Ｄｅｂｕｔ

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「何だそのイヤラシイ笑いは」
「ゾロが俺の事....クセになりそうなんだって思っただけで、俺...」
「うるせぇ！さっきから気色悪ぃ事ばっかり言いやがって！」
「.....ごめんよ、これで許してくれるか？」

サンジはゾロの眉間に指を当て、皺を伸ばすような仕草をすると、そこへ唇を付けた。次にゾロの頬を両手で包むようにしながら、唇を少しずつ下へと滑らせた。

「.....こんなんで誰が許すかよ」
「じゃ、どうして欲しい？俺、何したらいい？」
「そうだな、とりあえず.....」
「うん」
「.......朝飯、作ってくれ」
「....こんな時に.....色気ねぇなぁ.....」
「腹が減ってりゃ色気も何もねぇだろ」
「俺は飲まず食わずでも、お前と居ればそれで腹いっぱいだけどな」
「.....馬鹿言ってねぇで、さっさと作れ」
「うわっ、すげぇ偉そう.....」
「....頼む、腹減って死にそうだ」
「全然死にそうな感じじゃねぇけどな」
「少なくともお前よりは生命力あるぞ」
「.....きっと俺が先に死ぬんだろうなぁ」
「.....そりゃ困るな」
「ん？」
「俺のメシ、ずっと作ってもらいてぇのに」
「......え」

ぽかんとした顔でゾロを見るサンジ。"何か変なコト言ったか？"という表情のゾロ。そのゾロの言葉に深い意味があったのかどうかは、言った本人にも分からなかった。


＊＊＊＊


結局何だかうまく乗せられて、サンジは普段より一手間かけてブランチを用意した。相変わらずゾロの食べ方は見ていて気持ちがいいほどで、サンジはいつも作り甲斐を感じていた。

「ん？」

食後のコーヒーを飲みながら、ゾロは携帯の着信があった事に気付いた。履歴を見ると、もう2時間程前だ。

「.....緊急かな」
「....どうした、ゾロ？」
「社長からだ」
「....オフでも連絡ってあるもんなのか？」
「いや....重要事項があれば、メールしてくるくらいだ」
「.....何か、あったんじゃねぇのか？」
「分からねぇが....」

ゾロは、そのままコールバックした。

「...........あ、お疲れ様です」
『ゾロ？ごめんなさいね、お休みなのに』
「いえ....何かありましたか？」
『それがね.....』

暫く黙ってゾロはロビンの話を聞いていた。

「.....そうですか」
『どの程度まで大きくなるか分からないけど、一応報告しとくわ』
「....分かりました、色々すいません」
『もし...思った以上に騒ぎになってたら.....迎えをやるわ....』

ゾロは淡々と話し、表情も変えずに通話を終えた。サンジがじっとゾロの方を見る。

「早過ぎるな」
「...何が？」
「下手すりゃ.....」
「だから、何の話なんだよ！俺にも分かるように....」

ゾロはサンジの頭を抱き寄せ、そっとカーテンの隙間から目を覗かせた。

「....ったく、どんだけアイツら暇人なんだ」
「....ゾロ？」
「よっぽどネタに困ってんだな」
「.......ゾロ！」
「....ここから、そっと覗いてみろ....外から分かんねぇようにだぞ」
「......え？」
「.....見えたか？」
「....何で......いったい.....」

マンションの建っている周辺には、数人だが明らかに普通の通行人やファンとは違う様子で、カメラを抱えてたり、何かの機材を触っている者が居た。

「張られてる....？」
「普通に考えたら、そう見えるな」
「.....俺、何かしたか？」
「.....大した事はしてねぇが....一般人レベルなら」
「どういう...意味だ？」
「慎重になってなり過ぎる事はねぇって事、身をもって知ったな....俺も始末書程度じゃ済まねぇだろうな」
「.........まさか」

サンジの頭の中を、色々な光景がグルグル回りだした。

「こないだ公園でボコったヤツらが、マスコミに流した？」
「.....いや、それはねぇな....やるならとっくにやってるだろ。それに、情報売るよりまずはウチの事務所を脅してくるだろ。その方が金になるって考えるだろうからな」
「じゃ、何だ？」

ゾロが電話でロビンから聞いたのは、そんな話ではなかった。



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ゆっくりする間もなく。





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