青い薔薇　前編

*****30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい*****



洗い髪をタオルで拭きながら、二人してリビングへ戻ってきた。何だか「一緒に暮らしてる」雰囲気が漂ってるような気がしてサンジは嬉しくなる。

(いっそ、ホントに一緒に暮らしてみてもいいんじゃないか...)

サンジは本気でそう思い始めていた。でも、それにはまだまだ越えないといけないハードルがあった。こうも、事あるごとにドキドキしていたら、まともな生活が送れない。さっきも、一緒にシャワーを使うだけで変に意識してしまった。まずはここをクリアしなければ。

そんなことを考えている矢先、朝日を受けて窓際に立つゾロが目に入った。横顔が綺麗で、仄かで妖しい色気があった。サンジは思わず見とれてしまっていた。

(この横顔を独り占めできたら...)

店の客だってゾロの横顔を見ているだろう。でも、今のこの綺麗な横顔を知っているのは自分だけだ、と確信したサンジは、おかしいくらい自信過剰になっていた。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

テーブルに並んだ料理を楽しみ酒を飲み、サンジにとって至福の時間が流れていった。

いつもより多く飲んでしまったのだろうか？それとも体調がいいのだろうか？あるいは気分が盛り上がってるからだろうか。サンジはまるで雲の上に寝そべっているような感覚でいた。そのうち頭が少しだけ冴えてきて、いつの間にかソファでそのまま眠ってしまっていたらしいことに気が付いた。サンジがそっと頭を上げるとすぐ横にゾロの寝顔があった。

(何て無邪気で無防備な顔してるんだ)

ゾロのこんな顔を見たのは、恐らく初めてのことだっただろう。サンジはそっと、ゾロの柔らかい髪を撫でた。そして顎のラインをなぞり、唇に到達した。

「いい....よな？」

その返事を待つまでもなく、そして当然返事などあるはずもないが。

気がついたらサンジはゾロにキスしていた。3秒ほどそのままでいると、ゾロは眉間に皺を寄せ、薄目を開けた。

「おはよ、ゾロ」

何事もなかったかのようにサンジは微笑んだ。そうこれは普通のことなんだと自分に言い聞かせながら。

「あれ、今...俺に何かしてなかったか？」
「何かって？」
「...」
「これのこと？」

そう言うと、サンジは再びゾロに顔を近づけ唇を合わせた。余りに自然な仕草だったので、ゾロは身動きできなかった。それをいいことにサンジは唇を離そうともせず、さらに口付けを深くしていった。

ゾロは抵抗していなかった。サンジがそっとゾロの手を握ると、ゾロは目を閉じた。その微かに震える瞼を見たサンジは、もう思いを留めておくことができなくなった。

（これ以上は....あまり急ぐのはマズイ。ゆっくり進みたいんだ。まだ俺はゾロのこと何も知らない）

不意にゾロが体を離した。実に面倒臭そうな表情をしている。

「一体いつまでこうしているんだ」
「ご....ごめん。離れがたくて」

サンジは思わず本音を言ってしまった。

「ずっとこの姿勢でいると首が痛くなっちまう」

(何だ、気にしていたのはそっちの話だったのか)

サンジはほっとした。ゾロは怒ったわけではないらしい。濡れてちょっと光っているゾロの唇が艶かしかった。サンジが視線を外せずにいると、ゾロはその唇をゆっくりと舐めた。多分無意識に。
誘ってるのか？と疑いたくなるほどの妖艶さ。自覚のない色気ほど怖いものはない。サンジの胸の鼓動が少し早まる。

(...もうそろそろ我慢できなくなりそうだ、俺。それもこれも、お前が悪いんだからな....)

人のせいにでもしなければ、やってられなかった。

サンジの心臓の音がゾロの耳にも届いてるんじゃないかと思うほど、どくどくと高鳴っている。サンジは再びゾロの方へ体を寄せた。さして警戒する風もなく、ソファに体を投げ出しているゾロ。ちょっと気だるそうにも見えるその横顔は、サンジの情欲をさらにかき立てた。

サンジが唇をそっとゾロの耳朶につけただけで、ゾロの体がほんの僅かだがぴくりと動いたのがわかった。サンジはもう思考もうまく働かなくて、呼吸もままならなくて、うまく息を吐けなくて、苦しくてたまらなかった。それでも構わずに、唇をゾロの首筋へと滑らせていった。

「う....」

ゾロの唇の隙間から、聞き逃しそうなほどの小さい声が漏れた。サンジの唇は、ゾロの首筋から鎖骨へと移動した。その間、まだ仕事を与えられてなかったサンジの手は、ゾロのシャツの裾から侵入していく。再びゾロの体が小さく跳ねた。

滑らかな肌。そのシャツの裾を捲り上げ、今度は胸の辺りを唇で愛撫する。ゾロの心臓の音も、サンジと同じくらいに高鳴っているようだ。

すぐ目の前にある胸の小さな突起が、サンジを誘惑する。引き寄せられるように、そっとその部分に指先で触れてみた。ゾロの体に緊張が走ったかに見えた。突起の周囲をさらに指の腹で撫でてみる。さっきより硬さを増した先端部分に、今度は舌先で触れてみた。できるだけ軽く優しく。


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