Ｄｅｂｕｔ
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一息つく間もなく、次の事を考えていかなければならない。数日後には日本を発つ。当初の予定より長くて、4泊6日。写真集のための撮影がメインだが、メイキングのDVDも制作するらしい。さらに短いトークも録音するとか。それらを写真集に付けて、初回限定版にでもするのだろう。
撮影クルーの規模は、サンジの予想をはるかに超えていた。
「ゾロ、何か大袈裟じゃねぇの？俺の写真撮るだけだろ？」
「今製作中のイメージビデオに、ここでの映像も入れるんだそうだ」
「イメージビデオ？」
「売り込みに使うんだろ。またしばらくしたら別のオーディションがあるのかもな」
「ええっ？」
「映画の撮影に入ると長いから、他の事がなかなかできなくなるからな。決められる時に決めとかねぇと.....」
「そうなのか」
「それが、あの社長のやり方だ。まぁ多分他所でも似たようなもんだろうがな」
サンジは足がすくむ思いがした。しかしもう始まっているのだ。動き出しているのだ。それは自分だけの力では、止める事など不可能だった。
青い海が広がる開放的な風景の中、撮影は進んでいた。何度も衣装を替え、水着にもなった。出発の少し前、社長命令でエステを受けた際、かなり際どいところまで無駄毛処理をされたのには閉口したが、これの為だったのかと納得した。
こんな場所だと、あまり羞恥心も湧いてこない。サンジは大胆なポーズも何なくこなし、表情も良く、カメラマンは上機嫌で撮影していた。
初めての海外での仕事。思った以上に疲れていたのか、夜にゾロと入浴中に居眠りするほど。ゾロは、そんなサンジを労り、無理に起こさなかった。
ゾロが身体を拭いてやると、サンジは眠そうな目を何とか開け、"ありがと"と言いながらゾロの胸にもたれた。せっかくゾロと二人きりで過ごせるのに、と頭の片隅で少し悔しく思った。
「明日も明後日もある。今日はとにかく寝ろ」
「うん.....。でさ、ゾロは平気？」
「何が？」
「俺が横に居て、ムラっとしねぇの？」
「.....そこまで困ってねぇよ」
「何だ、つまんねぇの」
「その分、明日は覚悟しろよ？」
「.....う」
「泣いたって容赦しねぇからな」
「.....心して、待ってるぜ」
そうは言うものの、一体何をされるのだろうとドキドキしつつ、少し不安にもなるサンジだった。
二日目は室内での撮影がメイン。座る、寝転ぶ、読書、料理...日常生活の一部を切り取ったようなショットが続いた。テラスへ出た途端、風が吹き思わず目を細めたサンジ。そんな自然な表情も収められた。
現場での一部始終を、ゾロはスタッフの集団から少し離れた処から見ていた。時々、手にした小さなノートに何かメモをしている。サンジの髪の乱れを時々直しにくる、ヘアメイク担当の男と目が合った。必要以上にサンジに触れているように見えるのが気に食わない。思わず睨んでしまい、その男を怯えさせてしまった。
「お疲れ様でした」
予定通りのスケジュールで仕事は進行している。明日はトークCD用のインタビューの収録のみ。
「結構順調にいってるようだな」
「うん.....それにしても疲れた」
「じゃ、風呂にするか」
「そうだな」
「お前さ、撮影中何であんなに離れてんの？全然俺の視界に入ってこねぇけど......」
「あの集団に居たって俺はする事がねぇ。でもちゃんと最初から全部見てる....結構細かいところまでな」
「......俺、何か変なとこあった？」
「いや、特には」
「そうか？ならいいけど.....今、お前一瞬嫌そうな顔したからさ」
「........実際、不愉快だった」
「何が？」
「......あのヘアメイクのいけすかねぇ野郎だ。お前の髪だけ触ってればいいのに.....何なんだ、あれは」
「.....うーん....俺も、ちょっとそう思ったけど.....」
ゾロと向かい合って座っているバスタブの中で、サンジはゾロの頬を両手で包み込む。
「よく見てんだな......」
「視力はいいからな」
フッと鼻で笑いながら、サンジはゾロに軽いキスをした。
「駄目だ....何だろこれ.....今、このへんがキュンと来た」
「......」
「俺の事、見てねぇって思ってたから.....」
「そんな訳ねぇだろうが」
「....マジ、ドキドキしてる....ほら」
サンジはゾロの頭を自分の胸に引き寄せた。ゾロの熱い息がかかり、サンジは背中がゾクッとした。
(.....まだ、こんな気持ちになれるんだなぁ....)
ゾロの髪を撫でながら、サンジは何とも言えない幸福感を味わった。
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場所が変わると....。
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