〜小悪魔の館〜
オレンジの風に吹かれて
〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***
眠っていたのは、本当に短い時間だった。しかし寝過ごしてしまったかと思ったサンジは慌てて飛び起きた。時計を見て、あぁ、と安心する。
普段なら食事の準備に追われている時間だ。昨日今日と、その仕事をしていないせいで、身体が鈍ってきているような気がする。身体を伸ばしながら、サンジはまだ眠っているゾロの方を見た。
「コイツとこうして過ごせるのも今日だけか....」
また明日からは、騒々しい中でウルサイ連中との旅になる。次にまたこんな風に陸で過ごせるのは、いつになるのだろう。
「マリモ、そろそろ起きろ」
食事までに風呂済ませておこうぜ、と言い残してサンジはバスルームへと向かった。
＊＊＊＊＊＊＊＊
遅れてやってきたゾロの背中を流してやり、手早く入浴を済ませると、丁度夕食の時間になった。
今日の料理もどれも素晴らしく、二人はあっという間に平らげた。ピッチャーに入っていた酒も、ゾロが綺麗に飲んでしまっていた。
「まだ飲むんだろ？部屋に持ってきてもらうか？」
「いや、今夜はもう飲まねぇ」
「....へぇ、珍しい」
サンジの淹れたコーヒーが飲みたいのだと、ゾロは言った。昨日自分で言った事を、ちゃんと覚えていたのだ。勿論、言われた方のサンジも覚えている。サンジは少し弾んだ声で、コーヒーセットをオーダーすると、ゾロと部屋に戻った。
＊＊＊＊＊＊＊＊
熱いコーヒーを少しずつ飲みながら、会話が途絶えてしまった事に何となく居心地が悪くなっていた。そしてサンジは、どうにもゾロが自分の方を見ているような気がして仕方なかった。近くに座っているのだから、見ていても何ら不思議ではない。うまく説明できないが、何か言おうとして言わない、そんな気配がしているのだ。
(一体何を考えてんだ....黙り続けるの止めろよ)
(.........)
(も、もしかしてコイツ.....)
ゾロが動き出す様子がない。サンジはあれこれと想像を巡らせた。
もしかしたら、この後の事を考えているのではないだろうか。
(あぁ、絶対そうだ....今夜は俺がヤラれるんだ間違いない)
どうやって攻めてやろうか、どうやって啼かせてやろうか、どうやって.....
(うわぁぁっ....俺、どうなっちまうんだ....)
そもそも、よく考えてみろ.....コイツはゾロだぜ、あの海賊狩りのゾロ....魔獣と呼ばれた男だ。
(そんな男をよりによって俺は.....)
ちょっと怪しいクスリの効果に助けられたとは言え....あんなコトを。
(絶対仕返しされるに決まってる....このまま引き下がる筈ねぇ！)
サンジは恐る恐るゾロの方を見た。
ゾロと、目が合った。
(ひぃぃっ)
「.........」
ゾロは何も言わない。殆ど空になったカップを置きながら、じっとサンジの持つカップを見ている。
「なん.....だよ」
「いや、コーヒー冷めてるんじゃねぇかと」
「....あ、あぁ.....」
一口だけ飲んで、サンジもカップを置いた。
「どうした？」
「い、いや....何でもねぇ」
「早めに休んだらどうだ？」
「え？」
「また明日からは忙しいんだ。ゆっくりなんてできねぇだろ」
「....だから、それは大丈夫だって。忙しいのは昔から慣れてる」
素直に従わないサンジに、溜息をつきながらゾロはカップを片付け始めた。
どうやらゾロは、サンジをどうにかしてやろうとか、作戦を練っていたのではなかったようだ。
(マリモ....そんなんだから、てめェは.....)
俺みたいなヤツに惚れられるんだよ。
本当バカだな。
＊＊＊＊＊＊＊＊
ゾロの言う事にも一理ある。明日は早めに此処を出ないといけないから早めに寝よう、という事で二人は揃ってベッドに入った。
サンジはとりあえず目を閉じた。しかし時間が早過ぎるせいか、あるいは夕方に少し眠ったためか、全く眠くなる気配がない。ゾロは横になってすぐ、サンジより早く目を閉じ、そのままずっと静かだ。
せめて何か話でもできたらいいのに。
あーあ、と溜息をつきながらサンジは腕を伸ばした。ゾロの短い髪に少し指先が触れた。
もっと、触れたい。そう思ってしまうのは自然な事だった。
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不安はあるものの....
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