すり抜ける風


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二人の邪魔をするなど野暮な所業とは思うが、一度手に入れたいと思った相手を、簡単に諦められないというのも、エースの正直な思いだった。

「サンジ」

不意打ちで名前を呼ばれ、心臓が跳ね上がる。サンジは平静を装ってエースの方に視線をやる。

すぐそばにあるエースの顔。サンジが次の台詞を何となく待っていると、一瞬にして唇を奪われた。

よくよく考えれば、エースとは初めてだった。唇が離れてから、そのことに気が付いた。そんな反応にエースも焦れてくる。

「今日は...ちゃんと抱かせてくれ」

エースは直球勝負に出た。

「ちょ....！何を涼しい顔でサラッと言って....」

サンジは慌てて反論したが、最後までは言わせてもらえなかった。強く熱く、唇を吸われている。

(絶対駄目だ....)

「本当に片意地なヤツだな....」

なかなか舌の侵入を許さないサンジに、エースは苛立つ。それでも無理強いはせず、唇とその合わせ目を舌先で何度もなぞった。サンジはむず痒さを感じた。サンジの髪を撫でるエースの手をどけ、手首を掴んで抗議の意を示した。

「無言の抵抗が、一番堪えるよ」
「............」
「まぁ、いい。黙って聞いててくれ」

エースはサンジの頬に息が僅かにかかる距離で話し始めた。

「お前さ、俺が元々ゾロ狙いとか思ってるんじゃねぇ？」

え？違うのか？とサンジは思ったのか、少し表情が変わった。エースは構わず続けた。

「こないだの時からさ、俺、サンジのこと忘れられねぇんだ」

語尾のあたりは、切なくなるほどの息の混じった声。エースの唇がサンジの頬に付けられる。

「早い話、惚れた」

唇のすぐ近くに、まるで恋人からされるような優しいキス。次の瞬間、エースの舌がサンジの唇をなぞった。その舌をサンジの舌が追いかける。

追いかけて、逆に捕まる。

表も裏も何度も舐められ、甘噛みされ、優しくそして強く吸われた。エースの手首を掴んだサンジの手には、もう殆ど力が入っていない。

「こんなに時間のかかったヤツは初めてだ」

＊＊＊＊＊＊＊＊＊

「なー...ゾロ？」
「ぐがー」
「ゾロ～」
「....んんっ、何だ？もう朝か？」
「なー、ゾロ」
「何だよ」
「エースってさ...ゾロのこと好きみたいなんだ」
「へっ？」

すぐさまルフィはゾロの口に手を当てた。もう一方の手の指を自分の唇に当て、静かにするよう合図する。

「でもさ、サンジが恋人なんだって分かって、それと俺もゾロ好きだって言ったらさ...」
「おめぇは兄貴とそういう話すんのか」
「じゃ、譲るからゾロをモノにしろって」

片眉を上げて叫びそうになるゾロの口を手で押さえっぱなしにして、ルフィは「ししっ」と笑う。


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