すり抜ける風


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「とにかく、兄弟なんだから、一緒に寝ればいいだろ」
「もう何べんも一緒に寝てるよ！ガキんときから！今さらいいんだよ！」

ゾロは頭をぼりぼり掻いて、どうしたものかという顔をした。サンジが助け舟を出した。

「俺さ...普段一緒に寝ないヤツが一緒だと、落ち着かなくてさ、寝付けないんだよ。だからさ、ルフィ、兄貴と寝てくれねぇかな？」
「.......ヤダなぁ....でも、エースが俺と寝たいって言えば、そうするよ」
「はぁ....そうか。まぁ後はエース頼みってわけだな」

エースがこの状況で、弟を選ぶ可能性は殆ど無いに等しい。それを理解していないだろうルフィ。ひきつる顔のサンジと、感情を押し殺しながらも気が気でないゾロ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊

真夜中であることを気遣って、エースはベルを押す代わりに、到着の数分前にサンジの携帯にメールを送ってきた。やがてエースがやってくると、ルフィの顔が輝いた。

「お、ルフィ。迷惑かけてんじゃねぇだろうな？」
「おう！大丈夫だ....多分な」
「サンジもゾロも、すまねぇな。兄弟揃って世話かけちまってよ」
「まぁ....たまにはいいっすよ」

何も言わずフッと笑ったゾロに、エースは話しかけた。

「ゾロ....随分前から、弟のこと世話してくれてたんだってな？」
「いや....別にそれは」
「シャンクスからも色々聞いたよ。コイツも普段会わねぇから細かいこと全然知らなくてよ。俺からも礼を言う」
「いいっすよ。あの時だって仕事でしたことだし」
「弟がこれほど懐くなんて、珍しいことなんだ。オヤジの顔も知らねぇし、俺やシャンクスと一緒に居たのはガキん時だけだったし....頼れるのはゾロだけだからさ」

そんな大役を任されてもなぁ....とゾロは困惑する。

「いやぁ、別に弟の世話を頼むってわけじゃねぇよ。でも何かあった時は、頼むよ」
「まぁ、出来る範囲で....」

エースに真正面から顔を見られて話されては、断ることもできない。全く、兄弟揃って人タラシもいいとこだ。

「ところでさ...今この状況で言うのも何だけど、俺、"二度と来るな"って言われたような気がすんだけど....もう解除されたのかな？」
「えっ....あーそれね....まぁ今日は事情が事情だし....忘れたことにしとくよ...な、ゾロ？」
「ん？そんなこと言ったっけな？」
「ははっ....ゾロは本当、大らかな性格だなぁ....また惚れそうだわ俺」
「......今日は兄貴らしく振舞って下さいよ？」
「おー怖い怖い....ここの主の仰せのままに致します」

エースはおどけた風な格好で、二カッと笑った。鼻に入る皺の感じがルフィと似てるな、とサンジは思った。


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