〜小悪魔の館〜

オレンジの風に吹かれて


　〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***




(俺を気遣ってくれたからな)

ゾロの好意を無駄にしたくない。その気持ちがサンジを思いとどまらせた。しかし、それはほんの数分で崩れた。

(髪にちょっと触るだけなら....)

手の甲で、少しだけ触れてみた。柔かい感触。途端サンジは後悔する。触った瞬間には手の平で撫でたい、顔にも触れたい、身体にも....という欲求が次々と湧き出てきた。

「あ.....」

サンジの髪がさらりと流れた。投げ出されたままだったゾロの手が、手櫛のように髪に触れていた。

「ったく芸のねぇヤツだな」
「...なんだよ」

ゾロが目を開けた。と言っても片目を開けているだけで、やはり眠そうだ。それでもサンジの動きは全て見切っていたようだった。

「早く休めって言っただろ」
「眠くならねぇんだよ.....それにちょっと退屈でさ」
「何だ、遊んで欲しかったのか」

サンジの髪を撫でる手が、耳、うなじ、そして肩へと下りてきた。

「マリモ....悪かったよ。お前は寝ててくれていい.....」

触りたかったのは、俺の方だ....とサンジはゾロの手を押し戻した。ゾロも簡単には引っ込めない。

「マリモ頼むっ....今夜はじっと寝ててくれ」
「何する気だ」
「.......ちょっと、その....触るだけだ」
「何だそれ」

サンジが理由を話すと、ゾロは真面目な顔で聞いていた。優しく、しかし少し咎めるような声で言った。

「そんなに俺に気を遣うな」
「でも.....な」
「思った事は、ちゃんと言え.....前にもそう言った筈だ」
「....あぁ、分かってる」
「そんなに眠くならなくて困ってんなら.....」
「ん？」
「軽く運動すっか？」

真面目な中にも、少し悪戯っぽい表情を浮かべたゾロの手が、サンジの頬に触れてきた。そしてサンジは無意識に、自分に触れている指に唇を寄せた。

「マリモ....」

やっぱり、このまま横で眠るだけなんて、できはしないのだ。そうサンジは思い知らされた。

(俺、明日から我慢できるかな)

すでにそんな心配までする始末。

「ほら、今夜はあんまり時間ねぇんだろ？」
「....そういうムードのねぇ事言うなよ」

ゾロの腕がサンジの身体に回されてきた。そしてすぐに唇が重なる。優しく、サンジを気遣うような。

(さっきはお前の事、ケダモノみてぇに思ってたの、訂正する....)

もう少し激しく求めてきたりする方が、コイツらしいけど....とサンジは思ってみたりもする。

(ん？それって俺の願望か？いや！違う！それは断じて....)

他の事に気を取られてる隙に、ゾロの舌が入ってきた。激しくはないが、何度も繰り返しサンジの口内を舐め、舌を吸ってくる。

(う.....気持ちイイ)

サンジの手にゾロの手が重なり、ふわりと握られた。大きくて厚くて、全てを包み込まれるような気がした。ゾロの唇が離れ、次は首筋に軽くキスをされた。

(うゎ....焦れってぇ)

ただ触れるだけのその行為は、どこか恐る恐るといった感じにも取れた。時々舌先が触れたりすれば、サンジの背中がぞくりとなった。

「マリモ....」
「ん？」
「おめぇこそ.....俺に気ぃ遣ってんじゃねぇよ」
「....？」
「ヤル気ねぇんだったら、俺がヤル」
「....！」

ゾロが少し目を細め、動きを止めた。

俺マズイ事言ったか？とサンジは少し慌てた。焦れったくてしょうがなかったので、ついあんな言い方をしてしまった。素直に"して欲しい事"を言えば良かったのか....と思った。

「痕、残るとヤバイだろうが」
「.....あ、あぁ」
「おめぇに、と言う訳じゃねぇが...」

気を遣ったのは、他のクルー達に。そういう意味らしかった。

「....あぁ」
「本当は、無茶苦茶に吸い付きてぇ」
「.....いや、それも困るけど....痛そうだし」
「だったらこれで我慢しろ....」
「見えねぇトコだったら、いくらでもしろ....好きなだけ」
「へぇ....いいのか？」
「う.....」

また迂闊な事を言ってしまったかも知れなかった。



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また、始まる。





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