかな表情でコーヒーをすするゾロを見ていると、サンジは何を話せばよいか分からなくなってきた。言葉も選ばなくてはいけないような気がしてきた。



しんと静まり返った中では、カップを置く音とコーヒーをすする音だけ。ゾロは落ち着き払った表情で、カップを下ろした。

「随分無口だな」
「そういう時もあるさ」
「とりたてて話す事もねぇからな....俺たちには」
「...........マリモ」
「ん？」
「そりゃ、普段から....別に共通の話題なんかねぇし、つるんだりしねぇし.....ルフィとかウソップとかの方が、話は色々できるんだろうけどよ.....俺と居たってつまんねぇかも知れねぇけど」
「何でアイツらの話が出てくる」
「そりゃ、おめぇ.....」
「そう言うおめぇこそ、ナミやロビンと話してる方が楽しいんじゃねぇのか？」
「.........それ言われると...」
「そもそも何で今、一緒にここに居る？」

ゾロの刺すような視線。サンジは負けじと見返した。

「買出しと情報集めに付き合えとは言われたが、宿まで一緒に取るとは聞いてねぇ」
「.....」
「俺は誰にも干渉されずに一人で居るのが気楽でいい」
「あぁ....」
「..........もうちょっと頭使いやがれ、このバカ」
「てめ......」

ついいつもの癖で、言い返しそうになったが、ゾロの言う事はもっともな話だった。

「コック」
「.....？」
「また、明日も淹れてくれ」
「......あぁ」
「本当は、おめぇのメシが食いてぇ」
「....マリモ」
「ま、船に戻ったら嫌でも食えるか」

(今日、絶対ぇコイツおかしいぞ....こんな事言うヤツじゃねぇ)

場所が変わって、気分も変わったからだろうか。どちらにせよ、自分では何も気付いてはいないようだ。

「.......？」
「......」
「.....アレ、何だ？」
「ん？」

サンジの視線の先には、二人の荷物が並べて置かれている。ゾロの持ってきたリュックが倒れて、ポケットの中の物が半分見えていた。そこに入れておくには何とも似つかわしくない形の物に見える。

サンジはそのリュックのある所まで見にいった。半分見えている物は手の平に載る程の小さな布の袋。紐で口を縛ってある。手の感触で、袋の中身は瓶のようだった。振ってみると、液体が揺れる音がした。

「あ、そう言えば....下船する時にナミが何か言ってたな」
「ナミさんが？」
「確か.....良かったら使ってとか言ってた」
「何に？」
「さぁ....メモ付けてるからって言われたような気もする」

ゾロはすっかりその存在を忘れていたのだ。そしてナミから言われた事にも特に関心が無かったのだ。

サンジはその小袋の口を緩めて広げてみた。液体の入った小瓶の傍に、小さな紙切れが畳んで入れてあった。その紙を広げてみると、ナミが書いたと思われる文字が並んでいた。

『リラックス効果のあるエッセンス』『熱いお湯に少し垂らして部屋に置いておいてもいいし、ろうそくで温めるのもいい』『お風呂に入れる時は、ぬるめにしてゆっくり浸かると効果的。熱めのお湯だと効果が出すぎるから注意』

何でナミはこんな小洒落たアイテムをゾロに渡したのだろうか？そうサンジは訝しく思いながら小瓶の蓋を取り、蓋の裏に少し付いた液体の匂いを確かめた。

「これは.......」

サンジのつい最近の記憶が呼び戻される。

「迂闊だった.......」



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(繰り返し)ゾロってこんなヤツだったかな...





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