〜小悪魔の館〜
オレンジの風に吹かれて
〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***
二人が振り返ると、ナミが仁王立ちで睨んでいた。
「ナミさんっ！」
「チッ.....」
言い合いも、それはそれで楽しいのだと、言いかけてゾロは言葉を呑み込んだ。サンジはきっとナミの前では否定するだろうし、ナミはどう受け止めるか知れたものではない。からかわれるのは間違いないだろうが。
「さ、荷物整理もあるし忙しいわよっ」
出航までの細々した事はナミが仕切る。そのうち配達の品も届くだろう。無事ナミのチェックが済めば、総出で運び込む。
そして気が付けばクルー達が揃っていた。
一段落着いて、甲板で座っているゾロの元へナミが近付く。
「あれ、どうだった？」
「アレ？」
「荷物に入れておいてあげたやつ」
「あぁ....アレな」
「使った？」
「あぁ。夜は使うの忘れてて...次の朝風呂に」
「朝？」
「コックが朝風呂には使うなって言ってたが、結局は」
「.....そう、朝にね」
「....朝の方が寧ろゆっくりできるから、俺はいいと思うんだがな」
「そうよね...私もそう思うわ」
「ちょっと頭がぼんやりするっちゅうか、眠くなるけどな」
「そう？良かった。リラックスできたみたいで」
質問した相手を間違えたか、とナミは思った。
(ま、一応使ったみたいだし...詳しくはサンジくんに訊けばいい事ね)
ナミは話題を変えた。
「ねぇ、もし....もしもの話だけど」
「ん？」
「借金の事とか全く別次元の話でね、私が告白してたら...ゾロ、付き合ってた？」
またこの女は突拍子もない事を言い出す。
「.......おめぇと？」
「そう、私と」
「.....うーん.....多分な......俺は」
少し真面目腐った顔でゾロが考える。同じく真面目に聞こうとするナミ。
「.....」
「付き合ってねぇな」
「どうして？」
「.....そりゃ、ナミ。おめぇは.....まぁイイ女だが.....」
「....」
「俺はそれ以上にイイ男だからな......釣り合わねぇだろうが？」
口の端を上げて、楽しそうに言うゾロ。一瞬驚いたような顔で、そしてすぐ溜息をつき笑いを堪えるような顔になるナミ。
「よく言うわね....でも、そうね」
「.....」
「ま、悪くはないけど.....」
「何だ？」
「早くチョッパーに作ってもらわなきゃね」
「何を作るって？」
「バカに付ける薬....？」
「何だとぉ...」
「あ、間違えた...."ダメに効く薬"ねっ？！」
「......ほざけ」
ナミはお腹を抱えて笑っている。涙も滲んできて、視界がぼやけてくる。
少し離れた所で、ウソップが不思議そうに見ている。
「ナミがゾロと喋ってあんなに笑ってる....一体何が起きたんだ？」
「あら、珍しい」
「いいっ？いつの間にっ？」
「本当だ....ナミがあんなに笑ってるのなんて...」
「あああーっ、これはこれは....しゃがんでるナミさんのスカートの中が...今にも...色は....ガフッ」
「てめー....どこ覗いてやがるっ....」
「ん？ロロノアと小娘って、あんな仲良かったっけ？」
「おーいおめーらーっ....何やってんだー楽しそうだなぁ....俺もまぜてくれっ」
「わわわ痛いじゃねーかっ....飛びつくなっ」
「ゾローっ、おめーらだけで遊んで、ずりーぞっ」
「....ったく」
「本当にもう、ルフィったら」
ここにも一人、薬を作ってやらなきゃ。ナミはさらに大きな溜息をついた。
(いや、効かないかもね？)
「本当に、早く作ってもらってよ。く、す、り」
「まだ言ってんのか」
「あ、今はそれどころじゃない？別の病にかかってるんだもんね」
「あァ？」
「あんたの事は、サンジくんに譲るわ......超特価で」
「....あのなぁ.....」
「....ああ出てきたわね」
「ん？」
ナミが見上げた先の帆が、風を受けているのが分かる。
「予定通り、出航よ」
「あぁ」
ナミが動き出すと、他のクルー達もめいめい位置につく。
ゾロがゆっくり歩いていった先には、サンジが髪を揺らしながら立っていた。風が強くなってきたのが分かり、取り出した煙草を元の場所に戻している。
この数日間で二人の間の空気はかなり変わってしまったかも知れない。でも周囲は何も変わらない。いつもと同じサニー号の面々。
そして。
「俺もおめぇも、何も変わらねぇ」
呟いたその言葉は、風にかき消されていく。
「出航ーーーっ！！」
船長の掛け声の後、船はゆっくりと滑り出した。
これからも、ずっとこの先も
何も、変わらない。
この先に広がる、海の色のように。
fin.
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最後までお読み下さいまして、ありがとうございました。今回ほど注意書きの多い作品は無かったかも知れません。
オールキャラを目指してましたが、手が回りませんでした。また色々と勉強したいと思います。
2010.02.14 杏 拝
■今回も懲りずに蛇足と言う名のオマケ有り。台無しを恐れない人はどうぞ(笑)
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