Ｄｅｂｕｔ


　〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***




翌朝、同じカフェで。


「いらっしゃいませ....お一人様で...」
「おはよう...」
「おはようございます。お席にご案内します」

テーブルに着くと、ナミはモーニングセットを注文した。

「お飲み物は？」
「ミルクティで」
「ホット･ミルクティですね。はい....では少々....」

ウェイターがテーブルに伝票を置いた瞬間を狙うように、ナミが小さく畳んだメモを手渡した。

「.....？」
「やっぱりアイスにして下さい....後でそれ...読んで下さい」
「.....アイス....ミルクティですね、かしこまりました」

彼はそのメモを握り、ナミの方をちらりと見やると、何か言おうとしたが結局言わずに立ち去った。一瞬だが、動揺している風に見えた。






社長室では、ロビンが腕組をし、ゆっくりと歩いている。

「どうしたものかしら......」

人気絶頂のモデル兼女優のビビが、突然辞めたいと言ってきた。まだまだやってくれるものと思っていたが、実家から急に戻るように言われたらしい。彼女は大財閥の令嬢で、恐らく後継者か相続か、あるいは結婚の問題でもからんでいるのだろう。

スキャンダルは何一つ無いよう、大切に育ててきた。ここで手放すのは惜しい。しかし、相手が悪い。ギャラを上げるからとか、そういう話は通じない。ここはきっぱり諦めて、次の策を考えるのが賢いだろう。

タイプの似た子をスターにまで育てるという手もあるが、戦略も必要だし、経費はともかく時間がかかり過ぎる。似ていなくてもいい、何かこう、インパクトのある魅力的な子が居れば.....。お嬢様タイプでなくても、むしろ悪そうな感じでもいい。

「..........」

部屋の端まで歩き、折り返してまた、デスクの近くにまで戻ってきた。

「そうだわ」

ロビンは立ち止まり、ずっとさっきから無表情でデスクの端に腰をかけているゾロの方を見た。

「ナミは....どうかしら？」
「......」
「たまに現場でね、モデルと間違われたりするのよ」
「へぇ」
「ハキハキしてるし、度胸はあるし、頭もいいし、あのルックスだし....」
「俺は、よく分かりませんが」
「男のあなたから見てどう？って訊きたいのだけど.....魅力無いかしら？」
「他の男はどうか知りませんが、俺は特に何とも思いません」
「.....本当に色気の無い人ねぇ」
「必要ありませんから」
「ま、そのお陰で私も助かってるんだけど」
「どういう事ですか？」
「早い話が、お金とか女性を使って情報聞き出したり、引き抜いたり、なんてのが通用しないって事よ」
「金ならここで充分な額を貰ってる。女は....見ず知らずなヤツに手を出すほど不自由してない」
「毎日遅い時間に私を家まで送り届けて、お休みもあんまり取れてないでしょう？彼女と会う時間なんてないんじゃない？」
「彼女....そういうのも必要ないですから」

不自由してないと言いながら、彼女は要らないと。ロビンはどうしてもそこを突っ込みたくなった。

特定の女性は居ないが、いつも誰かが居るという事なのだろうか。それとも、それすら面倒臭いのだろうか。この男ならモテないと言う事はないだろう。ただナンパとかしそうな感じでもない。
もしかして、いや、あまり考えたくないが、"生身の女性"が苦手なのだろうか。あるいはただ単に淡白なのか、硬派なのか。

「ま、必要になったら、いつでもできるわよ....あなたなら」
「はぁ...」
「だって、素敵だもの....」

ロビンはゾロに近付き、彼の顎の下に人差し指を添えた。

「もうちょっと愛想が良かったら.....タレントとして仕事取れるのに」
「冗談はやめて下さい」
「カタログ用のモデルだったら、軽く笑ってさえすれば、黙っててもOKだから...一度やってみる？」
「俺の仕事は社長を守る事です.....」
「......その律儀さが、あなたの最大の魅力ね」
「そういう契約です。俺はそれを遂行するだけ....」
「若いのに頑固ね」
「年は関係無いでしょう」

話がどんどん逸れてしまった事に、ロビンは気付いた。



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ゾロがいっぱい喋ってます。しかも敬語(笑)....





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