Ｄｅｂｕｔ
〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***
「.......」
「気持ちいい......」
「おい、もう止めろ.....」
「もっと硬いかと思ってた.....」
「この酔っ払いが」
ゾロにもたれかかったサンジは、ゾロの頭に手をのせ、わしゃわしゃとかき混ぜている。どうやら手触りが気に入ってしまったらしい。短くすっきりと切られた髪は、見た目では、もっと手にちくちく刺さるものと思っていたが、そうでもなかった。
「初めて見た時、変わった色だなって思ってた」
「よく言われる」
「でも、不思議と何か落ち着くな....いいもんだな緑ってのも」
「分かったから、もう.....」
「短いと、手入れも楽だろ？」
「さぁ、伸ばした事ねぇから、分かんねぇが」
ゾロは自分の頭から、サンジの手を引き剥がした。しかしサンジは懲りもせず、またゾロの頭に手をやろうとした。
「ほら、バカの一つ覚えみてぇに....いい加減にしろ」
ゾロがサンジの手首を掴んだ。その途端、バランスをを崩したサンジがゾロの胸に崩れ落ちた。
「んん.....ここも落ち着くなぁ....広くて」
「おいっ.....もういいだろ！離れろ.....」
「嫌だね」
ゾロが必死の思いで何とかサンジの頭を持ち上げると、サンジは人懐っこそうな笑顔でゾロを見上げる。
「何だ...コイツ女好きかと思ってたのに、実は男もなのか？...って顔してんな」
「....違うのか？」
「女の子は別に嫌いじゃねぇよ....どっちかっつーと好きだけど」
「.....」
「でも男も好きって訳じゃねぇ....」
(うーん、何て説明したらいいんだ？)
「そうやって、表情一つ変えねぇで、取り澄ましてる野郎見てっと...何つーか....」
「.....？」
「どうにかして....って、思ったりしてな」
「......どうにかって、何をどうするんだ？」
何だかサンジのペースに持っていかれそうな気がして、ゾロは懸命に硬い表情を作った。しかし目元には、いつもの無表情な冷たさは無かった。
サンジはすぐ目の前にあるゾロの手を見た。遠くからでは分からない、無数の小さな傷があった。今日また新しい傷が、たくさん付いたに違いない。
その手を、サンジはそっと撫でた。
そして、ゾロの表情がさっと変わった。
内面から滲み出る、微かな凄みと冷徹な気配に、サンジは息を呑む。
ゾロが、ゆっくりと息を吸い、そしてゆっくりと吐いた。色んな事を思い出し、そして整理する。半分息の混じった低めの声で話し始めた。
「あの時、アイツらに襲われた時、お前が怪我でもさせられてたら、俺はアイツら全員、ボコッてたかも知れねぇ」
「おいおい....向こうも殺すまではしねぇだろう...そこまでやったら過剰防衛になる」
「向こうの人数からして、そりゃ無理だろ....加減してたらヤラれる」
その、まだ硬い表情のまま、ゾロはサンジの身体に手を回した。
無事で良かった、とその身体を抱き締めた。
(何〜？何かすげぇ自然に.....これって普通なのか？)
「これからも俺が全力で守る」
それは勿論、マネージャーとして、なんだろう？...サンジはそう確認しようとしたが止めた。
「いいよ...そこまでして守ってもらう程の値打ちなんざねぇから」
「俺は自分の職務を....」
「さっきの見ただろ？俺だって結構強いぜ？」
強いのが分かれば、次はもっとヤバイのを仕向けてくる....
(それに、何だよ。二言目には"職務"ばっかりだ)
「違うだろ？こんなのが傍についてるから、アッチも必死になるんだろ」
「だったら対抗するだけだ」
(それで社長がヤバイと気付いて、おめぇを切ったんだろうが)
ほんと、不器用なヤツだな、とサンジは思った。そしてゾロの顔をしっかりと見つめながら言った。
「俺も、お前の事守るよ」
「はぁ？何でだ....俺が」
「おめぇだって、俺のファンからしたら邪魔なんだよ....分かるだろ？」
俺は強いんだ。だから、もっと力抜いてたらいい。
今までの半分の力で俺を守れ。そして、残りの力で自分を守れ。
今度はサンジから抱き締めた。
しかしその身体はサンジの腕の中には到底収まらない。
(やっぱりコイツ....着痩せするんだな)
スーツ姿の時のゾロの身体は細く見えるが、今目の前にいる彼は、そうではない。腕を回してみれば胸板は厚く、上腕もがっちりと硬い。それぞれのパーツが完璧なまでに鍛え上げられていて、サンジは少し気後れするほどだった。
抱き締めているようで、結果抱きついている格好になる。サンジはだんだん情けなくなってきた。
「俺....ヤバイ....だいぶ酔いが回ってきたかも」
「大丈夫か？横になるか？」
「いや.....それより....」
「ん？」
「俺を離すなよ」
BACK←← →→NEXT
惹かれあう....
Parallel MENU
NOVEL MENU
TOP