Ｄｅｂｕｔ

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本当に？といった表情で、ゾロはサンジの顔をじっと見ている。サンジは思わず目を逸らそうとした。

ゾロの手がサンジの肩を掴んだ。

「俺の目を見ろ」
「......」
「言いたい事があるんだろ？」
「.....んなの無ぇよ」
「ちゃんと俺を見ろ」
「....ゾロ....」
「どんな事でも、言ってくれ....俺は....」
「......」
「お前を理解しておきたい」

やっぱり真面目なヤツなんだな、お前って。

「ゾロ、俺は....」
「うん」
「.....その...」
「.......」
「お前の事...好きだ...それで...」
「あぁ、俺も同じだ」
「え.....？」

サンジは言葉に詰まった。次に言う筈の台詞を忘れてしまった。

「それで、何だ？」
「......ゾロが、俺を？」
「何か変か？」
「いや、別に」

(ええっと...俺、ゾロに何て言おうとしてたんだっけ)

それで.....

「ゾロ」
「ん？」
「俺と...付き合ってくれ」
「....」
「....男に言われても困るだろうけど」
「...困りはしねぇ」
「その、あれだよ....別にお前を拘束とか...束縛とか....そういうの、する気なんてないし、恋愛とかそういうんじゃなくていいんだ.....」
「....」
「.......」

サンジは、本当に言いたかった事とは少し違う方向に、話が進んでいる事に、少し苛立ち始める。

「お前の言ってる事は、分かりにくい」
「...悪ぃ」
「俺は単純明快なのがいいって、さっきも言ったろ」
「....うん」
「下手に気持ちが入ったら、後が面倒だから、つまり.....抜きあいだけの関係にしようって腹か？」
「いや、それは....そこまでは思わねぇけど...」
「俺と付き合いたいんだろ？問題ない」
「.....」
「何かひっかかる事あんのか？」
「....その...」
「男同士だからか？それならさっき...」

ずっとサンジの目を見て話してきたゾロが、視線を外した。

「お互い分かったんじゃねぇのか....」
「ゾロ....」
「だから、ああいう事、したんだろうが」
「....う.....うん」
「ただの興味本位なら、今回だけで気が済んだだろう」
「....それだけは、絶対違う」

ゾロはそっとサンジの頭を抱き寄せた。

「だったら.....もう小難しい事は言うな....」
「.....うん」

ブランデーの香りが強い。ゾロの吐息だけでサンジは酔いそうだった。





「ん.......」
「んっ.....」

ソファの上で、ゾロがサンジにもたれかかるような体勢で、長いキスを交わしていた。サンジの上半身にはゾロの重みがかかっていたが、唇の重なりは柔らかく、強く押し付けては来なかった。それは、息が苦しくなるのを避けるための、ゾロの気遣いだった。

この体勢だと、ゾロの首が痛くなるのではないか。サンジは身体の向きを変えた。

「酔いそうだ」
「....」
「お前のキスで.....嘘、アルコールで」
「.....？」
「俺、殆ど飲んでねぇから.....結構キツイんだよ」
「.....悪ぃ....気が付かなくて」
「.....いいよ」

離れようとするゾロを引き戻し、サンジからキスを再開させた。ブランデー独特の香りにも、だいぶ慣れてきた。

「大丈夫なのか？」
「....あぁ....」

さっきとは逆に、サンジがゾロに覆い被さるような形になった。息継ぎの暇も与えないような、貪るようなキスに、ゾロも何とか応じていく。

「ゾロ.....俺....」
「ん....？」
「こんな事してるだけで....今この瞬間にも.....」

言葉を発する合間の僅かな時間も惜しむように、サンジはゾロの唇を食み、舐める。

「....」
「また、好きになってる.....」

前よりも、ずっと。

「.....そうか」
「.....今さら、嫌だなんて言うなよ」
「言わねぇよ」
「....欲しい」
「..........」

一体俺の何を欲しいんだ？

ゾロは訊き返そうとしたが、瞬間、言葉も呼吸も丸ごと、サンジに呑み込まれた。サンジの中にこれほど激しい部分があったのかと、ゾロは思った。どんどん自分の中へ侵食してくるような気がしたが、それはどこか心地よいものでもあった。

入ってくるようで、実は包み込まれているような気がした。

ゾロは思わず身体の力を抜いた。そしてそれは、サンジにもすぐ分かった。

「ゾロ....？」

サンジの頭を掴んでいたゾロの手が、ずるずると落ちてきたのに気付いた。その手に触れてみたが、全く力が入っていない。

「どうしたんだよ.....」
「ん？」
「その気、無くなった？」
「.....そんな事ねぇ」
「.....」
「力が....抜けちまうんだ....勝手に」

その、あまりにも無防備な体勢と表情に、サンジは息を呑んだ。もう抵抗される事は無いのだと確信した途端、ゾロに触れるのが怖くなる。

自分を信じて、自分に委ねてくれているゾロ。

サンジはゾロの唇に一度だけキスをすると、そっと身体を起こさせた。そして手を取ると、ゆっくりと一緒に立ち上がった。



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繋がる想い。





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