Ｄｅｂｕｔ
〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***
サンジの手がゾロの頭に添えられた。唇を離し、サンジは殆ど息だけの声で言った。
「もう一つ謝らねぇと.....俺」
「.....？」
「お前の事....好きだ」
「......っ」
「ま、信じろとは言わねぇけど」
「何で.....」
「......ん？」
「......謝る必要がある？」
「何でって....そりゃぁ.....俺が」
「.......」
「俺が勝手に好きになって、お前は普通に迷惑だろうが」
「....それはコッチが決める事だろ」
「ん？」
「俺の考えまで、お前が勝手に決めんな」
「........え？何だよそれ.....ゾロ？」
再び二人の顔が接近した。唇同士が微かに触れ、すぐにゾロは離れていく。ゾロの息が乱れている。
「....明日までもつか？」
「.....え？何が？」
「お前が買い過ぎたって言う、食材とかだ」
「......まぁ、まだ二日程度なら大丈夫とは思うけど」
「....そうか」
「....？」
「明日と明後日は....8時半だ。その後現地直行だからな」
「ゾロ....」
(それよりさっきの言葉、どういう意味なんだよ？)
「しっかり寝とけよ」
「.....お前もな」
ゾロが外したばかりのシートベルトを再び装着した。サンジは何も言わずに車を降りた。
ドアの閉まる音が、頭の中心にまで響いてくる気がした。
＊＊＊＊
翌日、時間通りにゾロは迎えに来た。気のせいか、サンジとの間に距離がおかれているようだった。必要事項はいつも通り伝えてくれるが、それは感情の伴わないただの「伝達」だった。
(俺、嫌われた？避けられてる？)
サンジは何となく気が重かった。でもゾロに確かめる事はできなかった。しかしスタジオに入ればすぐに気持ちを切り替え、いつも以上に集中した。そうする事で、余計な雑念を追い払おうとしたのだ。
ゾロも仕事の話以外、全くしてこなかった。
(目も合わせてくれねぇ.....)
やはり嫌われてしまったのだろうか。
さらに翌日も長丁場で、何とか「前半戦」が終了した。今回初めて長時間ドラマの、そこそこ重要な役をもらえたのだ。出番は多いが出ている時間そのものは短い。だからこそ、少しの失敗が目立ってしまう。
今回は本当に集中して仕事をやった気がする。そしてまた少し開けて、後半の撮りがある。この仕事に関しては、社長が特に意気込んでいて、サンジは自分がかなり期待されている事を感じた。
「お疲れ様でした！」
順調に終わったので、時間もそれほど遅くはない。そして明日はオフだ。今夜こそ、料理を楽しみたいところだ。迎えにきているゾロは、先に車の方へ向かった。サンジも足早にそちらへ向かう。迷わず助手席に乗り込んだ。
「ゾロ.....」
「......」
「今日が限界だ、腐らせるのは嫌だからな.....晩飯付き合えよな？」
もっとマシな誘い方はないものかとも思うが、今のサンジにはそれが精一杯だった。
「.....おぅ」
「.....ゆっくりしてけよ」
「.....あぁ」
車が走りだした。ゾロは相変わらず無口なままだ。サンジは黙っているのが苦手なので、話し始める。
「怒ってた？」
「......ん？」
「こないだ.......」
「.......いや」
「何で、帰ったんだ？」
「...............」
(いや、質問が悪かったか......？)
「.......あんな事....」
「え？」
「あんな事、するからだろ」
「......」
「.......あの後、どうなるかと.....」
予想外な展開になり、その後いったいどうなるのか、ゾロは正直恐れていたのだ。気持ちがついていけず、とりあえずその場から離れようとしたのだ。
うまく説明できないゾロだったが、サンジはゾロの言葉の端々から、その真意を読み取ろうとした。
「安心した....ゾロ.....お前も」
人並みの感情を持ち合わせている事が分かった。
そして、まだ確かめていない何かがあった事を思い出す。
「ゾロ.....」
言葉で確かめるより、こっちの方が早いだろう。ゾロの方へと近付いていくサンジの身体を、ゾロは制した。
「運転中だぞ」
「今停まってんじゃん」
「誰かに見られたらどうする」
「.....じゃ、後で人が見てねぇ場所でな」
反論しようとしたがすぐにゾロは諦めた。再び車が走り出した。
駐車場に車が入った。ゾロの眉間に皺が寄っている。
「ゾロ、そんな固くなるな」
「.....」
「悪ぃけど.....俺....」
自分のシートベルトを外し、サンジはゾロの頭を抱き寄せキスをした。じっとしているゾロの顔を眺め、そしてサンジは囁くように問いかけた。
BACK←← →→NEXT
ゾロの気持ちも....
Parallel MENU
NOVEL MENU
TOP