Ｄｅｂｕｔ
〔ご注意〕***30字くらいで改行されるよう、ウィンドウの横幅を適宜縮めてお読み下さい***
サンジがそのオーディションを受ける事は、前日届いた通知書の内容を見た瞬間に、ロビンが決めた。
「この役....サンジ君にすごく合ってると思うわ。何が何でもこの役を取らないとね....きっといい経験になるわ」
「じゃ、段取りが決まったら、明日本人に伝えます」
まさに今、その段取りの最中だった。
「おはようございます」
サンジが営業部へ顔を出した。いつに無く慌しい雰囲気に少し圧倒される。他のスタッフの邪魔をしないよう、少し離れたところから様子を窺った。
「あぁ、これ渡しておくよ」
「はい？」
別のタレントを担当しているマネージャーから、紙を受け取った。
「.....オーディション？」
「詳しい事は、ゾロから聞くといいよ」
「はい...」
当のゾロは電話中だった。本当に最近は忙しそうだ。
(昨日言ってた映画の仕事って....これの事か)
オーディションをするくらいなのだから、それなりに注目されてる作品なのだろうし、役柄のイメージもかなり重要なのだろう。それに共演者とのバランスも。
(これって....主役？)
簡単に書かれた企画書を読む限り、公募するのは主役になる男性。準主役には、若手実力派が二人。
(こんな人達と.....。俺なんか場違いじゃねぇの？)
サンジは、何も自分がこんな大きな作品のオーディションを受けなくても、と思った。
と、そこへ、やっと電話から解放されたゾロが歩いてきた。
「それ、読んだか？」
「あぁ」
「来週くらい、詳しい資料と台本のサンプルが届く」
「....」
「しっかりやれよ」
「....ゾロ....？」
「ん？」
「これ、主役じゃん」
「そうだな。そう書いてある」
「いくらさ、何でも経験だ、勉強だって言ってもさ....」
「何だ、勝負する前に諦めるのか？」
「....そうじゃねぇけど」
「主役はな、経験とか演技力よりも、そいつの持ってる何かで決まるんだ。その分脇役がしっかりしてるから、どうとでもなる」
「.....すげ、マネージャーっぽい話してる」
「茶化すな」
「...悪ぃ...」
「とにかく資料届くまで、しっかり滑舌やっとけよ」
「分かったよ」
それからは、オーディションへ向けてのレッスン、台詞の練習がメインとなった。ちょうど今はドラマの仕事も無く、集中できた。
「順調か？」
「ん？どうかな....」
「練習相手してやろうか？」
「えっ？お前が？」
「俺がやっちゃおかしいか？」
「いいや！全然....でも、いつやるんだ？」
「明日とか.....」
「明日？お前休み取れたのか？」
「あぁ。うまく調整できた」
「本当か！いつ以来だよぉ....一緒に休めるなんて」
「そういやそうだな.....最近働き通しだったもんな」
「お前、よくやってるよ」
サンジは嬉しくて、練習相手をしてもらう事など、どこかへ吹き飛んでしまっていた。とにかくゾロとゆっくり過ごしたい。それだけだった。
「じゃ、今夜ウチ来いよ....道、忘れてねぇよな？」
「....忘れるかよ」
「時間、合えばいいんだけど....できたら....一緒に帰りてぇし」
「....何とかする」
顔には出さなかったが、ゾロも内心は嬉しくて堪らない。もう随分とサンジと休日を共にしていない。できるだけ時間を無駄にしたくなくて、ゾロは時間を調整し、サンジと落ち合い、一緒にサンジの部屋へと向かった。
キッチンではサンジが料理の準備中。野菜を洗おうとしていると、ゾロが近付いてきた。大抵、ゾロは何かしら手伝ってくれる。サンジが指示を出そうとすると、ゾロが背後から腕を伸ばしてきた。
「ゾロ.....？」
「邪魔して悪ぃな」
「.....ぁ」
サンジの身体を抱き締めると同時に、首から肩にかけて唇を這わせた。熱い息が肌に触れる度、サンジの背中に痺れが走る。
「駄目だ、我慢できねぇ」
「野菜切る間も待てねぇなんて....」
「ずっと待ってた」
「.....ゾロ」
「こうしてお前に触れるのを.....ずっと、な」
「......そんな可愛いコト言うなよ、バカ」
「....可愛い.....って何だよ」
「俺だってな！おんなじ！我慢してたんだよっ」
サンジはゾロの腕を振り解き、振り返ってゾロに向かっていった。半ば強引にゾロの頭を引き寄せ、激しく口付けた。ゾロは身動きもせず、じっとそれを受け止めていた。
「メシ、遅くなるぞ？」
「いい.....お前の方がいい」
「何？なんで今日はそんなに.....」
「....馬鹿野郎....全部言わせんな」
「イチイチ俺のツボ突くような事言いやがって....」
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....。
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