Ｄｅｂｕｔ
〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***
「あ、あのさ.....」
「......」
「こんな機会も滅多にないだろうから、訊いてみるんだけどさ」
「.....」
「何で、どういういきさつで、今の仕事やってんの？」
「......うん.....」
「.....俺、変なコト訊いた？」
「いや、そうじゃねぇが」
「？」
「.....社長に誘われてな」
「へぇ？ヘッドハンティング？」
「.....そんなカッコいいもんじゃねぇけど」
ゾロが一瞬遠い目をしたように感じた。サンジは前を見ながらだったが、ゾロの表情がよく分かった。
「前の職場の先輩がな、客の女と...仕事の上では普通の事なんだが、色々あってな...それがその女ってのが、ヤバイ輩の妹で」
「何だか物騒な話だな」
「落とし前つけに行くって言うから、俺、気になって....先輩の残したメモを持って、追いかけた」
「......何か、展開が読めそうな気がしてきた」
「それがな、同じ道が何回も出てきてよ....一体何の呪いだってんだ」
「呪いとか信じるのか？」
「呪ってやりてぇヤツもいねぇし、人からそんな事される覚えもねぇ.....勿論信じてねぇけどな」
「うん、それで？」
「また同じ道だ、って思った時に....すぐ傍にあった店から女が出てきて、イキナリ話しかけられた」
「.....女？それって、社長？」
「あぁ.....俺が握ってた、くしゃくしゃのメモを見ながら、笑いかけてきた」
「.....助けてくれたのか？」
「.....どこへ行こうとしてるのかって、訊かれた」
「ふーん」
きっと、"迷子オーラ"出しまくりだったのだろう。とても見過ごせなかったに違いない。
「メモを見て、少し表情が険しくなってなぁ....」
ゾロは薄っすらと笑いながら続けた。
「その場所、マジ、ヤバイ何とか事務所だったらしい」
「.....で、行ったのか？」
「素人が一人で行くなんて危険だって.....でも先輩が戻ってこねぇんだから、行くしかねぇって思った」
「.......」
ゾロが淡々と語るのに対し、サンジは興味津々だった。ゾロの話によれば、ロビンがその危険だという場所の近くまで案内してくれたらしい。そして、その先輩もその後無事に戻ってきたという。
「良かったじゃねぇか」
「あぁ....」
「？」
「.....でも、おかしいだろ？ヤバイ所だって言うのに....」
それは、サンジも薄々気が付いていた。
「社長は、そっち方面にも顔が利く、とかじゃねぇの？」
「....おめぇもそう思うか？」
「それ以外思いつかねぇし」
「......」
できれば、そういう類の繋がりは無い事を願っていた。暴漢に襲われた時も、事件にせず闇に葬ってしまったのも、やはりそういう事だったのだろう。ゾロは、今さらながら、ロビンの行動や言動を色々と思い返していた。
この先も危険と隣り合わせである事には変わりはない。ゾロは、やはり自分がロビンの傍から離れてしまったのは、間違いだったのでは、と思った。
「......で、どうなった？」
ゾロとロビンの出会いの状況は分かったが、その後がまだだ。
「とにかく、礼をさせてくれと言った」
先輩を無事救出し、自分も無事だった。何もしないで立ち去るなんて到底できないとゾロは思った。
しかしロビンは、先輩が心配だからという理由で、自分の身の危険も顧みず、乗り込もうとしたゾロに興味を持った。慌てずうろたえず、落ち着き払っていて、尚且つ大胆な行動を取る、その男に。
"私の傍で働いてくれないかしら？" それがロビンの要求だった。
ちょうど、その時働いていた店を辞めようとしていた時期だったのも、いいタイミングだったかも知れない。ゾロはロビンから渡された連絡先に、その日のうちに電話をかけて、承諾の意を伝えた。
「そういうの、あんまり深く考えない方なんだな？」
「.....悩むって事は、やめておく方がいい時が多い」
「即決即断か」
「あぁ」
「いいな、男らしくって」
会社に着くと、ゾロの携帯が鳴った。
「....はい」
『ゾロ、着いて早々で悪いけど、すぐ来て...二人でね』
「分かりました」
そのまま社長室へ直行した。
「失礼します」
「どうぞ」
二人が中へ入ると、ロビンが近付いてきた。
「大変だったわね」
「心配かけました」
「大事に至らなくて、良かったわ」
「すいません、ゾロは俺を守ろうとして....」
「お前のせいじゃない」
「....あなたも、無事で本当に良かったわ」
「はい....」
「二人とも、お昼まだでしょ？」
ロビンが少し重そうな紙袋を出してきた。有名店の名前が入っている。袋の中にあるのは、高級そうな箱に入った弁当だった。
「そこのテーブル使っていいから、一緒に食べていきなさい」
そう言えば、もう昼時だ。
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まだまだ知りたい事がいっぱい....
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