Ｄｅｂｕｔ

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「何か予定でも？」
「いや、問題無ぇよ」
「じゃ、終わったら秘書課に来てくれる？」
「中には入らねぇぞ....もう俺はあっちの人間じゃねぇからな」
「あら？そういうとこ、厳しいって言うか....律儀って言うか....」
「それでいいか？」
「ええ。あ、そうだゾロ....携帯の番号、まだ訊いてなかったわ」
「あぁ、俺も訊くの忘れてた」

二人は番号を交換した。登録ボタンを押し、ナミが携帯をしまおうとしたその時。

♪♪...

「あ、じゃ、また後でね、ゾロ......はい、もしもし？」

ナミが話しながら小走りで遠ざかっていく。ゾロは、その電話の相手は直感で男だと分かった。


＊＊＊＊


ゾロが秘書課へ向かう途中、ナミが歩いてきた。

「こっちはもう終わったから....行きましょう！」
「おう」

ナミがまた携帯で話している。

「あ、もしもし？ナミです....ええ、元気よ......うん......3人なんだけど......そう？良かった、じゃ、よろしくね」

通話が終わるとすぐに今度はゾロへ話しかける。

「私の馴染みのお店、予約しといたから....」
「そうか....メシも食えるとこか？」
「ええ、メニューに無くても、言えば何でも作ってくれるわよ」
「ほう...そりゃぁいい」

会社を出て、しばらく歩いていく。その間、ナミは器用に携帯のメールを打っている。

「もう一人、待ち合わせしてるから」
「もう一人？」
「会えば分かるわ」



「あ、居た」

ナミの足が速まり、その向かう先には本屋があった。そしてそのまま店の中へ突っ切っていった。ゾロは中へ入らず、外で待つことにした。それから1分と経たないうちに、ナミは出てきた。彼女のすぐ後に続いて出てきたのは、どこかで見たような若い男。

「こちらはゾロ...今日から私のマネージャーになったの。前は社長秘書だったのよ..そしてこちらはサンジくん....」

「どうも」
「どうも....」

二人は短く挨拶を交わした。

「じゃぁ、話の続きは、また後で飲みながらゆっくりね」とナミは、先頭を切って歩き出した。







「あら、いらっしゃい」
「こんばんわー」
「あら、ナミちゃん....今日はいい男二人も連れて....」
「美味しいもの、お願いね...お任せで」

ナミは、『嫌いな物、ないわよね？』と男二人に向かって確認した。幸い、二人とも食べ物の好き嫌いは無いらしい。

「私、いつもここに来ると、この端っこの席に座るんだけど....」

ナミはカウンターの隅の席を指差して言った。

「三人だと話しにくいから、今日は奥のテーブル席に」

ゾロ、ナミ、サンジは適当な間隔を空けて、互いに顔がよく見える位置に座った。程なくして、おしぼりとグラスと瓶ビールが運ばれてきた。

「じゃ、最初だけコレで....次からは自分の好きな物にしましょう」

ナミがサンジのグラスにビールを注ぐと、同じようにサンジもナミの分を注いだ。ゾロは自分で自分の分を注ぐ。

「ゾロ、私が注いであげるのに」
「いや、構うな....」

こんな小さいグラスで飲む事でさえ面倒臭いのに、他人から注いでもらうのは、もっと面倒だ。どちらかと言えば、ゾロは大きなジョッキから、ぐいぐいと飲む方が好きだった。

「じゃ、まずは....お疲れ様！」

目的がよく分からないまま、ナミの掛け声で飲み会が始まった。







運ばれてくる料理はなかなかの物だった。

「あ、そう言えば、サンジくんはお料理得意だったのよね？」
「うん？....あぁ、趣味の範疇だけどね」
「さっきも本屋さんで、お料理の本色々見てたじゃない？」
「あぁ、あれは....ウチにあるレシピ本の料理、全部作っちまったから....。何か新しい料理作るヒント無いかなと思ってね」
「一度食べてみたいわ...サンジくんの作ったお料理」
「喜んで！ナミさんの好きな物、作りますよ」

ナミとサンジの会話が弾む中、ゾロは黙々と食べたり飲んだりしている。

「もう、ゾロったら！ちょっとは何か言いなさいよ！」
「......ん？何を？」

まだ話したい事があるからと、誘ってきたのはナミだった。そのナミがサンジとばかり話しているのだから、ゾロは聞いているほかなかった。

「まぁまぁ、ナミさん....ま、俺の話はこれくらいで置いといて....」
「....そうね」
「それにさ.....俺、そもそもこの場に居ていいのかな？部外者なのに」
「あら、部外者って事はないわよ？」

ゾロがずっと先ほどから、"詳しく話せ"という顔をしている。

「ゾロも気付いてるとは思うけど」

あの朝食会議のあったカフェで、サンジを見出したロビンの話から始まって、ナミがサンジとコンタクトを取り、スカウトをしようとした経緯を話した。

「サンジくんも、忙しい人だから....ついこの間、やっと時間を合わせることができたのよ」
「あ...本当ごめんね...俺にばっかり合わせてもらっちゃって」
「で、今日はお店が早番だって聞いてたから、思い切って誘っちゃったの...急でごめんなさいね？」
「いやぁ....ナミさんのお誘いなら喜んで」

さして面白くもない話を聞きながら、ゾロは空になったボトルをテーブルの隅に追いやり、グラスに残った酒をあおった。



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やっと、合流。





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