すり抜ける風


　〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***



何をそんなに怒ってるんだ？という表情のゾロ。確かに、ここまで声を張り上げて怒らなくても、とサンジも思ったが、どうにも感情を抑えられなかった。

今までに感じたことのない、嫉妬なのだろうか。それもゾロに対して、のような気がする。否、そんな筈はないのに。サンジはまとまらない自分の考えに、イラついてきた。

「どーしたぁ？サンジ」

サンジの声を聞いて、ルフィが心配してやってきた。

「あれー？何でエースがそっちで寝てんだ？」
「おー、ルフィ」
「ゾロ？何で、上脱いでんだ？」
「あ....？」

つかつかとルフィがベッドに向かって歩いてきた。ゾロの首や胸の辺りに顔を近づけ、くんくんと鼻を動かしている。

「....さっきと違う」
「何？」
「.....エースのニオイ」
「そりゃ、今並んでたからな」
「そんなことぐれぇで、移らねぇよ....俺だって分かるよ」

ルフィが視線を落としたシーツの上。あ、と小さく叫んで一点を見つめ、そこから何かを摘み上げた。

「コレ....エースのだよな？」

ルフィの指先から見えているのは、髪の毛にしては太く、黒くて艶のある縮れた毛。

「俺の？違うだろ。お前のじゃねぇのか？」

ここは知らんフリをしておくしかない、とエースは思った。しかしルフィは引き下がらない。

「絶対エースのだ」
「お前のだ」
「違う....」

ルフィは自分のハーフパンツと下着を一緒に少し下げ、臍の下辺りをエースに見せた。エースはそちらへ目をやり、少し目を細めた。サンジは口をあんぐり開け首を傾げながら、その不思議な行動を眺めていた。

「あぁ....そうか。なるほどな」
「....分かっただろ？」
「分かった....」

エースはお手上げです、という表情で少し笑ってルフィを見た。

「エース....何でだよ....」
「...？」
「俺に....譲るって言ったじゃねぇか....」
「譲るとは言ってねぇ。譲れってお前が言うから...頑張れって言ったんだ」
「俺はゾロが好きなんだ！」
「知ってる」
「ゾロは一緒に寝てくれたし」
「あぁ」
「好きだって言ってくれたし....頭も撫でてくれたし、ちゅうもいっぱいしてくれたし！それに、それに....」
「おい...ルフィ」
「手とか口とかで、すげェ気持ちいいコト....」
「ルフィ！いい加減にしねぇか！！」
「るせー！エースのバカ！」
「兄貴に向かってバカとは何だ！」
「バカだからバカって言って何が悪ぃんだよ！バカ兄貴！」
「...おい、全くおめぇは....」

サンジは黙って聞いている。何も言わないのが不気味だった。


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